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投稿日時 2024-11-08 05:15:23 (487 ヒット)

2024年11月1日(金)にASDoQ大会2024を開催しました。昨年に引き続きオンラインと名古屋大学のハイプリッドでの開催となりました。63名の方に参加いただき、活発な議論で盛り上がりました。 
 

午前中の第1部のチュートリアルでは、塩谷 敦子氏(ASDoQ代表幹事)とASDoQサマーワークショップ2024(9月6~7日京都開催)の参加メンバから、「“システム開発文書品質モデル × 生成AI”による開発文書品質の向上」に関する具体的な試行事例を紹介していただきました。
紹介事例の4つのテーマと発表者は次の通りです。
  • システム開発文書品質モデルの充実:山本 雅基氏(ASDoQ幹事/名古屋大学)
  • 開発文書のレビューと修正:塩谷 敦子氏(ASDoQ幹事/イオタクラフト)
  • 開発文書品質の評価:井上 祐寛氏(クレスコ)、高島 敬氏(アドブレクス)、粕渕 清孝氏(ASDoQ運営委員/Pionira Solutions)、森川 聡久氏(ASDoQ運営委員/ヴィッツ)
  • 開発文書の作成:塩谷 敦子氏(ASDoQ幹事/イオタクラフト)
 
今回のチュートリアルでは、体系的に整理されたASDoQのシステム開発文書品質モデルを活用することで、より的確に指摘・改善できそうだと確認できました。しかし、指摘は完全ではないため、誤指摘・指摘漏れ等が含まれることを留意しながら活用する必要があり、最終判断には人の役割が欠かせないことを再認識しました。
作成したプロンプトなどは、参加者にお土産として提供させていただきました。
 
(チュートリアル:左から、山本氏、塩谷氏)
 
(チュートリアル:左から、粕渕氏、高島氏)
 
 

午後からの第2部の講演会に先立ち、栗田 太郎氏(ASDoQ大会プログラム委員長/ソニー)からASDoQ大会2024の見所について紹介がありました。
また、参加者の申込時アンケート結果を「高めたい品質や学びたい文書技術」としてまとめていただきました。AIの普及により、仕事の仕方が変わっていく過渡期にある今、どうしていくとよいかを皆さんと考えていきたい、とのことでした。
 
(オープニング:栗田 太郎氏)
 
 

最初の講演は、冨永 敦子氏(公立はこだて未来大学)から「生成AI時代のライティングとその教育」のテーマでお話しいただきました。
大学ではAIを適切に活用できる人材を育てたいが、AIツールを教育のどのような場面で、どのように活用するのか、どのような点に注意すべきか、といった知見が殆ど無いことが課題とのことでした。
そこで、学生がレポート作成過程において、ChatGPTをどのように利用し、その利用結果から何を学ぶかを確認するワークを実施し、分析結果を紹介いただきました。
その結果、以下が重要なポイントとして見出されました。
  • 良いプロンプトについて学ぶ必要がある。
  • 適切なプロンプトを入力するためにも「言語力」が必要。
  • 繰り返し質問することで、深堀りや絞り込みができ、よい結果を獲得しやすい。
  • 結果の正しさを判断するためにも「論理的思考力」が必要。
  • 出力結果について疑問に思うことが大事。「批判的思考力」が必要。
 
本講演にて、AI活用の成果を大きくするには、利用者自身の能力アップが必要であり、
ASDoQの主テーマとも関連する「言語力」も欠かせないことを、再確認できました。
 
(講演1:冨永 敦子氏)
 
 

続いての講演では、古崎 晃司氏(大阪電気通信大学)から「生成AIと知識グラフの相互利用に基づく文書解析」のテーマでお話しいただきました。
さまざまな知識の関係をグラフ構造で表した「知識グラフ」は、検索や解析など多くの活用可能性があります。そこで、生成AIと知識グラフの相互利用について、さまざまなパターンを紹介いただきました。
例えば、生成AIの答えが正しいか判断が難しいという課題に対して、知識グラフを用いてファクトチェックする方法があります。また、LLMの学習データや外部知識として知識グラフを利用することも可能です。一方、生成AIを用いて知識グラフを構築支援する、といった連携もあります。
 
本講演にて、生成AIの活用能力を高めるうえで、知識グラフは欠かせない技術であることを確認できました。
 
(講演2:古崎 晃司氏)
 
 

続いて、「生成AIを用いたシステム開発と文書」のテーマでパネルディスカッションを開催しました。パネリストは本日講演いただいた古崎氏、井上氏、塩谷氏、粕渕氏、森川氏の5名をパネリストとし、山本氏がモデレーターとして進行を担当しました。
 
最初に山本氏より、生成AI時代におけるエンジニアの危機感について説明があり、どのように生成AIに取り組めばよいかというテーマを掲げました。
その後、パネリスト5名より、さまざまな論点について意見の紹介がありました。
それを踏まえて、主に以下について議論しました。
  • 生成AIが完全にプログラムを作成できるようになった際に、途中の設計工程を飛ばしても問題ないか
  • AIが生成した情報に誤りがある場合の対処方法
  • 生成AIで活用できるように、抽象度の高いASDoQ文書品質モデルをどのように改善すればよいか
 
最後にクロージングとして、6名各々からコメントを述べられました。今後も継続検討必要な課題は多々ありそうです。しかし、現時点でも、生成AIの能力や限界値を理解した上で活用することは大いに意義があることが確認できました。さらに、ASDoQ文書品質モデルを適用して、AIが文書品質を測定する試みは価値がありそうだと確認できました。
ASDoQでは今後も、生成AI活用を重視した活動を継続してまいります。
 
(パネルディスカッション:左から、山本氏、古崎氏、井上氏、塩谷氏、粕渕氏、森川氏)
 
 

その後、ポスター発表の概要をライトニングトークにて紹介していただきました。
ポスター発表の詳細は、こちらをご覧ください。
https://asdoq.jp/taikai2024/poster.html

ここで、オンラインで参加いただいた方は終了となりました。
 
一方、リアル会場では第3部として「ポスターセッション」を継続しました。
ポスターを前に、熱心な質問や活発な議論をしていただくことができました。また、参加者間での意見交換や議論の様子も垣間見ることができました。
 
その後、参加者と講師の方々からの投票による、ポスター発表の表彰をさせていただきました。
受賞された皆様おめでとうございます!!
 
最優秀賞
[P-3]生成AI時代に有効なドキュメンテーションの活かし方
山路厚(株式会社デンソークリエイト)
 
審査員特別賞[古崎賞]
[P-2]システム開発文書品質モデル改訂活動 ー Ver.2.0aの発行 ー
システム開発文書品質モデル改訂検討会 & ASDoQ
 
審査員特別賞[プログラム委員長賞]
[P-5]サマーWS Gr.3より GPTsによる要求仕様書の無矛盾性評価 - コンセプトとアプローチの紹介
高島 敬 (アドブレクス)
 
審査員特別賞[ASDoQ賞]
[P-1]「システム開発文書品質モデル」を適用した ChatGPTによる開発文書の添削
佐々木一仁(インフォコム株式会社),小林 義充(エプソンアヴァシス株式会社),鈴木 啓介(アクセンチュア株式会社),内野将輝(株式会社ベリサーブ),塩谷敦子(合同会社イオタクラフト)
 
(最優秀賞 左から贈呈者の塩谷氏、受賞者の山路氏)
 
(審査員特別賞[古崎賞] 左から審査員の古崎氏、受賞者の塩谷氏)
 
(審査員特別賞[プログラム委員長賞] 左から受賞者の高島氏、審査員の栗田氏)
 
(審査員特別賞[ASDoQ賞] 左から贈呈者の塩谷氏、受賞者の内野氏)
 
次回も、多くのポスター発表のご応募をお待ちしております。
 

最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとの回答をいただきました。
 
 

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。
 
来年の大会は,2025年10月31日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。
 


投稿日時 2024-09-21 15:50:02 (355 ヒット)

2024年9月6-7日に京都市にて、ASDoQサマーワークショップ2024を開催しました。昨年に引き続き生成AIがテーマでしたので、総勢17名と過去最大の参加者数となり、非常に高い関心が伺えました。

全体テーマは、2024年4月にリリースしたばかりの「システム開発文書品質モデルVer.2.0a」(以下、ASDoQ文書品質モデル)を生成AIを導入した開発プロセスにて活用することです。ワークショップでは、皆で手分けしながらさまざまなチャレンジをすることができ、参加者の皆さまは広く多くの気付きを得ることができたようです。 



参加者の皆さんは、9月6日(金) 12時半頃会場に集合し、お弁当を食べながら参加者間の交流を深めました。

13時より自己紹介。そして、運営委員の山本雅さんより、今回のサマーワークショップの実施概要を説明していただきました。

今回の参加者は多数のため、1人1人の関心は異なります。そこで、参加者から今回取り組みたいことを募り、最終的に以下の4テーマを選定し、グループに分かれて取り組むことになりました。


  • テーマ1:ASDoQ文書品質モデルの測定項目や例を追加する

  • テーマ2:ASDoQ文書品質モデルを用いた文書の添削

  • テーマ3:ASDoQ文書品質モデルを用いた開発文書の点数付け

  • テーマ5:生成AIを使った開発文書の作成




テーマ1:ASDoQ文書品質モデルの測定項目や例を追加する

現在公開中のASDoQ文書品質モデルは、測定項目の例や違反例の記載が少なくわかりづらいという問題があります。そこで、ChatGPTを活用して測定項目の例や違反例を追加する取り組みを行いました。テーマ1は山本雅さん1人での取り組みでした。

ASDoQ文書品質モデルをChatGPTに理解させることが重要なため、モデルを読み込ませた上で、どんなことが書かれているかの解説をプロンプトで記述しました。また、空白のセルを埋めるように指示しました。

取り組みの結果、多くの測定項目の例や違反例を新規作成したり、説明文をより明確に作り直すことができ、ASDoQ文書品質モデルを改善することができました。この改善したモデルをChatGPTに知識として与えることで、活用時の水準が上がる期待が持てます。一方、モデルのファイルデータを自動で改善することは、プロンプトの試行錯誤叶わず、期待通りの動作になりませんでした。 



テーマ2:ASDoQ文書品質モデルを用いた文書の添削

テーマ2のグループでは、任意の開発文書(要件定義書)を与え、ASDoQ文書品質モデルを用いた文書の添削を試みました。

指摘箇所と改善案といった形式で添削はしてくれますが、指摘根拠となる品質特性/品質副特性が誤って出力されます。どうやら、ChatGPTが品質モデルを正しく理解できていない様子です。この要因は、品質モデルをEXCELファイルの表形式で与えているためと分析しました。 

対策として、文章形式の「システム開発文書品質モデルの解説文書」を作成し、品質モデルの表はPDF形式にして、プロンプトを改善しました。これによって、指摘箇所と品質特性や測定項目との対応づけは、ある程度改善されました。 しかし、対象の開発文書から一部の結果しか出力されないといった課題が残りました。




テーマ3:ASDoQ文書品質モデルを用いた開発文書の点数付け

テーマ3のグループでは、要求仕様書の点数付けに挑戦しました。

最初にブレーンストーミングを行い、要求品質として議論に挙がりやすい特性として、ASDoQ文書品質モデルの「理解容易性」「無矛盾性」「構造性」に焦点を当てることにしました。

「理解容易性」については、形式的には、点数付けによる評価結果だけでなく、評価根拠や改善案の提示まで成功しました。そこで、この結果が本当にASDoQ文書品質モデルを用いて適切に実施されているかの検証に挑戦しました。しかし、品質モデルがどのようにGPT内に取り込まれ判断されているかを明らかにすることはできず、正確性と信頼性に疑問を感じる結果となりました。

「無矛盾性」については、単一文書内の複数の要求間の矛盾を評価スコープとして取り組みました。最初は、曖昧性や実現性など、“矛盾点”以外の指摘がありました。そこで、ChatGPTに要求工学の基礎知識を付与してみたところ、“矛盾点”以外の指摘を減らすことができました。しかしながら、指摘の網羅性には課題がありそうです。

「構造性」については、IEEE 830の要求仕様書テンプレートと対象要求仕様書を比較し、構造的違いと各項目の説明内容不足について、ChatGPTに採点させることができました。 

その他、「揺らぎ」検出の指摘漏れの改善や、仕様書から専門用語を抽出して用語集を作成する、といった取り組みも行いました。




テーマ5:生成AIを使った開発文書の作成

テーマ5のグループでは、Googleの生成AIであるGeminiを活用して、企画書の作成支援に挑戦しました。 

企画書作成に関する現場課題として、品質のばらつき、初心者の業務非効率さ、統一的なフォーマットが無い、などが挙げられます。そこで、まず企画書テンプレートフォーマットを検討しました。そして、企画したいテーマ(製品概要やペルソナなど)を与えることで、生成AIに製品企画書を自動生成してもらうことができました。 

今後は、生成AIと壁打ちしながら企画書をブラッシュアップするプロセスも必要とのことです。




【ワークショップ全体の様子】

 

【集合写真】


今回のサマーワークショップでは、「ASDoQ文書品質モデルの適用」や「開発プロセスへの活用」といった点で、昨年開催よりも制約の多さと実用を目指す点で難易度の高いものになりました。しかし、この1年間で多くの方が生成AIを使いこなし、豊富なノウハウを獲得されていたこともあり、参加者間でアドバイスし合いながら取り組むことができました。

2日間じっくり取り組んだ結果、文書品質を高めるためにASDoQ文書品質モデルを上手く活用する方法の立案、生成AIの新たな業務活用方法の発見、生成AIの活用スキルの向上、などが実現できたのではないかと思います。

今回のサマーワークショップの結果は、ASDoQ大会2024のチュートリアルやポスター発表でも報告する予定です(ASDoQ大会2024はこちら)。本報告だけでは伝わらないことが多いと思いますので、ASDoQ大会2024に是非参加していただき、サマーワークショップで活動したメンバーと直接意見交換してみてください。


投稿日時 2024-06-10 20:47:50 (786 ヒット)

 2024年度定期総会および第34回研究会を202465() 16:00からオンライン(Zoom)で開催しました。

1.2024年度定期総会

はじめに、本日の総会出席者の確認を行い、出席者および委任状提出の合計70名により本総会の成立条件(会員数の1/2)を満たしていることを確認しました。

続いて、事務局から2023年度の事業報告と決算報告、2024年度の事業計画と収支計画についての報告が行われました。各議案は、出席者および委任状提出者を含む参加者の過半数の賛成により承認されました。

会員は、総会資料を閲覧できます。[会員メニュー - 活動の記録 - 第34回研究会(定期総会)]をご覧ください。

 

2.第34回研究会

34回研究会では、「これからのシステム開発文書品質を考える~システム開発文書品質モデルVer.2.0aをふまえて~」のテーマで、システム開発文書の品質向上について、参加者の皆様と意見交換を行いました。

今回の討議は、オンラインホワイトボードアプリMiroを使用して参加者の皆様から意見を出していただく形で進めました。

「システム開発文書やその品質で解決したい問題は何か?」、「システム開発文書の役割は今後どう変わるか?」、「システム開発文書品質モデルにAIを応用するアイデアは?」の3点について討議を行い、参加者の皆様から多くの意見をいただきました。

今回の討議で皆様からいただいた内容を今後のASDoQの活動につなげていきたいと考えております。

研究会の資料はこちらから(資料内のmiro討議の場所のリンクから討議内容が確認できます)

 

 

3.オンライン交流会

 研究会での議論を基に、生成AIの文書品質モデルへの応用について参加者の皆様と活発な議論を交わしました。様々な視点からの意見や考えが語られ最後まで大変盛り上がりました。

 

4.今後のASDoQのイベント

以下を予定しております。皆さん、ぜひご参加ください。

  ・サマーワークショップ 96日(金)、7日(土)KKR京都くに荘 

   サマーワークショップのお誘い

 ・ASDoQ大会2024 111日(金)名古屋大学 東山キャンパス内にある野依記念学術交流館


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