2023年度定期総会および第32回研究会を2023年6月6日(火) 16:00からオンライン(Zoom)で開催しました。
1.2023年度定期総会
はじめに、本総会の出席者として、出席者34名、委任状提出54名により本総会の成立条件(会員数の1/2)を満たしていることを確認しました。
続いて、事務局から2022年度の事業報告と決算報告、2023年度の事業計画と収支計画、役員改選について報告しました。各議案は委任状を含む参加者の皆さんにより承認されました。
会員は、総会資料を閲覧できます。[会員メニュー - 活動の記録 - 第32回研究会(定期総会)] をご覧ください。
2.第32回研究会
研究会では、粕渕清孝さん(SCREENアドバンストシステムソリューションズ/ASDoQ運営委員)と山本雅基さん(名古屋大学/ASDoQ幹事)から「ChatGPTを用いた文書品質の向上は可能か」というテーマで講演が行われました。
講演の前半は粕渕さんから、ChatGPTの技術を解説していただきました。発表資料はこちらから。
従来の自然言語処理とは異なるMulti-head Attentionによって構文解析がされていること、OpenAIの独自技術であるPP(Proximal Policy Optimization)を使用して強化学習を行っていることなどをわかりやすく解説していただきました。
今後の見通しとしては、さらなるマルチモーダル化や推論が可能になること、人間を超える意味理解の実現の可能性など、さらなる進化についてお話しいただきました。
後半は山本さんから、システム開発へのChatGPTの活用に関してお話していただきました。発表資料はこちらから。
ChatGPTを「コパイロット」として使い、要求定義工程でブレスト相手やレビュー相手としてChatGPTを活用し要求仕様書を共同で作成していく方法を、Windowsで動作するストップウォッチアプリ開発を例に、ChatGPTとやりとりを踏まえて紹介されました。
その経験を通じて、ChatGPTの活用を前提とした開発プロセスの構築の必要性を提案されました。その上で、ASDoQ開発文書品質の測定、品質準拠のライティングや校正への活用検討、さらに技術者に要求されるスキルの再定義の必要性なども提案されました。
文書品質に取り組むASDoQは、文章を生成する生成系AIと無関係ではいられません。皆さんとアイディアや事例を共有し、生成系AIとの付き合い方に取り組んでいきましょう。
3.オンライン交流会
研究会での議論を踏まえて、生成系AIについて参加者の皆様と議論を交わしました。さまざまな意見や考えが語られ最後まで大変盛り上がりました。ご参加いただきありがとうございました。
4.今後のASDoQイベント
以下を予定しております。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。
・9月1日(金)、2日(土) サマーワークショップ @KKR京都くに荘
・10月27日(金) ASDoQ大会2023 @名古屋大学 野依記念学術交流館
2023年2月14日(火)15:00-17:00に,(Zoom)にて第31回研究会を開催しました.34名が参加しました.
今回の研究会は,「技術者のための日本語文法入門 ─ 文章術本を深読みし、開発文書作成に役立てる」 と題して,編集プロダクション風工舎の川月現大さんに,ご講演いただきました.川月さんは,大手ソフトウェア会社でシステム開発のご経験があり,その後に編集会社を立ち上げられました.元開発者そして現編集者の立場で,ASDoQに参加されています.
ご講演は,文章術本を使いこなすための基礎知識および技術文書作成で役立ちそうな指針についての解説でした.私たちの多くが読んだことがある『理科系の作文技術』など,複数の文書術の書籍を取り上げて,その内容に一歩踏み込みながらお話しくださいました.
私は,日本語の奥行きの深さが改めて分かりました.川月さんがおっしゃるように,日本語母語話者のための「日本語文法書」や,私たち開発者などの実務に役立つ「日本語辞典」は,まだ完成されていません.注意深く考えながら日本語の勉強を続けていきたいと,決意を新たにしました.何時までも勉強は続きます.
川月さんのご厚意により,当日の資料の一部(「は」と「が」の使い方)を,こちらからダウンロードできます.
2022年11月11日(金)にASDoQ大会大会2022を開催しました。
今年のASDoQ大会はオンラインとリアルとのハイプリッドにて開催しました。リアル会場としては、3年ぶりに名古屋大学 野依記念学術交流館に戻ってまいりました。
第1部のチュートリアルでは、中村 哲三氏(エレクトロスイス ジャパン)から「国際共通語としての英文ライティングを考える」のテーマでお話しいただきました。
世界中の人たちとコミュケーションをとるための国際共通語として英語が使われています。英語ネイティブではない国の人たちとコミュニケーションをとるためには、わかりやすく伝わる英語を使う英語力を身につける必要があります。そのような基礎的な英語力をつけるうえでの障壁をご紹介いただきました。具体的には、国際的には通用しない和製英語、一つひとつの単語とは異なる意味になるイディオム表現、概念の違いからくるギャップ、差別表現などを解説していただきました。さらに、人間の社会活動に関連する言語の使用には、トピック志向とタスク志向があります。前者は状態描写として、後者は操作説明として、視点/コンテキストによって最適な表現を選ぶべきであり、両者をまちがえると分かりにくい文になるとのことでした。
(チュートリアル:中村 哲三氏)
第2部の講演会に先立ち、プログラム委員長の栗田 太郎氏からASDoQ大会2022の見どころについて紹介がありました。
(オープニング:栗田 太郎氏)
最初の講演は、武田 浩一氏(名古屋大学)から「説明可能な人工知能と自然言語処理」のテーマでお話しいただきました。
人工知能が社会的に受け入れられるためには、信頼できる人工知能を実現する必要があり、その一つのテーマが「説明可能な人工知能(AI)」とのことです。最近のAIでは、ニューラルネットワークを用いるので、推論過程がブラックボックスになります。そこで、推論過程を人間に分かるように提示する説明可能AIの研究を、米国国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムなどで進められてきたとのことです。説明可能AIでは、文生成技術により説明自体を文章で生成する技術も研究開発されています。その技術を使用して、運転シーンのデータから運転のリスクを査定し文章で表現する研究事例が紹介されました。さらに、文生成技術を利用したプログラム開発支援として、プログラム生成やプログラムへのコメント付与の研究開発が行われているとのことでした。
(講演1:武田 浩一氏)
続いての講演では、井佐原 均氏(追手門学院大学)から「自然言語処理の課題と品質評価の可能性」のテーマでお話しいただきました。
自然言語処理システムによって、コンピュータが人間のタスクをサポートし、人間は人間にしかできないことに集中する世界を示していただきました。最近では、ニューラル機械翻訳により、機械翻訳の技術が飛躍的に向上しています。訳の抜けや誤り、低頻度の語句で失敗が多いなどの機械翻訳の問題についても、絶えず見直され性能が向上され続けているとのことです。さらに、自然言語処理の課題として、ブラックボックスの解消のために理由を説明できる人工知能や、学習データの保証があるとのことです。そして、システム開発文書と自然言語処理の関係について触れて頂き、自動ソースコード生成や開発文書の自動評価の可能性を示していただきました。
(講演2:井佐原 均氏)
第2部の最後では、ASDoQの運営から、今期の活動報告と今後の活動予定をお知らせしました。
(クロージング:塩谷 敦子氏)
オンラインでご参加いただいた方は第2部にて終了となりましたが、リアル会場では、第3部の「講演者を囲む対話会」を開催しました。講演者と直接会話できる機会を利用して、参加者の皆さんが熱心に質問されていました。また、チュートリアルと講演の内容から、話題がさらに広がり、有意義な時間となりました。
(対話会での講演者と参加者)
最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。
来年の大会は,2023年10月27日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。