トピックス

  
投稿日時 2023-11-07 09:49:36 (789 ヒット)

ASDoQ大会2023のポスター発表で「[P-4]生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」が、最優秀賞と審査員特別賞(酒匂賞)をダブル受賞しました。このことが、発表者の一人の井上さんが所属する㈱クレスコのニュースに掲載されました。


投稿日時 2023-11-05 07:29:55 (1268 ヒット)

2023年10月27日(金)にASDoQ大会2023を開催しました。

今年のASDoQ大会は、昨年に引き続きオンラインとリアル会場のハイプリッドにて開催しました。また、午前中にチュートリアル、午後に講演会とし、4年ぶりに丸1日開催できました。
 

午前中の第1部のチュートリアルでは、酒匂 寛氏(デザイナーズデン)から「生成AIとソフトウェア開発への応用」のテーマでお話しいただきました。
酒匂氏が想定するソフトウェア開発ライフサイクルにおいて、どのステップでも生成AIによる支援が可能であることを、具体的な適用事例を踏まえてわかりやすく紹介いただけました。
生成AIは、多くの企業にとって高い関心があるものの、まだまだ上手く活用できていない状況です。本チュートリアルの内容は、活用に向けてよいヒントになったのではないかと思います。
(チュートリアル:酒匂 寛氏)
 

午後からの第2部の講演会に先立ち、プログラム委員長の栗田 太郎氏からASDoQ大会2023の見所について紹介がありました。
(オープニング:栗田 太郎氏)
 

最初の講演は、二宮 芳樹氏(名古屋大学)から「自動運転プラットフォーム Autowareが目指すもの」のテーマでお話しいただきました。
自動運転システム開発では技術課題が山積する中、Autoware搭載車両は無事自動運転レベル4認定を獲得されました。その経験を踏まえて、自動運転レベル4の業界状況、自動運転プラットフォームであるAutowareが提供する技術、Autowareとシステム開発文書品質について、詳しく紹介いただきました。
参加者の皆様には、技術的な学びを多く獲得いただけたのではないかと思います。
(講演1:二宮 芳樹氏)
  

続いての講演では、永田 敦氏(サイボウズ)から「サイボウズにおけるアジャイル開発とドキュメント」のテーマでお話しいただきました。
アジャイルとウォータフォールの本質的な違いについて、とてもわかりやすく解説いただきました。近年の複雑化するソフトは、暗黙知と形式知の変換を盛んに行いながら開発されていますが、ドキュメントの量が減る傾向にあります。これに対し、アジャイル開発にてドキュメントをどうアプローチしているかのサイボウズ社の事例や、アジャイル開発を上手く実施するコツを多数紹介いただきました。 
アジャイル開発に取り組まれている参加者の皆様にとっては、よいヒントをたくさん得る機会になったのではないでしょうか。
(講演2:永田 敦氏)
 

続いて、「社会が必要とするIT技術者像:コードよりも一歩先へ」のテーマでパネルディスカッションを開催しました。
パネリストは本日ご講演いただいた3名に、井上 克郎氏(南山大学)、福森 英夫氏(愛三工業)、藤田 悠氏(ASDoQ運営委員/長野高専)に加わっていただいた全6名、山本 雅基氏(ASDoQ運営委員/名古屋大学)がモデレーターとして進行を担当しました。
最初に「進化している人材育成の実態」として、藤田氏、井上氏、福森氏の順にポジショントークを実施しました。続いて「IT先進企業が求めるソフトウェア技術者の能力」として、二宮氏、永田氏、酒匂氏の順にポジショントークを実施しました。その後、ポジショントークに対する質疑や、システム開発文書品質への期待について議論を行いました。
その結果、ソフトウェア技術者に求められる能力として、プログラミング能力だけでなく、社会人基礎力、論理思考力、メンタリティ、抽象化技術、それらを育成するための管理技術など広範囲にわたるという議論になりました。最後にモデレーターの山本氏により、市場で揉まれ多様な実務経験を積みながら、これらの多様な能力を身に付け、IT技術者として成長し続けていきましょう、と締めくくられました。 
(パネルディスカッション:左から、酒匂氏、永田氏、二宮氏、福森氏、井上氏、藤田氏、山本氏)
  

オンラインでご参加いただいた方は第2部にて終了となりましたが、リアル会場では、第3部の「ポスターセッション」を開催しました。全7件のポスターを発表していただきました。
ポスターを前に、熱心な質問や活発な議論をしていただくことができました。また、参加者間での意見交換や議論の様子も垣間見ることができました。
 
ポスターセッションの恒例であった、参加者と講師の方々からの投票による優秀賞の選出も復活させました。今回の結果では、以下のとおり表彰させていただきました。
受賞された皆様おめでとうございます!!
 
  • 最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞]
    [P-4]「生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」
    山本雅基(名古屋大学)、井上祐寛(株式会社クレスコ)、安藤輝政、月森悠太(株式会社ヴィッツ)
     
  • 審査員特別賞[二宮賞]
    [P-1]「ChatGPTを用いたAndroidアプリ作成の試み - ASDoQサマーワークショップ2023にて -」
    藤田 悠(長野工業高等専門学校)、内野将輝(ベリサーブ)、後藤 祐紀(エプソンアヴァシス) 
     
  • 審査員特別賞[永田賞]
    [P-2]「nofytools: フィーチャモデルとUSDMを扱うツールキット」
    中西恒夫(福岡大学)、山田智司(アドヴィックス)、大串和弘(アドヴィックス)、古一克也(アドヴィックス)

(最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞] 左から受賞者の井上さん、審査員の酒匂氏)

(審査員特別賞[二宮賞] 左から受賞者の藤田さん、審査員の二宮氏、受賞者の内野さん)

(審査員特別賞[永田賞] 左から受賞者の山田さんと中西さん、審査員の永田氏)

 次回も、多くのポスター発表のご応募をお待ちしております。

 

 最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
 
 

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。
 
来年の大会は,2024年11月1日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。
 

 


投稿日時 2023-10-02 04:33:42 (1062 ヒット)

2023年9月1-2日に京都市にて,ASDoQサマーワークショップ2023を開催しました.

 
ASDoQでは毎年夏に合宿形式のワークショップを開催していましたが,コロナ禍によりしばらく実施を見送っていたため今回4年ぶりの開催となりました.東に鴨川を西に京都御苑を望む絶好のロケーションにて,各自がChatGPTとじっくり向き合い多くの気付きを得ることができたようです.
 
今年のサマーワークショップでは,開発プロセスやシステム開発文書にChatGPTを取り入れるアイデアを,班ごとにChatGPTで実験しその効果や課題を一つずつ確認していきました.
 
 
★★1班★★
ChatGPTを利用することで,要求仕様書から基本設計書を作成する手助けができないかについて実験しました.
まず,ChatGPTに話題沸騰ポット要求仕様書を読み込ませてテキスト(マークダウン)を作成するよう指示します,その後,UML描画ツールmermaidを利用して,マークダウンからUML/SysMLの各図(ブロック図,ステートマシン図,シーケンス図)を描画しました.
 
■やったこと
・要求仕様書からマークダウンを作成できた.結果としてUML/SysML図を作成できた.
 
■わかったこと
・現時点では,数十ページの仕様書を与えても最初の一部しか理解してくれない
 →2日目は小さな仕様を作成し進めた
・ブロック図:継承関係がまずい
・シーケンス図:1回タイマーがアイドル状態に戻ってくれない
・UML状態遷移図:状態を理解できていない
 
■次にやること
・ページ数の多い仕様書はあらかじめ分割し,それぞれを要約させてからChatGPTに与える
・近々利用できるChatGPTのファインチューニング機能を利用してページ数の多い仕様書を全部理解してくれるか実験する
 現時点ではLlamaIndexを使って仕様書をインデックス化しクエリーと組合わせることでファインチューニングしているかのようなプロンプトを得られる.(4班のワークより)
 
 
★★2班★★
ChatGPTを利用することで,じゃんけんゲームの自動プログラミングが可能かについて実験しました.
 
■やったこと
・初日は,ChatGPTに概要仕様文を与えAndroid Studioのソースコードを作成するよう指示し,ソースコードを得ることができました.コードはほぼ修正不要で動作確認できました.
・二日目は,概要仕様文から要求仕様書と基本設計書を作成し,これらからソースコードを作成する実験を行いました.
 
■わかったこと(得られた好ましい結果)
・ChatGPTは直接的なソースコードの作成の要求に応えることができる.
 簡単なプロトタイプの作成に活用できるのではないかと思われる.
・ChatGPTと対話的なやり取りで,プログラムの修正や改善ができる.
 問題点や改善したい点などを具体的に伝えて,改善する方法がとれるのではないか.
・UMLの図もテキスト形式で表現可能であれば,得ることができる.
 要求から設計させた結果として,シーケンス図やクラス図が得られた.
 
■わかったこと(問題点)
・所望の開発文書を書いてほしいとしたとき,入力を正確に伝える必要がある.
 項目立てや各項目で定義してほしい内容を伝えると,ほぼそのまま文書化されることがある.
 その場合はChatGPTの役割は清書してくれるところになるだろうか.
・仕様書を入力として,次の工程の作業をしてもらうとき,漏れがあることがある.
 入力の仕様書に定義したことが次の工程の設計に反映されていないことがある.
 指定した事柄が正しく反映されているか,内容が正しいか,確認する必要がある.
 
■次にやること(さらなる利用における課題)
・具体的な事柄について対話的な方法をとることで積み上げたり,改善したりする点がChatGPTは得意と思われる.
 設計書を作成する際も,まとまった入力で一度でよい結果を得るよりも,対話的に進める方が良い可能性がある.
・設計書を作成させるとき,こちらが想定している仕様を正確に伝える必要がある.
 ChatGPTをその相手としたときに,どのような伝え方をするのが適切かを考える必要ある.
・まとまった入力に対する出力については特に,内容を確認する必要がある.
 トレーサビリティが取れていれば良いのだが,それを担保させる方法はあるだろうか.
 
 
★★3班★★
ChatGPTを利用することで,テスターの支援ができるかについて実験しました.
具体的には,開発対象をWebサービスのログイン機能として,開発から追加機能のメモだけが入手できたというシチュエーションで変更要求仕様書と追加機能の差分テスト仕様書を作成できるかを試しました.
まず,IDとパスワードだけのシンプルなログイン機能の要求仕様書を自動作成し,次に二要素認証機能(二段階で認証してログインさせる機能)の簡単な要求メモを与えて変更要求仕様書を自動作成しました.さらに変更要求仕様書の変更箇所を明示することで,差分テスト仕様書の作成を試みました.
 
■やったこと
・要求仕様書フォーマットしてIEEE Std 830に倣うよう指示を与えるだけで,機能のメモから要求仕様書が作成できた.
・要求仕様書と追加機能のメモから変更要求仕様書を作成できた.
 空白の項目を一般的な例で埋めるよう指示するとそれらしい文章を追記してくれた.
・テスト観点と仕様書例を与えることで,欲しいテストケースが得られた.
 
■わかったこと
・要求仕様書作成指示の際にIEEE Std 830やESPRなどできるだけ詳細な条件を与えた方が良い.
・変更要求仕様書に以前からの機能か追加機能かを明確にするよう指示したが,正しく明確化できなかった.
・最終チェックは人間が行う必要がある.人間にはチェックできる能力が必要
 
■次にやること
・ASDoQのシステム開発文書品質特性を与えることで,要件が品質特性のどれに該当するかを自動的に付与できるかを試してみたい.
 
 
★★4班★★
ChatGPTを利用することで,要求仕様書やテスト仕様書の漏れを指摘できるかについて実験しました.
○×ゲームやムーブレボ要求仕様書を題材にして実験を進めました.
 
■やったこと
・質の高い結果を得るため,スパイラルアップ(何度かやりとり)をすることで,これによりテスト仕様の漏れに気がついた.
・それでも完璧な結果は得られない,最終的には人間が修正してやる必要がある
・LlamaIndexにより現時点でのChatGPTの容量制限を超えるローカル文書をインデックス化しプロンプトから扱えた.
 (依頼文をクエリに置換え順次プロンプト呼び出す処理を自動で行ってくれる)
 
■わかったこと
・ロールを与えることが重要である.
・ロールのバリエーションを複数用意しておくと素早く色々な観点を得られて効率が良い.
・要求漏れを指摘させることは難しかった.
・追加のアイデアをもらえるような依頼方法が有効であった.
・自分のロールじゃないロール(開発者ならテスター)からの指摘が有効であった.
 一人プロジェクトなどでは良い
・ステップ・バイ・ステップのプロンプトが有効であることが分っている.
 要求定義や設計やテストなどのアクティビティをさらに細分化したステップに分解すれば,
 利用価値が高まるはず.目次を検討する価値はありそう.
 
■次にやること
・ChatGPTに分かりやすい記述方法を試す.
 
 
【1班・2班のワークの様子】
 
 
 
【3班・4班のワークの様子】
 
 
2日間じっくり取り組むことで開発プロセスやシステム開発文書にChatGPTを取り入れるコツや手法など多くのものを得ることができました.今回のサマーワークショップの結果は、ASDoQ大会2023のポスター発表でも報告する予定です.文字だけでは十分に伝わらない部分もありますので,ASDoQ大会のポスター発表で,ぜひ活動した班メンバーと直接意見交換してみてください.
 

 


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