山修の開発文書品質入門(7) ―― 要素分解による要求確認

  • カテゴリ 基礎知識 の最新配信
  • RSS
  • RDF
  • ATOM

山修の開発文書品質入門(7) ―― 要素分解による要求確認

カテゴリ : 
基礎知識
 2021-5-31 18:40

山本 修一郎

この連載コラム「山修の開発文書品質入門」では,開発文書に携わる皆さんに役立ちそうな開発文書の品質につながる知識を分かりやすく解説します.

バック・ナンバ

 

 要求を明確に表現するには,要求仕様書などの文書の単位や,それぞれの要求を記述する文章の単位で,明確であることが求められます.その文書や文章を明確にするには,それらを構成する基本単位である個々の文の単位で曖昧性を排除することも必要です.今回は,要求記述の基本単位となる個々の要求文を明確にする方法を考えます.

 要求文を与えられて,「この要求を確認してください」と言われたら,みなさんはどうしますか?要求文の簡単な確認方法として,文を構成する部分ごとに確認する方法を紹介します.

 

■部分要素に分解する

 次の要求文の例を考えます.
 
<要求文例1>
セキュリティ監視システムは,通常の間隔では少なくとも60秒おきに,デバイスの状態を通知しなければならない.
 
 この場合,部分要素は次の5個です.
  • セキュリティ監視システム
  • 通常の間隔では
  • 少なくとも60秒おきに
  • デバイスの状態
  • 通知しなければならない
 この部分要素ごとに,要求内容の明確性を確認できます.
 

■部分要素を確認する

 分解した部分要素ごとに,含まれる対象項目に対して,「期待事項」と「例外事項」が明確になっているかを確認します.明確になっていない場合は,表1のように「期待事項」と「例外事項」が明確であるかを確認する質問を考えます.
 
表1 セキュリティ監視システムの要求確認表
  
 

■組込み仕様への適用例

 他の例として,この分解による確認方法を用いて,組込みシステムのソフトウェア仕様を確認してみます.
 
<要求文例2>
本プログラムは,温度切替スイッチによって,送風温度の高低の切り替えを行い,ヒータ面の選択と加熱を制御する.
 
 この要求文例の部分要素に対して,確認表を作成すると,表2となります.
 
表2 送風制御システムの要求確認表
  
 

■まとめ

 以上をまとめると,次の通りです.
 
【要求確認方法】
[入力] 要求文
[手順]
①要求文を部分要素に分解する.
②部分要素について,確認する必要がある「対象項目」を抽出して,要求確認表を作成する.
③要求確認表を用いて,抽出した「対象項目」に対して,「期待事項」と「例外事項」が明確になっていることを確認する.
④もし明確でない場合は,要求確認表で不明点を指摘する.
[出力] 要求文に対する要求確認表

 

 このようにして,要求文を部分要素に分解して要求確認表を作ることによって,明確になっていない点をあぶりだすことができます.これは,要求を確認する側だけでなく,要求を書く側にとっても活用できる方法です.書く側では,要求文を記述する際に,要求確認表で予め整理することによって,曖昧な要求記述を回避することもできます.

  • コメント (0)
  • トラックバック (0)
  • 閲覧 (11177)

トラックバック

トラックバックpingアドレス https://asdoq.jp/blog/tb.php/12

メニュー

サイト内検索

カテゴリ一覧

ログイン

ユーザ名:

パスワード:

次回からIDの入力を省略



パスワード紛失