山修の開発文書品質入門(5) ―― IREBによる要求文書の品質とは

山修の開発文書品質入門(5) ―― IREBによる要求文書の品質とは

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基礎知識
 2014-7-15 6:00

      山本 修一郎

 

この連載コラム「山修の開発文書品質入門」では,開発文書に携わる皆さんに役立ちそうな開発文書の品質につながる知識を分かりやすく解説します.

バック・ナンバ

 

ASDoQでは現在,システム開発文書品質とは何か、その品質特性にはどのようなものがあるかを定義する活動を進めています.

 

本稿では,システム開発文書の中でも,文書としてとくに大きな役割を担う要求文書の品質に関して,これまで研究されているものを紹介します.

前稿でも紹介した国際要求工学委員会(IREB)[1]は,要求文書に関連する教育単位(EU:Education Unit)を定めています.

その中の「要求の文書化(EU4)」には,教育目標として「要求文書の品質基準(EU4.5)」(要求文書の品質を活用できる)が設定されています.今回は,IREBが定義する「要求文書の品質基準」とはどのようなものかを,解説します.

 

 IREBは,要求文書が満たすべき品質基準として,IEEE std.830-1998 [3] が推奨する次の4項目を参照しています[1][2].

  • 明確性と一貫性
  • 修正容易性と拡張可能性
  • 完全性
  • 追跡性

さらに,要求文書は後続する開発工程の基礎となるので,要求文書が明確な構造をもつ必要があるとしています[4].

 

 以下に,それぞれの項目を説明します.

 

■  明確性と一貫性

要求文書が明確で一貫しているためには,個別の要求が明確で一貫していることが必要です.また,個別の要求が互いに矛盾していないことが必要です.

そのために,要求文書と要求に一意な識別子を付与しておきます.これによって,要求文書と要求との間を矛盾なく明確化できます.

ここで,「明確性」と「一貫性」とは,それぞれ次のように定義します.

【明確性】 要求が異なる複数の意味に解釈されないとき,この要求は明確である.

【一貫性】 異なる要求が互いに矛盾しないとき,これらの要求は一貫している.

 

 修正容易性と拡張可能性

プロジェクトの進行に従って,要求の変更・追加・削除が発生するので,要求文書が容易に拡張できるようになっている必要があります.したがって、要求文書の構造は修正、拡張が容易である必要があります.

 

■  完全性

要求文書が完全であるためには,次のことが必要です.

  •  適切な要求をすべて含んでおり,それらの要求が完全に文書化されていること
  • システムの機能について,すべての可能な入力や環境要因に基づいて必要な応答を記述すること
  • これらの記述には,入力や環境要因の逸脱に対する例外処理も含むこと
  • 応答時間や可用性,操作性などの品質要求についても記述すること

 

また,要求文書の様式面での完全性としては,次のことが必要です.

  •  図表および参考文献が番号付けられ,本文で適切に参照されていること
  • 重要な用語の定義が要求文書で記述されていること

 

■  追跡性

要求文書と、業務プロセスやテスト計画・設計書などの他の文書との関係に基づく追跡性があることは,要求文書の重要な品質基準です.

 

■  明確な構造

明確な構造を持つ要求文書では,必要な部分を選択して読むことができます.そのため可読性を向上できます.明確な構造の要求文書を作成するためには,たとえば,IEEE std.830-1998が推奨するソフトウェア要求仕様の標準的な構成例などが利用できます.

 

参考文献
[1] The home of Requirements Engineering, http://www.ireb.org/
[2] IREB Certified Professinal for Requirements Engineering - Foundation Level-Version 2.1 Dec.20th 2012
[3] IEEE Std 830-1998, IEEE Recommended Practice for Software Requirements Specifications, 1998
[4]  Klaus Pohl, Chris Rupp, Requirements Engineering Fundamentals, A Study Guide for the Certified Professional for Requirements Engineering Exam Fundamental level / IREB compliant, rockynook, 2011
 

 

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