ソフトウェアテストシンポジウムJaSST’11 Tokaiにて,代表幹事の山本(雅)と運営委員の森川が、ポスターセッションとSIG(Special Interest Groups)に参加しました.
JaSST' 11 Tokai
特定非営利活動法人 ソフトウェアテスト技術振興協会 (ASTER)とJaSST'11 Tokai 実行委員会が主催し,東海地区で開催するテスト技術に関するシンポジウム.なお、JaSSTは、他に東京と九州で開催される.
http://jasst.jp/archives/jasst11n.html
開催日時:2011年11月11日(金) 10:00 - 18:30
開催場所:名古屋市中小企業振興会館4F (名古屋市千種区)
開催時間:13:00~13:30
山本(雅)と森川はASDoQの活動を紹介しました.ほとんどの方がASDoQの名前さえもご存知無く,直接説明した方と周りで聞かれていた方を合わせて15名程度の方にASDoQの存在を知っていただくことができました.
ディスカッションを通じ,ほとんどの方が文書品質に対して高い関心を持っておられる様子をうかがい知ることができました.何名かの方からは,ASDoQに参加したいというご意向も頂戴できました.
その一方で,立ち上がったばかりの研究会のため本当に成果が出るのかわからない,参加したくても会社の理解を得にくい,という意見もいただきました.
多くの企業様に理解・協力していただけるよう,このような会で継続して広報活動を行います.
開催時間:16:15~18:15
SIGオーナー:山本(雅),森川
SIG参加人数:12名(SIGオーナーを除く)
山本(雅)の進行の下,次の項目を実施しました.
「仕様書がない」,「仕様書に書かれていることは全てではない」という状況において,テストが行われている現状を知り,我々2人は唖然としました.
上流工程の開発文書の品質が良くないために,テスト技術者は困難な作業を行っています.テストエンジニアは,不完全な文書を基に,テストを考えなければなりません.そのため,どうしても「テストが漏れる → 不具合が見つからない → 品質低下 」という悪循環に陥っています.
たとえ,テストに必要な情報が上流工程の開発文書に記載されていたとしても,複数の仕様書に散らばっているケースが多いようです.そのため,テストケース(テスト条件の組み合わせ)の洗い出しがとても難しく,テスト漏れが発生しています.
SIG参加者は,テストを次の手順で行っていました.作成される開発文書が明らかになるように,話をお聞きしました.開発文書をカギ括弧で囲み以下に示します.ただし,時間不足のために,我々の理解が不十分な点を含みます.
(1)「テスト計画書」の作成
「テスト計画書」には,次の項目が記載される:テスト対象物の概要,テスト戦略,テスト期間 など
(2) 「テスト仕様書」の作成
「テスト仕様書」には,次の項目が記載される:テスト対象物の概要を明確にしたもの,具体的なテストのやり方(テスト環境など) など
(3) テスト工程に対応する上流工程の開発文書のレビュー
(4) 「テスト設計書」の作成
「テスト設計書」には,テストの要求分析を実施した結果が記載される.
(5) 「テストケース仕様書」の作成
「テストケース仕様書」には,次の項目が記載される:前提条件,入力,期待出力,手順書,スクリプトなど
(6) テストの実行
テスター=テストを実行する人
実行結果=テスト結果(出力値の羅列)
(7) 「テスト報告書」の作成
テスト計画に対する報告書という位置づけ.
「テストプロジェクト完了報告書」とも呼ばれる.
参加者の方に,普段,上流工程の開発文書に対して感じている問題点を,付箋紙に書き出してもらい,模造紙に貼り付けて整理しました.そこから,上流工程における開発文書とその作成者に対して,次の問題点が見えてきました.
上流工程の開発文書の品質が低いため,テスト工程にしわ寄せが来ている.
ASDoQの取り組みを多くの方に知っていただけ,非常に関心を持っていただけたことがよかったです.是非ASDoQに入会いただければと思います.
また,テストエンジニアが抱える問題の原因の1つに,上流工程の開発文書品質の低さがあることがわかりました.また,テスト工程内の文書についても同様の品質問題を抱えていることがわかりました.そのため,ASDoQの活動によって,文書品質を向上できれば,テストに関する多くの問題が解決できそうだと感じました.ASDoQの活動の必要性を再確認できました.
(森川)
組込み総合技術展(ET2011)のIPAブースにて、事務局長の藤田悠(長野高専) が、「システム開発文書品質の課題と研究―ASDoQ へのお誘い―」について発表しました。
また、本研究会の活動を紹介するポスターを展示しました。
お立ち寄りくださった皆様、ありがとうございました。
発表で用いたプレゼンテーションファイルとポスターをダウンロードしてご覧頂けます。
電子情報通信学会 知能ソフトウェア工学研究会(KBSE)にて,ASDoQ運営委員の山本修一郎が,「開発文書品質の研究課題についての考察」を発表しました.
KBSE開催プログラム
日時:2011年11月11日(金) 9:40 - 10:20
場所:信州大学工学部 地域共同研究センター
発表先:電子情報通信学会 知能ソフトウェア工学研究会(KBSE)
発表者:山本修一郎(ASDoQ運営委員)
共同発表者:栗田太郎(ASDoQ幹事)・山本佳和(ASDoQ運営委員)
システム開発を成功させるためには,開発文書の品質が重要です.これまでに,プログラムのソースコードについては品質メトリクスなど多くの既存研究があります.しかし,開発文書の品質については明確な定義や評価基準,ならびに,その活用,改善方法がまだ確立されていません.
このため,開発文書品質の研究課題を整理するとともに,ASDoQ研究会のロードマップ部会で進めている,開発文書品質研究のロードマップ策定に向けた取り組みを紹介しました.
[1] 山本修一郎,栗田太郎,山本佳和,開発文書品質の研究課題についての考察,電子情報通信学会,信学技報, vol. 111, no. 282, KBSE2011-45, pp. 55-60, 2011年11月.
(Q1) 開発文書には,自然言語,図式言語,形式言語があると整理されているが,図式などのモデルと開発文書の具体的な扱いについてはどのように考えていますか?
(A1) 自然言語と図式言語との相互関係の整理が追跡性の点でも課題であると認識しています.従って,この課題解決の必要性と解決時期などをロードマップ上に明示したいと思います.
(Q2)ソフトウェア要求仕様書について公開されている事例がほとんどないのが現状です.ASDoQ研究会 ではソフトウェア要求仕様書の事例の公開を考えていますか?
(A2)人材育成部会で開発文書のサンプル作成を考えているので,この部会に参加して いただければ,サンプルを入手できると思います.作成されたサンプルが公開されるかどうかは, 人材育成部会で判断されると思います.
(Q3)システム開発文書化技術については1980年代に多くの取組みがあったにもかかわらず,現代ではそれらの知識のいくつかが失われているため,それらを復興する必要があると 指摘されましたが,今回整理された知識が再び,失われる可能性はないのでしょうか?
(A3)もちろん,その可能性は否定できません.しかし,当時と現在の大きな違いの一つに,文書がデジタル化され,整理した技術をインターネット上でオープンに公開できることがあります. これまでは,知識が書籍として書庫に納められていたので,忙しい現場の技術者にとっては, その知識へ簡単に接近する方法がなかったと思います.今では,整理した知識をデジタル化してインターネット上で公開できるので,容易に閲覧できます.また,一度公開しておけば,そのサイトがなくならない限り, いつでもだれでも閲覧できます.
(山本修)