2014年3月14日(金)に,,情報処理推進機構(IPA)にて「ディペンダビリティに関する定期意見交換会」が開催され,ASDoQ代表幹事の山本雅基が出席しました.
2014年2月27日に東京大学 情報学環・福武ホール ラーニングシアターにて,第5回産業日本語研究会・シンポジウムが開催されました.ASDoQ幹事の塩谷敦子が活動を発表しました.
ASDoQがシステム開発文書品質に取り組む背景,ASDoQの概要,これまでの成果と現在進行中の活動紹介,そして今後の取り組み予定を発表しました.
他のご講演者の発表では,招待講演として,特許庁 審査第一部調整課審査基準室 室長 滝口尚良氏が「特許制度における明細書等の役割について」をご講演されました.特許制度において,権利行使上の観点から明細書の解釈の違いによる,裁判所の判断の相違の例を示され,特許文書作成上の留意点や翻訳時の留意点を述べられました.
また,産業日本語研究会さんが取り組む対象として代表的な特許文書だけでなく,次のような別種の文書を分かりやすくする取り組みのご発表もありました.
そして,次のようなそれぞれの分野で作成されたライティングのガイドやマニュアルのご紹介もありました.
さまざまな分野での分かりにくい文書の例を,報告者はたいへん興味深く感じました.そして,それぞれの記述に求められる分野固有の特性はあるものの,表現の構造化や言語処理,また翻訳などにおいても,分かりやすさ(文書品質として重要と言える一つの要素)の観点では,共有できる部分が多いと感じました.
シンポジウム後に行われた講演者と参加者による懇親会では,マニュアルや設計書の翻訳などで開発文書に関わる方々から,お声がけをいただきました.また,「開発文書は,特許文書などと異なりお役所相手ではないから,文書の品質の規定や標準化はやりやすいのではないか」などとアドバイスもいただきました.
ASDoQの中でも,会員の皆さんはそれぞれ立場が異なり様々な課題をお持ちです.いろいろな方面での成果や活動も参考にさせていただき,今後もそれぞれの課題に対して共通部分は共に取り組み,議論できる機会を持てれば,と思っています.
(報告 塩谷)
1月31日に第6回研究会を開催しました.会員および非会員29名が参加しました.概要は次のとおりです.
日時:2014年1月31日(金) 13:00-17:30
場所:名古屋大学 情報基盤センター
--------------------------------------------------------------------------------
2013年度におけるこれまでのASDoQの活動を、代表幹事と作業部会が報告しました。
山本雅基代表幹事が、2013年度に主催した行事、ASDoQ大会2013での活動、2013年度に外部団体向けに行った活動を紹介しました。
現在の4作業部会の中から、次の2つの作業部会が、現在取り組んでいる活動を報告しました。
部会が、 「日本語スタイルガイド」[※1]のルールに従ってシステム開発文書を作成する上でのルールを例示、しその解説と良い例文・悪い例文を作成する活動に取り組んでいることを、山本雅基部会主査が紹介しました。
[※1]テクニカルコミュニケータ協会(著) 「日本語スタイルガイド第2版」
この部会は、今年度から活動を始めました。 部会が現在実施している、高専生を対象とした開発文書教育の教材作成と、その教育を実施した結果を、藤田部会主査が紹介しました。
阿部さんの研究から、システム開発文書を含む情報伝達型文書において、個別の細かい文章ルールの上に存在する、より包括的な指導原理のいくつかをお話いただきました。そして、その原理が適用される例や例文をご紹介いただきました。
ご発表資料は、「会員向け資料」からダウンロードできます。
小林さんらが取り組む、ツールと教育を組み合わせて開発文書の品質を向上させる活動事例が紹介されました。ツールは、開発文書を診断し、主にあいまい表現を発見します。文書全体に対するあいまい比率を1つの指標として、ツール利用と教育の結果から、文書の種類による影響や、レビュー指摘とあいまい比率との関係などを分析した事例をお話しいただきました。
藤田さんらは、システム開発会社のマニュアル作成に携わる部門で活用するライティングガイドラインを作成する活動をしています。そして、ガイドラインには重要度を付与し、文書の種類別の例文を与え、品質評価指標に分類することによって、開発文書の品質向上につなげる取り組みの紹介がありました。
XDDP[※2]とUSDM[※3]を適用し、要求仕様品質を上げることによって開発自体の品質を向上できた事例をお話いただきました。
[※2] XDDP:eXtreme Derivative Development Process 派生開発に特化した開発プロセス
[※3] USDM:Universal Specification Describing Manner 仕様漏れや解釈違いの入りにくい仕様表記法
1つめの事例では、オフショアでの派生開発にXDDPの変更要求仕様書を導入し、バグ摘出や信頼度成長において数値的に効果を確認できただけでなく、状況の分かりやすさ、判断のしやすさ、安心感などの定性的な効果も実感できたとのことでした。
また2つめは、次世代車載情報端末システムの新規開発にUSDMを適用した事例をご紹介いただきました。石崎氏は、要求仕様に関わる問題として、後戻りのコストや、後工程での視点の違いによる問題抽出の難しさなどを挙げ、仕様不明がもたらす進捗の停滞を防ぐことに注力されたとのこと。具体例として、T.B.D.を排除し暫定仕様として明示したり変更案件の管理を徹底したことで、仕様変更を未然に防止し不具合の流出を押さえたご経験をご紹介いただきました。
ご講演の最後に、ノウハウや指針を「活動を通して得たこと」として述べられました。
報告者の私見ですが、ノウハウや指針の多くは、要求仕様書に限らず他の開発文書にも当てはまると感じました。開発を成功させるための文書の重要性を、開発現場での事例を根拠にあらためて実感するご講演でした。
ご講演資料「ソフトウェア開発を支える要求仕様 ~USDMの活用事例・知見・今後~」は、「会員向け資料」からダウンロードできます。