2014年10月17日(金)に名古屋大学 ES総合館にて,「ASDoQ大会2014」を開催しました.研究会を設立してから,3回目の大会でした.
今回は,「見直そう!開発文書のあるべき姿~安心安全な社会を目指して~」をテーマとして,第1部 チュートリアル,第2部 講演会,第3部 情報交換会の3部構成で実施しました.参加者の総数は118名であり,過去最多でした.
午前に開催されたチュートリアルは,パラレルで実施しました.村田珠美さんが「開発文書の品質向上に役立つライティングテクニック」を,古畑慶次さんが「USDM入門 ~仕様モレをなくす要求仕様書の書き方~」を,それぞれ演習付で講義しました.事後アンケートには,「自社に持ち帰ってメンバに伝えたい」「実践したい」などと書かれていました.皆さんにとって,有益なチュートリアルになったようです.
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午後の講演会は,プログラム委員長の森川聡久さんの事前アンケート集計報告から始まりました.今年の参加者は,システム開発者が大半を占めていました.
[森川さんによるオープニングの様子]
最初の講演は,安倍秀二さんの「自動車分野・機能安全分野での文書要求と開発プロセスの対応」でした.開発現場での指導経験を踏まえた言葉に重みがあり,色々と考えるきっかけを頂戴したご講演でした.例えば「開発者は言われたまま文書を書くのではなく,自分で考えて書くべきである」と指導しているとのお話しに,多くの皆さんが頷きながら聞いておられました.
[安倍さんによる講演の様子]
ディン・ティエン・フゥンさんは,アウトソーシングを受託する立場から,「ここがダメ!日本人技術者の文書力」と題した講演をされました.実際の開発現場で,日本人技術者が書く文書を,懸命に読み解く外国人技術者の姿が浮き彫りになりました.外国人にとって分かりやすい文書を書くように心がけることが,開発内容を明確にすることや,日本人同士でも生じる誤解を防止することに繋がるという気づきがありました.
[フゥンさんによる講演の様子]
細谷泰夫さんは「アジャイル開発におけるドキュメンテーションの考え方」を講演されました.アジャイル開発では文書を書かないと思われている方も多いようですが,決してそうでは無いことを示されました.何を開発文書に書けば良いのかを追求することは,技術者としての仕事の本質を追究することに繋がるようです.
[細谷さんによる講演の様子]
藤田悠さんは「システム開発文書の品質定義における中間報告」を示しました.この中間報告を叩き台にして,年度末に第1版の品質定義を報告できるように,皆で協力して取り組みましょう.
パネルは,山本修一郎さんのアシュアランスケースに関するミニ講義で始まりました.山本雅基さんが司会をして,「開発文書はどのように進化すれば良いのか」の方向性をフロアからの質問を交えて話し合いました.アシュアランスケースに代表される新技術を実際の開発現場で用いるためには,開発文書として表現する必要があります.現場でのシステム開発のQCDを高めるために,開発文書をさらに進化させる必要がありそうです.
[山本修一郎さんによるミニ講義]
[パネルの様子]
最後に,アンケート結果をご紹介します.
ASDoQ大会全体の印象を5肢選択(満足,ほぼ満足,可もなく不可もない,やや不満,不満)で問い合せたところ,満足が31%,ほぼ満足が62%,可もなく不可もないが7%となりました.次のようなコメントが書かれていました.
システム開発文書品質について考えることは,私たちに多くの気づきを与えるようです.これからも,様々な角度から取り組んでいきましょう.
SWEST16は,2014年8月28-29日に開催されました.私たちは,8月28日 21:00-22:30の夜の分科会のセッションを担当しました.
6月30日に第8回研究会を名古屋大学にて開催しました。
今回の研究会では、活動報告及び品質定義に関する話題提供を行い、 「品質定義プロジェクト」の一環として、 システム開発文書の品質の整理を行いました。
藤田が、6月9日から11日まで秋田で行われたソフトウェアシンポジウム2014にて開催した ワーキンググループ「システム開発文書品質」の活動報告をしました。 ASDoQ会員を対象に実施したアンケート結果を基に、 開発者が求める品質として8性質を定義し、それぞれの品質を高めるために寄与する活動をまとめました。
山本雅が、人材育成部会で進めてきた活動について報告しました。テクニカルコミュニケーター協会のスタイルガイドを基に、例文を考える活動についてのまとめを紹介しました。 例文が作られたルールと作られていないルールの傾向を分析し、活動の結果からシステム開発文書の品質の上位特性として7特性を提案しました。
前回の研究会で紹介したシステム開発文書品質の5特性を、塩谷さんが改めて説明しました。 これまでの作業部会で検討した品質特性や、システム開発に関連する品質特性との関係づけの試みなどを紹介しました。
5人ほどからなる3グループに分かれて、 話題提供で示された3種類の品質特性を基に、 システム開発文書品質について整理し、ラベルづけなどをして、 品質特性をまとめる活動をしました。
グループ1では、 何を書くか、どう伝えるかという視点から、2種類の性質に分けられるのではないかという議論になりました。上流工程と下流工程における、品質評価の重みづけに違いがあるのではないかとい意見もありました。
グループ2では、 「内容」と「表記」の軸と、品質特性の軸に分けて分類しました。「目的」は全体にかかるので、「前提条件」として別に扱うことにしました。ステークホルダによって、求める品質が異なるので、ステークホルダーを決めて検討することが必要ではないかということが提起されました。
グループ3では、提案された3種類の品質特性を、「書くときに必要な品質特性」と「読むときに必要な品質特性」に分けました。「合目的性」については、読む人と書く人それぞれの目的があると考えました。さらに、文書を作成するプロセスに沿って品質特性を位置づけました。
各グループによる発表後、発表全体に対して以下の意見がありました。
今後も、会員の皆さんとの討議を進めながら、システム開発文書の品質を定義する活動を継続していきます。