2014年12月11日に,名古屋大学にて,ASDoQ第9回研究会を開催しました.
ASDoQ大会2014後に開催するはじめての研究会になります.大会のほかに,ASDoQが開催した行事の報告と,ASDoQ大会で発表した「システム開発文書の品質特性」の中間発表をもとにして,システム開発文書の品質に関する議論を重ねました.
はじめに,前回の研究会以降にASDoQが行った行事について報告しました.
山本雅基さんが第16回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST16)で開催した「開発文書と感情の意外な関係」と題して行ったセッションの内容を紹介しました.
山本雅基さんが発表する様子
続いて,ASDoQ大会2014の報告を森川さんが行いました.参加者の皆さんから申し込み時に回答していただいたアンケートを紹介し,大会当日に参加者の皆さんに回答していただいたアンケートから,概ね好評であったと報告がありました.次回テーマの要望を伺いました.
森川さんが発表する様子.
次に,小林さんが,ソフトウェア品質シンポジウム 2014で行ったSIG(Special Interest Group)「見直そう!開発文書のあるべき姿」で取り組んだ結果などを紹介しました.議論の中で上がった性質が,ASDoQが中間発表で提案した品質特性で賄えている様子であった印象などを紹介しました.
小林さんが発表する様子.
次に,10月17日に行ったASDoQ大会2014にてASDoQが発表した,システム開発文書の品質定義に関する中間発表の内容を,藤田が紹介しました.11月20日に組み込み総合技術展ET2014にて塩谷さんが発表したプレゼンテーション資料や,その後に追加した資料により,品質特性の説明をより詳しく提示して,参加者の皆さんから意見をいただきました.
藤田が説明する様子
さらに,中間発表での品質定義や,測定方法,品質の具体化などについて,参加者全体で議論しました.
議論ののち,クリスマスの雰囲気のなか,参加者の皆さんで,情報交換会を行いました.
情報交換会
2014年10月17日(金)に名古屋大学 ES総合館にて,「ASDoQ大会2014」を開催しました.研究会を設立してから,3回目の大会でした.
今回は,「見直そう!開発文書のあるべき姿~安心安全な社会を目指して~」をテーマとして,第1部 チュートリアル,第2部 講演会,第3部 情報交換会の3部構成で実施しました.参加者の総数は118名であり,過去最多でした.
午前に開催されたチュートリアルは,パラレルで実施しました.村田珠美さんが「開発文書の品質向上に役立つライティングテクニック」を,古畑慶次さんが「USDM入門 ~仕様モレをなくす要求仕様書の書き方~」を,それぞれ演習付で講義しました.事後アンケートには,「自社に持ち帰ってメンバに伝えたい」「実践したい」などと書かれていました.皆さんにとって,有益なチュートリアルになったようです.
午後の講演会は,プログラム委員長の森川聡久さんの事前アンケート集計報告から始まりました.今年の参加者は,システム開発者が大半を占めていました.
[森川さんによるオープニングの様子]
最初の講演は,安倍秀二さんの「自動車分野・機能安全分野での文書要求と開発プロセスの対応」でした.開発現場での指導経験を踏まえた言葉に重みがあり,色々と考えるきっかけを頂戴したご講演でした.例えば「開発者は言われたまま文書を書くのではなく,自分で考えて書くべきである」と指導しているとのお話しに,多くの皆さんが頷きながら聞いておられました.
[安倍さんによる講演の様子]
ディン・ティエン・フゥンさんは,アウトソーシングを受託する立場から,「ここがダメ!日本人技術者の文書力」と題した講演をされました.実際の開発現場で,日本人技術者が書く文書を,懸命に読み解く外国人技術者の姿が浮き彫りになりました.外国人にとって分かりやすい文書を書くように心がけることが,開発内容を明確にすることや,日本人同士でも生じる誤解を防止することに繋がるという気づきがありました.
[フゥンさんによる講演の様子]
細谷泰夫さんは「アジャイル開発におけるドキュメンテーションの考え方」を講演されました.アジャイル開発では文書を書かないと思われている方も多いようですが,決してそうでは無いことを示されました.何を開発文書に書けば良いのかを追求することは,技術者としての仕事の本質を追究することに繋がるようです.
[細谷さんによる講演の様子]
藤田悠さんは「システム開発文書の品質定義における中間報告」を示しました.この中間報告を叩き台にして,年度末に第1版の品質定義を報告できるように,皆で協力して取り組みましょう.
パネルは,山本修一郎さんのアシュアランスケースに関するミニ講義で始まりました.山本雅基さんが司会をして,「開発文書はどのように進化すれば良いのか」の方向性をフロアからの質問を交えて話し合いました.アシュアランスケースに代表される新技術を実際の開発現場で用いるためには,開発文書として表現する必要があります.現場でのシステム開発のQCDを高めるために,開発文書をさらに進化させる必要がありそうです.
[山本修一郎さんによるミニ講義]
[パネルの様子]
最後に,アンケート結果をご紹介します.
ASDoQ大会全体の印象を5肢選択(満足,ほぼ満足,可もなく不可もない,やや不満,不満)で問い合せたところ,満足が31%,ほぼ満足が62%,可もなく不可もないが7%となりました.次のようなコメントが書かれていました.
システム開発文書品質について考えることは,私たちに多くの気づきを与えるようです.これからも,様々な角度から取り組んでいきましょう.
SWEST16は,2014年8月28-29日に開催されました.私たちは,8月28日 21:00-22:30の夜の分科会のセッションを担当しました.