2017年4月21日に名古屋大学にて,ASDoQ定期総会・第15回研究会を行いました.
研究会に先立ち,2017年度定期総会を行いました.委任状をお送りいただき,ありがとうございます.総会の成立条件を満たすことができました.総会では,2016年度の事業報告,2016年度決算報告,2017年度の事業計画,2017年度収支計画,2017年度役員改選について説明しました.最後に,議事に対して承認をいただきました.
引き続き,第15回研究会にて,初めにASDoQ大会2016の事例発表で優秀発表の1つとして表彰された「USDMを用いた非機能要求仕様書の作成」について,デンソーの水藤氏にご講演頂きました.
次に,4月15日に発行された情報処理学会ディジタルプラクティス誌に掲載された「システム開発文書品質モデル活用への取組み」について,山本雅が紹介しました.
引き続き,2017年度のASDoQでの活動について,藤田がロードマップを示して,参加のみなさんからご意見を頂きました.
今年度は,新たにワーキンググループを仕切りなおして「文書品質モデル活用WG」,「文書品質測定WG」,「人材育成WG」が活動を開始いたします.文書品質モデルの利用が促進するように,みんなで取り組んでいきましょう.
2017年2月17日(金)に,フェリカネットワークス会議室にて,第14回研究会を開催しました.今回は,久々に東京での開催にて,予想を超える24名の皆さんにご参加いただきました.
はじめの事例発表&討議では,町田欣史様(NTTデータ)に「勉強会『わかりやすい日本語を書こう』の開催結果から見る文章作成のポイント」をご講演いただきました. 本講演では,ASDoQ大会2016にて事例発表として町田様が発表された内容をベースにして,より詳しくまた新たな情報も加えてお話しいただきました.
町田様は,「わかりやすい日本語を書こう」というテーマの勉強会を社内外で開催し,日本語の文章がわかりにくくなる45個の問題を8つのカテゴリで整理されました.その分類の結果と共に,具体例を交えてそれぞれの問題を解説いただきました.
さらに,それら45個の問題を勉強会出席者の回答によって「よくある問題」「今まで気づかなかった問題」「特に注意したい問題」に分類し,分かりやすい日本語の文章を書くためのポイントをご提示いただきました.本講演では、各問題をASDoQのシステム開発文書品質モデルの品質特性・副特性に対応づけした結果もご紹介いただきました.
参加者からは個々の問題の深掘りにつながる疑問や意見が出て,わかりやすい日本語の重要性や必要性をあらためて認識する機会となりました.
町田様発表の様子
次に活動紹介として,栗田太郎様(ソニー)に「読むことと聴くことは,書いたり話したりすることよりも難しい」をご講演いただきました.読む書く,聴く話すをそれぞれ対比させて特徴や求められることをご紹介いただきました.コミュニケーションや思考の原理,また原理に基づくノウハウをお話しいただきました.コミュニケーションの短い演習も行いました.参加者は,文書や会話による情報の受け手として,相手と自分の思考を分析するきっかけを得て,今後のコミュニケーションのヒントをいただきました.
栗田様発表の様子
今回の最後のプログラムでは、ASDoQの文書品質モデル活用WGから「文書品質特性の測定方法の検討」のワークと討議を行いました.
開発文書の文書品質測定の例として,ASDoQが現在公開している要求仕様書サンプルを使い,RISDM[1]による要求仕様書の評価法をヒントにしてグループワークを行いました.そして,ワークを基に,文書品質の測定方法を探りました.今回のワークでは,品質特性によって文書全体や章全体で見るべきものと個々の文単位で見るものの差があること,見なくてよい項目や部分の選別基準が必要となる,などの意見が出ました.これらは,今回のワークに限らず,モデルを活用した文書品質の測定で、同様の課題となるのではと思われます.モデル自体の改善も含め,より具体的な活用の検討を,WGおよび研究会として進めていきたいと思います.
<参考>
[1] 斎藤 他,RISDM:ソフトウェア要求仕様書のインスペクションデザイン方法論の提案と適用評価, SES2014論文集, Sep.2014, pp105-114
文書品質モデル活用WG活動の説明
2016年11月4日に名古屋大学にて,ASDoQ大会2016を開催しました.
今年のテーマは,「開発文書の伝達力~業務効率の向上を目指して~」でした.
チュートリアル1は,「読み手とエンドユーザーを理解する ~マニュアル的制作手法を開発文書に活かす~」と題して,エプソンアヴァシスの北条さんが講義されました.分かりやすく的確に伝達することを目指しているマニュアル技術者の立場で技術文書の作成に工夫している点を演習を交えて説明され,開発技術者にとって有意義な内容でした. チュートリアル2は,「開発文書コミュニケーション~開発文書に必要な品質とは~」と題して,長野高専の藤田さんが講義されました.他者が作成した設計書の内容をどのように理解するかについて,文書の書き手と読み手の立場を通して,チェックシートを用いて文書の品質をチェックする演習行いました.
多くの開発者は,普段から「開発文書を書いて」います.開発文書には,多様な目的がありますが,その一つが,読み手に開発に関する情報を伝えることです.しかし,なかなか伝わらない実体があります. さて,相手に伝わる開発文書のあるべき姿は,その片鱗を見せてくれるのでしょうか.
午後からは,講演会やパネルディスカッションなどが行われました.オープニングで,本大会のプログラム委員長である森川さんが,申込時に皆さんに書いていただいたアンケート集計の結果を報告しながら,大会の開始を宣言しました. 今回は,70名程度が参加されましたが,半数以上がASDoQの非会員の方でした.開発文書の品質に対して,会員外にも関心が広まっています.
最初に,日新システムズの前川さんによる招待講演「デザインを共有しリズムを作り出すためのドキュメンテーション ~ 伝達のためではなく、全員で共有するためのドキュメントの作り方 ~」が行われました.前川さんは,アジャイル型開発の経験が豊富なアジャイル伝道師のお一人です. よく知られたアジャイルソフトウエア開発宣言には「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」という記載があります.これは,包括的なドキュメントの価値を認めつつ,それよりも動くソフトウェアに価値を求めることを宣言したのもです.前川さんは,豊富なアジャイル開発のご経験から,チームで情報を共有してチームで動くソフトウエアを開発するためには,ドキュメントが必要であることを述べられました. 要求や設計をするときには,その「理由」を明記する重要性を強調されました.それにより,チームで情報の共有が深くできます.そして,情報共有のツールとして,ポストイットを活用していることなどを,ご自身の事例を用いてご説明されました.
続いて,ASDoQの運営委員から,活動の現状報告が行われました.報告資料を,以下に掲載します.
2件目の招待講演は,名古屋大学の戸田山さんにより「『オレはわかってるもんね』から逃れるためにはどうすればよいのだろう」と題して,行われました.著名な哲学者である戸田山先生は,フランシス・ベーコンのイドラ(真から遠ざける要因)論から話を始められ,私たち人間は「わかったつもり」に陥りがちだから,それを前提にして,その対応策を考えるべきであると述べられました.現在,その対応方法を整理している最中とのことで,検討中の3点の方法を述べられました.
(1)ヒトに備わった認知のバイアスを知ること:それを知れば,分かったつもりになる自分を戒めることができる
(2)相対化の視座を持つこと:色々な視点で物事を見る癖付けをして,決めつけないようにする
(3)リサーチ・リテラシーを高める:ベーコンの言う劇場のイドラ(論証の誤った諸規則)に注意する
続いて,「開発文書お悩み相談室」と題して,パネルディスカッションが行われました.モデレータは,デンソー技研センターの古畑さんがつとめられました.パネラとして,招待講演のお二人に加えて,ユーザマニュアルの執筆などの技術情報を伝える仕事をされているテクニカルライタの方が多く集まるテクニカルコミュニケータ協会から山崎さんが,そしてASDoQからは山本雅が参加しました.古畑さんの軽妙な司会の元で,会場からの質問を受け,パネラが答えました. 開発文書の品質を高めたいや,そもそもソフトウェアの価値を上司に理解してもらいたいなど,様々な悩みが寄せられ,パネラがそれぞれの立場で答えました.
講演会場の外には,9件のポスターが展示されました.
パネルディスカッションの後には,ポスターを会議室に運び込み,事例発表と討議が行われました.各ポスターの前には,発表者と聴講者が集まり,熱心に意見交換が行われました.聴講者による投票が行われて,同票で次の2件の事例発表が表彰されました.おめでとうございました.
「USDMを用いた非機能要求仕様書の作成」水藤 倫彰(株式会社デンソー),古畑 慶次(株式会社デンソー技研センター)
「『観点60』-仕様書の問題点指摘手法」藤田真広,森田文弥,江藤隼介),橋本浩志,奈良慶之,濱田裕介,久保田潤(株式会社ベリサーブ),山本修一郎(名古屋大学)