2022年8月8日(月)15:00-18:00に、第30回研究会をオンライン(Zoom)にて開催しました。
コロナ禍前は毎年、サマーワークショップという合宿を開催していた時期です。
今回の研究会は、参加者10名という少人数でしたが、サマーワークショップのような雰囲気でワークを実施することができました。終了時間を超過し、非常に良い議論で盛り上がることができました。
1. [ワーク] 品質特性を具体化しよう
ASDoQでは現在、「システム開発文書品質モデル」を活用しやすくするため、ガイドブックなど解説文書の作成活動に注力しています。今回のワークでは、今まであまり深堀してこなかった品質特性「完全性」「論理性」の「測定項目」に対して、以下の4つの観点で具体化を検討しました。
①適合するためには、どこに何をorどう書くか?
②適合する記述例
③検証する方法
④その他、具体化する要素やヒント
違反する記述例や、どう書いてはいけないか、品質特性や副特性や他の測定項目との関連性など
最初にASDoQ幹事の山本さんから文書品質モデルの5分解説、ASDoQ代表幹事の塩谷さんからワークの狙いと進め方の説明がされました。塩谷さんの作成した例に倣い、各自で具体化を検討しました。その後、3グループに分かれて、約1時間のグループ検討を実施しました。
各グループのまとめ役から、成果を発表していただきました。その際の主な気づきを以下に紹介します。
〇完全性-合目的、完全性-正確(山本)
・合目的の例がわかりやすい。皆で検討すれば、さまざまなパターンの例を作成できそう。
・正確とはどういう状態かが不明確。
・文書品質に直接関係しない測定項目が含まれている。
〇完全性-妥当、論理性-無矛盾(栗田)
・妥当の定義が、V&VのValidationの定義と異なる。
・妥当と合目的の違いが不明確。
・無矛盾と正確の切り分けが不明確。
・トップダウンアプローチで無矛盾に対応可能か不明。例えば、トロッコ問題のように要求自体に矛盾を抱えているものに対して、どう対処したらよいか不明。
・全ての情報を文書化できるわけではないし、すべきではない。この場合、文書化されていない情報との矛盾について、どうやって検出すべきか不明。
〇論理性-一貫、論理性-構造(塩谷)
・複数の測定項目に共通する具体的な記述法あり。
・論理性・構造は、完全性・合目的にも似ている評価項目あり。
・記述間および文書間の整合性は、多対多の関係で確認が必要。
・一貫していることと矛盾が無いことの違い。項目間の繋がり(一貫性)が無くても、矛盾が無いかは判断できる。
全体的に品質特性や品質副特性の定義が不明確であり、分かりづらさの課題が明らかになりました。また、文書品質モデルの改善案を多数挙げていただくことができました。今後の文書品質モデルの改善の参考とさせていただきます。
2. [討議] 文書品質モデル活用のコツを語ろう
最初に、進行担当の山本さんから本討議の狙いを説明していただきました。文書品質モデルをきっかけに、多くの方にとって、ライティングが上手くなり、開発文書の指導回数が減るといった改善につながると嬉しい。具体的にどういう活用方法が望ましいかを知りたい、とのことでした。
これを受け、参加者から具体的な活用事例として、以下の2件を紹介いただきました。
(a) 仕様書作成やレビュー時の観点リストの強化に使用
(b) 文書研修の前後で、文書作成能力の成長分析に使用
品質特性や品質副特性の分類に関連して、(a)のケースはあまり依存せず活用可能だが、(b)のケースは分類の仕方が重要となる、といった違いが見られました。
業務改善に向け文書品質モデルを上手く活用していただくため、多くの皆様からの活用事例の共有をお待ちしております。
3.情報交換会
研究会での議論を踏まえて、文書品質モデルの改善に向けた議論を継続し、最後まで大変盛り上がりました。会員の皆様のご意見をしっかり取り入れ、活用可能な文書品質モデルに改善していければと思います。引き続き、皆様のご協力をお願いいたします。
次回のASDoQイベントはいよいよ、11月11日(金)のASDoQ大会2022となります。
名古屋大学 東山キャンパス内にある野依記念学術交流館とオンラインでのハイブリッド開催を予定しております。皆様のご参加をお待ちしております。