2019年8月23-24日に京都市にて,ASDoQサマーワークショップ2019を開催しました.
毎年ASDoQでは、夏の京都で合宿形式のワークショップを開催しています.鴨川のせせらぎに涼しさを感じつつ,開発文書について熱い議論を交わしています.
今年のサマーワークショップでは,ASDoQが提唱している文書品質モデルの使い方ガイドライン作成に向けて,例とする開発文書を用いて,指摘,文書品質との関係づけ,改善を,モブワークの方式で実施しました.
◆システム開発文書品質モデルについてはこちら
例とした開発文書は,SESSAMEの「話題沸騰ポット要求仕様書 (GOMA-1015型) 第6版」(最新版は第7版)です.ワークの対象として「6.エラー検知」の章を選びました.
ワークは,昨今話題になっているモブワークの方式で行ないました.
◆モブワークとは
3~4人でチームを組み,皆で同じ表示を見ながら課題に取り組みます.
PCを操作して入力する人は1人(ドライバー)です.他の人はナビゲーターとなり意見を出し合います.意見には,まず,肯定的な反応をします.すると,どんどん意見が出てきます.全員参加により,1人で作業するよりも早くて完成度が高いアウトプットが出せます.
今回は,Googleドキュメントを用いて、各チームで1つの文書を共有しスクリーンに投影して同じ画面を見ながら、指摘や改善の作業を進めました.
最後に皆でバンザイをして,達成を祝います.最初は恥ずかしかったのですが,やってみると,一体感を得られますし,ワークの疲れもとれて爽快でした.
以下は3チームに分かれモブワークを実施した振り返り(KPT:Keep, Problem, Try)の中で,モブワーク自体に対する意見の抜粋です.
◆良かった点,継続したい点(Keep)
・記述品質(品質特性での可読性や理解容易性や論理性)に着目して改善しようとすると、情報品質(品質特性での完全性、とくに正確や妥当)の不備に気づけた.
・チームで理解を深めて共感しながら進めることでチーム力が向上した.
・Googleドキュメントを使うと,皆で並行作業できた.
・ナビゲーターが議論中、ドライバーはリファクタリング作業ができる(文書をレビューできる).
◆改善したい点,良くなかった点(Problem)
・一つの点に議論が集中して,当初計画した分量の文書を処理するうえで,計画よりも時間がかかった.
・Googleドキュメントを使ったので,全員がドライバーになりファイル操作をした時間帯があり,ドライバーとナビゲーターの境目が曖昧になった.これは,モブワークの基本的なやり方とは,ズレている.ただし,記述改善の説明や理由を共有することがはできていたので,このようなモブワークのやり方にも価値があると感じた.
◆次に挑戦すること(Try)
・作業の効率がよい作業の進め方を決めて,進行のスケジュールを定めて行う.
・振り返りの結果を,次回のモブワークに適用してモブワークのやり方をブラッシュアップする.
・モブワークの原則に従い,皆で同じ画面を見て作業する.
各チームの発表の様子を写真でご紹介します.
◆チーム1
話題沸騰ポットは水温が一定以上上昇するとエラー検出する仕様です.チーム1は,水温検知のサンプリング間隔の記述漏れに気づき,仕様書に書かれているグラフの修正もしました.
◆チーム2
元の文書は多様な情報がフラットに書かれていました.チーム2は,要求仕様書の章立てを細かくし,さらに,各章の文章に適切に表を挿入しました.これらのことで,要求仕様で伝えたいことが構造化され,文書品質の論理性が高まりました.
◆チーム3
元の文書は,一般的ではない用語が使われていました.チーム3は,用語を変更して,本質をわかりやすく伝える努力をしました.
このように,それぞれのチームは様々な議論を展開しました.そして,各チームに共通して以下の点を認識しました.
・1つ1つの文を査読する際,章全体を意識して行うことで,文書品質の論理性を高めることができる
・長文で記述すると,読み取るコストが増える.文書品質の可読性と理解容易性を高めることが必要.そのように丁寧に文書を書くと時間がかかるかもしれないが,開発全体で見ると,読み取る時間が減り誤りも起こりにくくなるので,にコスト削減に繋がる
・助詞や接続詞を適切に使う努力をすると,文書品質の論理性が高まる.
最後にバンザイすることで達成感が得られます(これもモブワークならでは).
今回の討議結果を基に,文書品質モデルのガイドライン作成を進める予定です.