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活動報告 : 第5回研究会(定期総会)を開催しました
投稿日時 2013-04-21 15:20:19 (14459 ヒット)

4月12日に名古屋大学にて第5回研究会(定期総会)を開催しました.

今回の研究会では,会員から発表をいただき,今年度の研究の進め方を討議しました.

はじめに,山本樹さんが「アルゴリズム的思考法による論理的文章力養成の一検討」と題して,高等教育機関において論理的文章作成力を養成するための取り組みを紹介しました.
論理力や文章力を高めるために,アルゴリズム思考力と論理的文章作成力に共通点があると考え,プログラムを作成するように,論理的文章を作成する教育の事例を示しました.C言語のプログラミングのテスト結果と論理的文章作成のテストの結果に相関があったと報告しました.

討議では,以下の意見や質問が出されました.
・プログラムが書ける学生は論理的に考えられているとあったが,社会人ではプログラムをうまく書ける人が開発文書も書けるとは限らないのではないか.
・繰り返しや分岐などの決められた方法で表すことよりも,深く考えたり,俯瞰して考えたり,汎化したりができるかどうかなどの能力が求められるのではないか.
・詳しく掘り下げることはそのうちできると考えるが,何にもとづいてどう考えたのかという根拠が表されていない場合が多いと感じる.理由や根拠を捉えてあらわすことができるかどうかが重要なのではないか.


次に,海上智昭さんが「開発文書の品質を考える」と題して,文書と品質の解釈,読み手が嫌う曖昧さ,読みやすさの追求について,紹介しました.
文書は他者に影響を与え,文書には読者が存在し,等しく伝えることが求められており,品質とは,似たようなものに対して優劣をつけることを意味していると解釈しました.
曖昧さは,複数に解釈されることを意味しており,文章や論文では嫌われているが,完全に防ぐことはできないといわれていることを紹介しました.
文書の品質を下げないために,読み手の特性を知って,決断に必要なコストを抑え,順序と方法を洗練し,構成を統一するなどの配慮が必要であることを示唆しました.


さらに,塩谷敦子さんと山本雅基さんが「文書開発プロセスの考察」と題して,ASDoQウィンターワークショップ2013での活動をきっかけにして考えた,文書作成活動のモデルについての考察を発表しました.

初めに,塩谷敦子さんが,ASDoQウィンターワークショップ2013では,目的や意図を明らかにする「文書計画」と,構造を考える「文書設計」,規範に沿って書く「文書実装」に分けられるのではないかという結果になったことを紹介しました.それらの工程をソフトウェア開発プロセスの「要件定義」や「アーキテクチャ設計」「詳細設計」「実装」などに当てはめて整理した試みを紹介しました.

続いて,山本雅基さんが,開発プロセスのカイゼンのために,文書上の問題を明らかにするために,文書品質を見える化することが必要であると述べ,さらに,品質を改善するために,文書開発プロセスの評価・テストに該当する,赤ペンによる指導が必要であると示唆しました.赤ペンでは,書き直すことよりも,指摘だけを行う方が効果的であると結論付けました.

討議では,以下の意見や質問が出されました.
・機能安全の認証などのために,第三者に説明するための文書が必要になる場面がある.そのような場面で必要な要件があるので,その要件を満たすために,文書群を定義する必要があると思われる.
・文書間のトレーサビリティが取れている必要があるので,文書間の関係を定義することも必要である.
・「文書群要件定義」や「文書群要件定義」などに対応する文書診断項目が定義できるのではないか.


発表の後,2013年度定期総会にて,各議事の承認をいただき,作業部会での2012年度活動報告と2013年度の活動予定,及び,新作業部会の紹介をしました.

ロードマップ部会から,山本佳和さんが,2012年度には,ホワイトペーパV0版を公開し,KBSE研究会での研究発表,ASDoQ大会参加者の意見を整理,開発文書品質の欠陥モード分析木を具体化したことを報告しました.
2013年度には,開発文書品質の具体的な課題分析のためにASDoQ会員へのアンケート調査,現場の開発文書品質問題領域への解決策を具体的に整理,開発文書品質解決ガイドを用いたワークショップを具体化する計画であることを紹介しました.

 用語定義部会から,塩谷敦子さんが,2012年度には,「システム開発文書品質」を構成する「ASDoQ標準用語」とシステム開発に関連する「関連用語」を定義したことを報告しました.
2013年度には,ASDoQ会員全員が参加して「用語集Wiki版」を作成して,用語の定義を議論し表現を改善して、継続した活発な活動となることを目指す計画を紹介しました.さらに,システム開発文書の品質に関連する既存技術を整理し、索引として活用できる,「文書技術一覧」を作成する計画であることを紹介しました.

 人材育成部会から,山本雅基さんが,2012年度には,ムーブレボ通報システムのソフトウェア要求仕様書のサンプルを複数作成し,ソフトウェア要求仕様書の関連文書を調査していることを報告しました.
2013年度には,事例が複数できた所で公開することや,「文書」ではなく「文」「パラグラフ」のサンプルを作成する計画であることを紹介しました.

 新設部会である教育教材部会から,藤田悠さんが,プログラミング技術を習得したレベルにある,企業の技術者や高等教育機関の学生を対象にして,技術文書を作成する能力を高めるために,実際の教材を作成して,その教材を用いた実践的な教育を,直近に実施する計画であることを紹介しました. 


最後に,研究会での研究方針について,参加者の皆さんから意見をいただいて,討議しました.

 開発文書の品質が悪い事例を集めることや,文書の悪い例を公開するときの問題,文書品質の分類,ASDoQとしての文書品質の構築などについて,意見が交わされました.
その結果,ASDoQでのこれまでの活動での成果,会員の経験,文献などの属性を集めて,抽象的な定義を具体化して,ASDoQとしての文書品質の体系を構築していく方針でまとまりました.

 


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