2013年2月8日~9日に,静岡県熱海市のホテルリゾーピア熱海にてASDoQウィンターワークショップ2013を開催しました.
今回のワークショップでは,一般の技術文書の作成技術からシステム開発文書品質の属性を考えることをねらい,参加者全員での,討議やグループワークに取り組みました.
第1日:2月8日 13:00-18:00
(Step1) システム開発文書品質につながる技術文書の文書技術を抽出する
持参した技術文書に関する書籍や自分の考えを基に,システム開発文書の品質につながる性質や文書作成の技術を,参加者各々がカードに書き出しました.単に一般的な技術文書の要素に留まらず,自身の経験から「システム開発文書がこうあってほしい」と期待する項目なども挙がってきました.
(Step2)書き出したシステム開発文書の性質や文書作成の技術を分類する
各自がカードに書きだした内容を照らし合わせ,同じような内容を含んでいるカードを集めました.
(Step3)集約した内容に見出しをつけ,その関係を考える
集約した項目間の関係を考えていると,システム開発文書作成の手順や,文書作成にあたって考慮すべきことなどが挙がってきました.そして,システム開発文書の作成過程の構造のようなものが見えてきました.
とくに,文法や分かりやすさのルールが,文書品質を決める上で,けっして独立しているのではなく,システム開発文書としての目的から,それぞれの理由や意図が存在するはずであること,それらの理由や意図から,文書品質は導かれるべきであるといった気づきも出てきました.
なぜ,開発者たちが不十分な開発文書しか書けないか,それは,それを書く理由や意図を理解しておらず,動機づけ自体ができていないからではないか,という実態を指摘する意見もありました.
そして,そうであるなら,文書作成の過程で,文書の目的やなぜ何を書く必要があるのか,といった点を明確にすることが,文書品質を導き出すことにつながるのではないかといった意見が導かれてきました.
さらに,文書作成の最初の段階で,文書の計画を十分にすべきであり,計画に基づいた文書作成のプロセスのようなものが見えてきました.
第2日:2月9日 9:00-15:00
(Step4)システム開発文書の作成プロセスの要素を説明する
前日活動での気づきの確認や参加者から出された意見を整理するところから,第2日が始まりました.
まず,システム開発文書作成の手順や文書作成にあたって考慮すべきことなどを参加者で共有し,文書作成のプロセスを構成する要素を各自で具体化し文章化してみました.
すると,システム開発文書の作成プロセスには,システム開発自体のプロセスやプロジェクト計画に共通する部分が多くあることに気づきました.
今回のワークショップでは,システム開発文書品質の属性を定義するところまでには至りませんでした.
しかし,品質を考える上で,システム開発文書作成において,文書の目的,各記述要素における理由,その両方から導き出されるべき記述の意図を明確にすることの重要性が見えてきました.
そして,システム開発文書の作成プロセスを整理し,ぞれぞれの記述段階における目的,理由,意図を明確にしていくことが,システム開発文書品質を定義することにつながるのではないか,といった感触を得ています.
今後,ワークショップで得られた結果をきっかけに,研究会として取り組むシステム開発文書品質の議論につなげていきたいと考えています.
----------------------------------------------------
今回の参加者には,これまでとは少し異なる新鮮なメンバーとして,学生や社会人の国語教育に携わる方々が加わりました.
システム開発文書といえども,一般の技術文書と共通して考えていく部分が多く,またそのために有効な価値ある書籍の紹介もありました.
参加者9名と少ないながらも,機能安全,アジャイル開発,テストプロセス,文書評価,教育など,それぞれの立場から,意見を述べ,討議できました.
夜は熱海温泉の湯につかり,美味しいお魚料理もふんだんにいただき,会議室を含むすべての部屋の窓から海を臨む,といった肌も舌も目も楽しみ癒されるワークショップでした.
2日目のランチは海鮮丼!
----------------------------------------------------
参加者が持参した文献のリストやワークショップの成果物は
こちらから参照できます(会員限定).