2023年10月27日(金)にASDoQ大会2023を開催しました。
今年のASDoQ大会は、昨年に引き続きオンラインとリアル会場のハイプリッドにて開催しました。また、午前中にチュートリアル、午後に講演会とし、4年ぶりに丸1日開催できました。
午前中の第1部のチュートリアルでは、酒匂 寛氏(デザイナーズデン)から「生成AIとソフトウェア開発への応用」のテーマでお話しいただきました。
酒匂氏が想定するソフトウェア開発ライフサイクルにおいて、どのステップでも生成AIによる支援が可能であることを、具体的な適用事例を踏まえてわかりやすく紹介いただけました。
生成AIは、多くの企業にとって高い関心があるものの、まだまだ上手く活用できていない状況です。本チュートリアルの内容は、活用に向けてよいヒントになったのではないかと思います。
(チュートリアル:酒匂 寛氏)
午後からの第2部の講演会に先立ち、プログラム委員長の栗田 太郎氏からASDoQ大会2023の見所について紹介がありました。
(オープニング:栗田 太郎氏)
最初の講演は、二宮 芳樹氏(名古屋大学)から「自動運転プラットフォーム Autowareが目指すもの」のテーマでお話しいただきました。
自動運転システム開発では技術課題が山積する中、Autoware搭載車両は無事自動運転レベル4認定を獲得されました。その経験を踏まえて、自動運転レベル4の業界状況、自動運転プラットフォームであるAutowareが提供する技術、Autowareとシステム開発文書品質について、詳しく紹介いただきました。
参加者の皆様には、技術的な学びを多く獲得いただけたのではないかと思います。
(講演1:二宮 芳樹氏)
続いての講演では、永田 敦氏(サイボウズ)から「サイボウズにおけるアジャイル開発とドキュメント」のテーマでお話しいただきました。
アジャイルとウォータフォールの本質的な違いについて、とてもわかりやすく解説いただきました。近年の複雑化するソフトは、暗黙知と形式知の変換を盛んに行いながら開発されていますが、ドキュメントの量が減る傾向にあります。これに対し、アジャイル開発にてドキュメントをどうアプローチしているかのサイボウズ社の事例や、アジャイル開発を上手く実施するコツを多数紹介いただきました。
アジャイル開発に取り組まれている参加者の皆様にとっては、よいヒントをたくさん得る機会になったのではないでしょうか。
(講演2:永田 敦氏)
続いて、「社会が必要とするIT技術者像:コードよりも一歩先へ」のテーマでパネルディスカッションを開催しました。
パネリストは本日ご講演いただいた3名に、井上 克郎氏(南山大学)、福森 英夫氏(愛三工業)、藤田 悠氏(ASDoQ運営委員/長野高専)に加わっていただいた全6名、山本 雅基氏(ASDoQ運営委員/名古屋大学)がモデレーターとして進行を担当しました。
最初に「進化している人材育成の実態」として、藤田氏、井上氏、福森氏の順にポジショントークを実施しました。続いて「IT先進企業が求めるソフトウェア技術者の能力」として、二宮氏、永田氏、酒匂氏の順にポジショントークを実施しました。その後、ポジショントークに対する質疑や、システム開発文書品質への期待について議論を行いました。
その結果、ソフトウェア技術者に求められる能力として、プログラミング能力だけでなく、社会人基礎力、論理思考力、メンタリティ、抽象化技術、それらを育成するための管理技術など広範囲にわたるという議論になりました。最後にモデレーターの山本氏により、市場で揉まれ多様な実務経験を積みながら、これらの多様な能力を身に付け、IT技術者として成長し続けていきましょう、と締めくくられました。
(パネルディスカッション:左から、酒匂氏、永田氏、二宮氏、福森氏、井上氏、藤田氏、山本氏)
オンラインでご参加いただいた方は第2部にて終了となりましたが、リアル会場では、第3部の「ポスターセッション」を開催しました。全7件のポスターを発表していただきました。
ポスターを前に、熱心な質問や活発な議論をしていただくことができました。また、参加者間での意見交換や議論の様子も垣間見ることができました。
ポスターセッションの恒例であった、参加者と講師の方々からの投票による優秀賞の選出も復活させました。今回の結果では、以下のとおり表彰させていただきました。
受賞された皆様おめでとうございます!!
- 最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞]
[P-4]「生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」
山本雅基(名古屋大学)、井上祐寛(株式会社クレスコ)、安藤輝政、月森悠太(株式会社ヴィッツ)
- 審査員特別賞[二宮賞]
[P-1]「ChatGPTを用いたAndroidアプリ作成の試み - ASDoQサマーワークショップ2023にて -」
藤田 悠(長野工業高等専門学校)、内野将輝(ベリサーブ)、後藤 祐紀(エプソンアヴァシス)
- 審査員特別賞[永田賞]
[P-2]「nofytools: フィーチャモデルとUSDMを扱うツールキット」
中西恒夫(福岡大学)、山田智司(アドヴィックス)、大串和弘(アドヴィックス)、古一克也(アドヴィックス)
(最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞] 左から受賞者の井上さん、審査員の酒匂氏)
(審査員特別賞[二宮賞] 左から受賞者の藤田さん、審査員の二宮氏、受賞者の内野さん)
(審査員特別賞[永田賞] 左から受賞者の山田さんと中西さん、審査員の永田氏)
次回も、多くのポスター発表のご応募をお待ちしております。
最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。
来年の大会は,2024年11月1日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。