トピックス

  
投稿日時 2024-04-06 15:21:54 (102 ヒット)

 2024年3月22日(金)に第33回研究会をオンラインとリアル会場(ソニーシティー大崎)のハイブリッドで開催しました。

 1. 講演~ASDoQ大会2023ポスター発表から~
 「生成AIがもたらすシステム構築の新たな可能性」 井上 祐寛 氏(株式会社クレスコ)
 ASDoQ大会2023で最優秀賞を受賞したポスター発表(「生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」)の活動について紹介していただきました。
ChatGPTに要件定義ガイドの情報を与え、要求仕様書の漏れを抽出できるかという実験を行った結果、AIが要件漏れを指摘できることが示されましたが、指摘の精度や量についてはさらなる検証が必要とのことです。
本講演ではこの活動を進める際、生成AIが人に変わって成果物を作成できるのでは?という新たな考えに至り、電動キックボードのライドシェアサービスを題材に生成AIにシステム構築をさせた実験についてお話しいただきました。サービスの概要、役割を設定し、作成を指示するプロンプトを与えることで、機能一覧、画面一覧、テーブル設計、ER図など、一連の成果物を作成することが可能であることを紹介していただきました。生成AIが作成した成果物への評価やより精度の高い成果物を作成する方法の検討が必要とのことでしたが、生成AIが生産性向上に寄与する可能性を示されました。
発表資料はこちらから。
 
2.パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、講演者の井上さんとASDoQの粕渕さんとで、開発プロセスの変化、人が果たすべき役割、良い成果物を得るための指示文書などをテーマとして意見交換が行われました。もう一人のパネリストとして、ChatGPTに意見を聞く場面もありました。
また、事前に参加者にお願いしたアンケートの質問に対して、井上さんにお答えいただく場や、その場での参加者からもご意見やご質問も出て、みなさんの興味の高さが伺えました。今後の生成AI活用のヒントになったのではないでしょうか。
 
 
 3.システム開発文書品質モデル改訂活動の報告
次にASDoQの塩谷さんから、システム開発文書品質モデル Ver.2.0のリリース計画、Ver.1.1からの変更点について報告していただきました。
まもなくリリースとなりますので、モデルの活用方法やさらなる改訂に向けて皆様からのご意見をお待ちしております。
 
4.今後のASDoQイベント
以下を予定しております。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。
・6月5日(水)定期総会&第34回研究会 @名古屋大学&オンライン(ハイブリッド開催)
9月6日(金)ー 7日(土)サマーワークショップ @KKR京都くに荘
111(金) ASDoQ大会2024 @名古屋大学 野依記念学術交流館
 

 


投稿日時 2023-11-07 09:49:36 (349 ヒット)

ASDoQ大会2023のポスター発表で「[P-4]生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」が、最優秀賞と審査員特別賞(酒匂賞)をダブル受賞しました。このことが、発表者の一人の井上さんが所属する㈱クレスコのニュースに掲載されました。


投稿日時 2023-11-05 07:29:55 (591 ヒット)

2023年10月27日(金)にASDoQ大会2023を開催しました。

今年のASDoQ大会は、昨年に引き続きオンラインとリアル会場のハイプリッドにて開催しました。また、午前中にチュートリアル、午後に講演会とし、4年ぶりに丸1日開催できました。
 

午前中の第1部のチュートリアルでは、酒匂 寛氏(デザイナーズデン)から「生成AIとソフトウェア開発への応用」のテーマでお話しいただきました。
酒匂氏が想定するソフトウェア開発ライフサイクルにおいて、どのステップでも生成AIによる支援が可能であることを、具体的な適用事例を踏まえてわかりやすく紹介いただけました。
生成AIは、多くの企業にとって高い関心があるものの、まだまだ上手く活用できていない状況です。本チュートリアルの内容は、活用に向けてよいヒントになったのではないかと思います。
(チュートリアル:酒匂 寛氏)
 

午後からの第2部の講演会に先立ち、プログラム委員長の栗田 太郎氏からASDoQ大会2023の見所について紹介がありました。
(オープニング:栗田 太郎氏)
 

最初の講演は、二宮 芳樹氏(名古屋大学)から「自動運転プラットフォーム Autowareが目指すもの」のテーマでお話しいただきました。
自動運転システム開発では技術課題が山積する中、Autoware搭載車両は無事自動運転レベル4認定を獲得されました。その経験を踏まえて、自動運転レベル4の業界状況、自動運転プラットフォームであるAutowareが提供する技術、Autowareとシステム開発文書品質について、詳しく紹介いただきました。
参加者の皆様には、技術的な学びを多く獲得いただけたのではないかと思います。
(講演1:二宮 芳樹氏)
  

続いての講演では、永田 敦氏(サイボウズ)から「サイボウズにおけるアジャイル開発とドキュメント」のテーマでお話しいただきました。
アジャイルとウォータフォールの本質的な違いについて、とてもわかりやすく解説いただきました。近年の複雑化するソフトは、暗黙知と形式知の変換を盛んに行いながら開発されていますが、ドキュメントの量が減る傾向にあります。これに対し、アジャイル開発にてドキュメントをどうアプローチしているかのサイボウズ社の事例や、アジャイル開発を上手く実施するコツを多数紹介いただきました。 
アジャイル開発に取り組まれている参加者の皆様にとっては、よいヒントをたくさん得る機会になったのではないでしょうか。
(講演2:永田 敦氏)
 

続いて、「社会が必要とするIT技術者像:コードよりも一歩先へ」のテーマでパネルディスカッションを開催しました。
パネリストは本日ご講演いただいた3名に、井上 克郎氏(南山大学)、福森 英夫氏(愛三工業)、藤田 悠氏(ASDoQ運営委員/長野高専)に加わっていただいた全6名、山本 雅基氏(ASDoQ運営委員/名古屋大学)がモデレーターとして進行を担当しました。
最初に「進化している人材育成の実態」として、藤田氏、井上氏、福森氏の順にポジショントークを実施しました。続いて「IT先進企業が求めるソフトウェア技術者の能力」として、二宮氏、永田氏、酒匂氏の順にポジショントークを実施しました。その後、ポジショントークに対する質疑や、システム開発文書品質への期待について議論を行いました。
その結果、ソフトウェア技術者に求められる能力として、プログラミング能力だけでなく、社会人基礎力、論理思考力、メンタリティ、抽象化技術、それらを育成するための管理技術など広範囲にわたるという議論になりました。最後にモデレーターの山本氏により、市場で揉まれ多様な実務経験を積みながら、これらの多様な能力を身に付け、IT技術者として成長し続けていきましょう、と締めくくられました。 
(パネルディスカッション:左から、酒匂氏、永田氏、二宮氏、福森氏、井上氏、藤田氏、山本氏)
  

オンラインでご参加いただいた方は第2部にて終了となりましたが、リアル会場では、第3部の「ポスターセッション」を開催しました。全7件のポスターを発表していただきました。
ポスターを前に、熱心な質問や活発な議論をしていただくことができました。また、参加者間での意見交換や議論の様子も垣間見ることができました。
 
ポスターセッションの恒例であった、参加者と講師の方々からの投票による優秀賞の選出も復活させました。今回の結果では、以下のとおり表彰させていただきました。
受賞された皆様おめでとうございます!!
 
  • 最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞]
    [P-4]「生成AIを活用した、要件定義漏れの予防と品質の向上」
    山本雅基(名古屋大学)、井上祐寛(株式会社クレスコ)、安藤輝政、月森悠太(株式会社ヴィッツ)
     
  • 審査員特別賞[二宮賞]
    [P-1]「ChatGPTを用いたAndroidアプリ作成の試み - ASDoQサマーワークショップ2023にて -」
    藤田 悠(長野工業高等専門学校)、内野将輝(ベリサーブ)、後藤 祐紀(エプソンアヴァシス) 
     
  • 審査員特別賞[永田賞]
    [P-2]「nofytools: フィーチャモデルとUSDMを扱うツールキット」
    中西恒夫(福岡大学)、山田智司(アドヴィックス)、大串和弘(アドヴィックス)、古一克也(アドヴィックス)

(最優秀賞&審査員特別賞[酒匂賞] 左から受賞者の井上さん、審査員の酒匂氏)

(審査員特別賞[二宮賞] 左から受賞者の藤田さん、審査員の二宮氏、受賞者の内野さん)

(審査員特別賞[永田賞] 左から受賞者の山田さんと中西さん、審査員の永田氏)

 次回も、多くのポスター発表のご応募をお待ちしております。

 

 最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
 
 

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。
 
来年の大会は,2024年11月1日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。
 

 


投稿日時 2023-10-02 04:33:42 (434 ヒット)

2023年9月1-2日に京都市にて,ASDoQサマーワークショップ2023を開催しました.

 
ASDoQでは毎年夏に合宿形式のワークショップを開催していましたが,コロナ禍によりしばらく実施を見送っていたため今回4年ぶりの開催となりました.東に鴨川を西に京都御苑を望む絶好のロケーションにて,各自がChatGPTとじっくり向き合い多くの気付きを得ることができたようです.
 
今年のサマーワークショップでは,開発プロセスやシステム開発文書にChatGPTを取り入れるアイデアを,班ごとにChatGPTで実験しその効果や課題を一つずつ確認していきました.
 
 
★★1班★★
ChatGPTを利用することで,要求仕様書から基本設計書を作成する手助けができないかについて実験しました.
まず,ChatGPTに話題沸騰ポット要求仕様書を読み込ませてテキスト(マークダウン)を作成するよう指示します,その後,UML描画ツールmermaidを利用して,マークダウンからUML/SysMLの各図(ブロック図,ステートマシン図,シーケンス図)を描画しました.
 
■やったこと
・要求仕様書からマークダウンを作成できた.結果としてUML/SysML図を作成できた.
 
■わかったこと
・現時点では,数十ページの仕様書を与えても最初の一部しか理解してくれない
 →2日目は小さな仕様を作成し進めた
・ブロック図:継承関係がまずい
・シーケンス図:1回タイマーがアイドル状態に戻ってくれない
・UML状態遷移図:状態を理解できていない
 
■次にやること
・ページ数の多い仕様書はあらかじめ分割し,それぞれを要約させてからChatGPTに与える
・近々利用できるChatGPTのファインチューニング機能を利用してページ数の多い仕様書を全部理解してくれるか実験する
 現時点ではLlamaIndexを使って仕様書をインデックス化しクエリーと組合わせることでファインチューニングしているかのようなプロンプトを得られる.(4班のワークより)
 
 
★★2班★★
ChatGPTを利用することで,じゃんけんゲームの自動プログラミングが可能かについて実験しました.
 
■やったこと
・初日は,ChatGPTに概要仕様文を与えAndroid Studioのソースコードを作成するよう指示し,ソースコードを得ることができました.コードはほぼ修正不要で動作確認できました.
・二日目は,概要仕様文から要求仕様書と基本設計書を作成し,これらからソースコードを作成する実験を行いました.
 
■わかったこと(得られた好ましい結果)
・ChatGPTは直接的なソースコードの作成の要求に応えることができる.
 簡単なプロトタイプの作成に活用できるのではないかと思われる.
・ChatGPTと対話的なやり取りで,プログラムの修正や改善ができる.
 問題点や改善したい点などを具体的に伝えて,改善する方法がとれるのではないか.
・UMLの図もテキスト形式で表現可能であれば,得ることができる.
 要求から設計させた結果として,シーケンス図やクラス図が得られた.
 
■わかったこと(問題点)
・所望の開発文書を書いてほしいとしたとき,入力を正確に伝える必要がある.
 項目立てや各項目で定義してほしい内容を伝えると,ほぼそのまま文書化されることがある.
 その場合はChatGPTの役割は清書してくれるところになるだろうか.
・仕様書を入力として,次の工程の作業をしてもらうとき,漏れがあることがある.
 入力の仕様書に定義したことが次の工程の設計に反映されていないことがある.
 指定した事柄が正しく反映されているか,内容が正しいか,確認する必要がある.
 
■次にやること(さらなる利用における課題)
・具体的な事柄について対話的な方法をとることで積み上げたり,改善したりする点がChatGPTは得意と思われる.
 設計書を作成する際も,まとまった入力で一度でよい結果を得るよりも,対話的に進める方が良い可能性がある.
・設計書を作成させるとき,こちらが想定している仕様を正確に伝える必要がある.
 ChatGPTをその相手としたときに,どのような伝え方をするのが適切かを考える必要ある.
・まとまった入力に対する出力については特に,内容を確認する必要がある.
 トレーサビリティが取れていれば良いのだが,それを担保させる方法はあるだろうか.
 
 
★★3班★★
ChatGPTを利用することで,テスターの支援ができるかについて実験しました.
具体的には,開発対象をWebサービスのログイン機能として,開発から追加機能のメモだけが入手できたというシチュエーションで変更要求仕様書と追加機能の差分テスト仕様書を作成できるかを試しました.
まず,IDとパスワードだけのシンプルなログイン機能の要求仕様書を自動作成し,次に二要素認証機能(二段階で認証してログインさせる機能)の簡単な要求メモを与えて変更要求仕様書を自動作成しました.さらに変更要求仕様書の変更箇所を明示することで,差分テスト仕様書の作成を試みました.
 
■やったこと
・要求仕様書フォーマットしてIEEE Std 830に倣うよう指示を与えるだけで,機能のメモから要求仕様書が作成できた.
・要求仕様書と追加機能のメモから変更要求仕様書を作成できた.
 空白の項目を一般的な例で埋めるよう指示するとそれらしい文章を追記してくれた.
・テスト観点と仕様書例を与えることで,欲しいテストケースが得られた.
 
■わかったこと
・要求仕様書作成指示の際にIEEE Std 830やESPRなどできるだけ詳細な条件を与えた方が良い.
・変更要求仕様書に以前からの機能か追加機能かを明確にするよう指示したが,正しく明確化できなかった.
・最終チェックは人間が行う必要がある.人間にはチェックできる能力が必要
 
■次にやること
・ASDoQのシステム開発文書品質特性を与えることで,要件が品質特性のどれに該当するかを自動的に付与できるかを試してみたい.
 
 
★★4班★★
ChatGPTを利用することで,要求仕様書やテスト仕様書の漏れを指摘できるかについて実験しました.
○×ゲームやムーブレボ要求仕様書を題材にして実験を進めました.
 
■やったこと
・質の高い結果を得るため,スパイラルアップ(何度かやりとり)をすることで,これによりテスト仕様の漏れに気がついた.
・それでも完璧な結果は得られない,最終的には人間が修正してやる必要がある
・LlamaIndexにより現時点でのChatGPTの容量制限を超えるローカル文書をインデックス化しプロンプトから扱えた.
 (依頼文をクエリに置換え順次プロンプト呼び出す処理を自動で行ってくれる)
 
■わかったこと
・ロールを与えることが重要である.
・ロールのバリエーションを複数用意しておくと素早く色々な観点を得られて効率が良い.
・要求漏れを指摘させることは難しかった.
・追加のアイデアをもらえるような依頼方法が有効であった.
・自分のロールじゃないロール(開発者ならテスター)からの指摘が有効であった.
 一人プロジェクトなどでは良い
・ステップ・バイ・ステップのプロンプトが有効であることが分っている.
 要求定義や設計やテストなどのアクティビティをさらに細分化したステップに分解すれば,
 利用価値が高まるはず.目次を検討する価値はありそう.
 
■次にやること
・ChatGPTに分かりやすい記述方法を試す.
 
 
【1班・2班のワークの様子】
 
 
 
【3班・4班のワークの様子】
 
 
2日間じっくり取り組むことで開発プロセスやシステム開発文書にChatGPTを取り入れるコツや手法など多くのものを得ることができました.今回のサマーワークショップの結果は、ASDoQ大会2023のポスター発表でも報告する予定です.文字だけでは十分に伝わらない部分もありますので,ASDoQ大会のポスター発表で,ぜひ活動した班メンバーと直接意見交換してみてください.
 

 


投稿日時 2023-06-17 08:42:53 (826 ヒット)

 2023年度定期総会および第32回研究会を202366() 16:00からオンライン(Zoom)で開催しました。

1.2023年度定期総会

はじめに、本総会の出席者として、出席者34名、委任状提出54名により本総会の成立条件(会員数の1/2)を満たしていることを確認しました。

続いて、事務局から2022年度の事業報告と決算報告、2023年度の事業計画と収支計画、役員改選について報告しました。各議案は委任状を含む参加者の皆さんにより承認されました。

会員は、総会資料を閲覧できます。[会員メニュー - 活動の記録 - 第32回研究会(定期総会)] をご覧ください。

2.第32回研究会

研究会では、粕渕清孝さん(SCREENアドバンストシステムソリューションズ/ASDoQ運営委員)と山本雅基さん(名古屋大学/ASDoQ幹事)から「ChatGPTを用いた文書品質の向上は可能か」というテーマで講演が行われました。

講演の前半は粕渕さんから、ChatGPTの技術を解説していただきました。発表資料はこちらから。

従来の自然言語処理とは異なるMulti-head Attentionによって構文解析がされていること、OpenAIの独自技術であるPPProximal Policy Optimization)を使用して強化学習を行っていることなどをわかりやすく解説していただきました。

今後の見通しとしては、さらなるマルチモーダル化や推論が可能になること、人間を超える意味理解の実現の可能性など、さらなる進化についてお話しいただきました。

後半は山本さんから、システム開発へのChatGPTの活用に関してお話していただきました。発表資料はこちらから。

ChatGPTを「コパイロット」として使い、要求定義工程でブレスト相手やレビュー相手としてChatGPTを活用し要求仕様書を共同で作成していく方法を、Windowsで動作するストップウォッチアプリ開発を例に、ChatGPTとやりとりを踏まえて紹介されました。

その経験を通じて、ChatGPTの活用を前提とした開発プロセスの構築の必要性を提案されました。その上で、ASDoQ開発文書品質の測定、品質準拠のライティングや校正への活用検討、さらに技術者に要求されるスキルの再定義の必要性なども提案されました。

文書品質に取り組むASDoQは、文章を生成する生成系AIと無関係ではいられません。皆さんとアイディアや事例を共有し、生成系AIとの付き合い方に取り組んでいきましょう。

 

3.オンライン交流会

研究会での議論を踏まえて、生成系AIについて参加者の皆様と議論を交わしました。さまざまな意見や考えが語られ最後まで大変盛り上がりました。ご参加いただきありがとうございました。

 

4.今後のASDoQイベント

以下を予定しております。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。

  ・91日(金)、2日(土) サマーワークショップ @KKR京都くに荘
  ・1027(金) ASDoQ大会2023 @名古屋大学 野依記念学術交流館


投稿日時 2023-02-19 17:05:40 (900 ヒット)

  2023年2月14日(火)15:00-17:00にZoom)にて第31回研究会を開催しました.34名が参加しました.

 今回の研究会は,「技術者のための日本語文法入門 ─ 文章術本を深読みし、開発文書作成に役立てる」 と題して,編集プロダクション風工舎の川月現大さんに,ご講演いただきました.川月さんは,大手ソフトウェア会社でシステム開発のご経験があり,その後に編集会社を立ち上げられました.元開発者そして現編集者の立場で,ASDoQに参加されています.

 ご講演は,文章術本を使いこなすための基礎知識および技術文書作成で役立ちそうな指針についての解説でした.私たちの多くが読んだことがある『理科系の作文技術』など,複数の文書術の書籍を取り上げて,その内容に一歩踏み込みながらお話しくださいました.

 

 私は,日本語の奥行きの深さが改めて分かりました.川月さんがおっしゃるように,日本語母語話者のための「日本語文法書」や,私たち開発者などの実務に役立つ「日本語辞典」は,まだ完成されていません.注意深く考えながら日本語の勉強を続けていきたいと,決意を新たにしました.何時までも勉強は続きます. 

川月さんのご厚意により,当日の資料の一部(「は」と「が」の使い方)を,こちらからダウンロードできます.


投稿日時 2022-12-05 08:36:28 (684 ヒット)

2022年11月11日(金)にASDoQ大会大会2022を開催しました。
今年のASDoQ大会はオンラインとリアルとのハイプリッドにて開催しました。リアル会場としては、3年ぶりに名古屋大学 野依記念学術交流館に戻ってまいりました。


第1部のチュートリアルでは、中村 哲三氏(エレクトロスイス ジャパン)から「国際共通語としての英文ライティングを考える」のテーマでお話しいただきました。
世界中の人たちとコミュケーションをとるための国際共通語として英語が使われています。英語ネイティブではない国の人たちとコミュニケーションをとるためには、わかりやすく伝わる英語を使う英語力を身につける必要があります。そのような基礎的な英語力をつけるうえでの障壁をご紹介いただきました。具体的には、国際的には通用しない和製英語、一つひとつの単語とは異なる意味になるイディオム表現、概念の違いからくるギャップ、差別表現などを解説していただきました。さらに、人間の社会活動に関連する言語の使用には、トピック志向とタスク志向があります。前者は状態描写として、後者は操作説明として、視点/コンテキストによって最適な表現を選ぶべきであり、両者をまちがえると分かりにくい文になるとのことでした。
(チュートリアル:中村 哲三氏)

 

第2部の講演会に先立ち、プログラム委員長の栗田 太郎氏からASDoQ大会2022の見どころについて紹介がありました。
(オープニング:栗田 太郎氏)

 

最初の講演は、武田 浩一氏(名古屋大学)から「説明可能な人工知能と自然言語処理」のテーマでお話しいただきました。
人工知能が社会的に受け入れられるためには、信頼できる人工知能を実現する必要があり、その一つのテーマが「説明可能な人工知能(AI)」とのことです。最近のAIでは、ニューラルネットワークを用いるので、推論過程がブラックボックスになります。そこで、推論過程を人間に分かるように提示する説明可能AIの研究を、米国国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムなどで進められてきたとのことです。説明可能AIでは、文生成技術により説明自体を文章で生成する技術も研究開発されています。その技術を使用して、運転シーンのデータから運転のリスクを査定し文章で表現する研究事例が紹介されました。さらに、文生成技術を利用したプログラム開発支援として、プログラム生成やプログラムへのコメント付与の研究開発が行われているとのことでした。
(講演1:武田 浩一氏)

 

続いての講演では、井佐原 均氏(追手門学院大学)から「自然言語処理の課題と品質評価の可能性」のテーマでお話しいただきました。
自然言語処理システムによって、コンピュータが人間のタスクをサポートし、人間は人間にしかできないことに集中する世界を示していただきました。最近では、ニューラル機械翻訳により、機械翻訳の技術が飛躍的に向上しています。訳の抜けや誤り、低頻度の語句で失敗が多いなどの機械翻訳の問題についても、絶えず見直され性能が向上され続けているとのことです。さらに、自然言語処理の課題として、ブラックボックスの解消のために理由を説明できる人工知能や、学習データの保証があるとのことです。そして、システム開発文書と自然言語処理の関係について触れて頂き、自動ソースコード生成や開発文書の自動評価の可能性を示していただきました。
(講演2:井佐原 均氏)

 

第2部の最後では、ASDoQの運営から、今期の活動報告と今後の活動予定をお知らせしました。 
(クロージング:塩谷 敦子氏)

 

オンラインでご参加いただいた方は第2部にて終了となりましたが、リアル会場では、第3部の「講演者を囲む対話会」を開催しました。講演者と直接会話できる機会を利用して、参加者の皆さんが熱心に質問されていました。また、チュートリアルと講演の内容から、話題がさらに広がり、有意義な時間となりました。
  (対話会での講演者と参加者)

 

最後に参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
 

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。

来年の大会は,2023年10月27日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。


投稿日時 2022-08-09 14:04:13 (820 ヒット)

 

2022年8月8日(月)15:00-18:00に、第30回研究会をオンライン(Zoom)にて開催しました。

コロナ禍前は毎年、サマーワークショップという合宿を開催していた時期です。
今回の研究会は、参加者10名という少人数でしたが、サマーワークショップのような雰囲気でワークを実施することができました。終了時間を超過し、非常に良い議論で盛り上がることができました。
 

1. [ワーク] 品質特性を具体化しよう
 
ASDoQでは現在、「システム開発文書品質モデル」を活用しやすくするため、ガイドブックなど解説文書の作成活動に注力しています。今回のワークでは、今まであまり深堀してこなかった品質特性「完全性」「論理性」の「測定項目」に対して、以下の4つの観点で具体化を検討しました。
  ①適合するためには、どこに何をorどう書くか?
  ②適合する記述例
  ③検証する方法
  ④その他、具体化する要素やヒント
    違反する記述例や、どう書いてはいけないか、品質特性や副特性や他の測定項目との関連性など
 
最初にASDoQ幹事の山本さんから文書品質モデルの5分解説、ASDoQ代表幹事の塩谷さんからワークの狙いと進め方の説明がされました。塩谷さんの作成した例に倣い、各自で具体化を検討しました。その後、3グループに分かれて、約1時間のグループ検討を実施しました。
 
各グループのまとめ役から、成果を発表していただきました。その際の主な気づきを以下に紹介します。
 
〇完全性-合目的、完全性-正確(山本)
  ・合目的の例がわかりやすい。皆で検討すれば、さまざまなパターンの例を作成できそう。
  ・正確とはどういう状態かが不明確。
  ・文書品質に直接関係しない測定項目が含まれている。
 
〇完全性-妥当、論理性-無矛盾(栗田)
  ・妥当の定義が、V&VのValidationの定義と異なる。
  ・妥当と合目的の違いが不明確。
  ・無矛盾と正確の切り分けが不明確。
  ・トップダウンアプローチで無矛盾に対応可能か不明。例えば、トロッコ問題のように要求自体に矛盾を抱えているものに対して、どう対処したらよいか不明。
  ・全ての情報を文書化できるわけではないし、すべきではない。この場合、文書化されていない情報との矛盾について、どうやって検出すべきか不明。
 
〇論理性-一貫、論理性-構造(塩谷)
  ・複数の測定項目に共通する具体的な記述法あり。
  ・論理性・構造は、完全性・合目的にも似ている評価項目あり。
  ・記述間および文書間の整合性は、多対多の関係で確認が必要。
  ・一貫していることと矛盾が無いことの違い。項目間の繋がり(一貫性)が無くても、矛盾が無いかは判断できる。
 
全体的に品質特性や品質副特性の定義が不明確であり、分かりづらさの課題が明らかになりました。また、文書品質モデルの改善案を多数挙げていただくことができました。今後の文書品質モデルの改善の参考とさせていただきます。
 

2. [討議] 文書品質モデル活用のコツを語ろう
 
最初に、進行担当の山本さんから本討議の狙いを説明していただきました。文書品質モデルをきっかけに、多くの方にとって、ライティングが上手くなり、開発文書の指導回数が減るといった改善につながると嬉しい。具体的にどういう活用方法が望ましいかを知りたい、とのことでした。
これを受け、参加者から具体的な活用事例として、以下の2件を紹介いただきました。
 
  (a) 仕様書作成やレビュー時の観点リストの強化に使用
  (b) 文書研修の前後で、文書作成能力の成長分析に使用
 
品質特性や品質副特性の分類に関連して、(a)のケースはあまり依存せず活用可能だが、(b)のケースは分類の仕方が重要となる、といった違いが見られました。
業務改善に向け文書品質モデルを上手く活用していただくため、多くの皆様からの活用事例の共有をお待ちしております。
 

3.情報交換会
研究会での議論を踏まえて、文書品質モデルの改善に向けた議論を継続し、最後まで大変盛り上がりました。会員の皆様のご意見をしっかり取り入れ、活用可能な文書品質モデルに改善していければと思います。引き続き、皆様のご協力をお願いいたします。
 

次回のASDoQイベントはいよいよ、11月11日(金)のASDoQ大会2022となります。名古屋大学 東山キャンパス内にある野依記念学術交流館とオンラインでのハイブリッド開催を予定しております。皆様のご参加をお待ちしております。
 


投稿日時 2022-06-15 17:52:34 (771 ヒット)

2022年度定期総会および第29回研究会を2022年6月7日(火) 16:00よりオンライン(Zoom)で開催しました。

1.2022年度定期総会

はじめに、本日の総会出席者の確認を行い、出席者42名、委任状提出50名により本総会の成立条件(会員数の1/2)を満たしていることを確認しました。 続いて、事務局より2021年度の事業報告と決算報告、2022年度の事業計画と収支報告について報告があり、この議案は委任状を含む参加者の皆さんの賛成多数により承認されました。

次にASDoQ運営より開発文書の改善すべき記述、例文集の作成、文書品質モデルの使いにくい点を修正する活動についての紹介がありました。今後の活動に向けて多くの例文や改善例を集めたいと考えておりますので、みなさまからの投稿をお待ちしております。

総会資料はこちらから

2.第29回研究会

第29回研究会では、石垣達也さん(産総研)から「自然言語処理による文書評価」のテーマでご講演いただきました。

自然言語処理入門では、対話Botを例に言語解析と言語生成について解説していただきました。言語解析では文章をどのように認識し意味を理解していくのか、言語生成ではこれまで主流だったルールベース、テンプレートによる手法から、より柔軟に言語生成が可能な確率ベースの手法にフォーカスが向いていることを解説していただきました。

次に評価の自動化手法では、生成されたテキストの多様な表現は正解が一意に定まらない点や必要な評価基準が異なる点についてどのように解決しているかを解説していただきました。自動評価は言い換えに弱いという問題点があり、現状は人手評価との組み合わせによる評価が必要とのことでした。

システム開発文書の品質評価を自動化することの可能性についてもお話いただきました。ここではASDoQ品質特性について、自然言語処理技術のどの技術が応用できるのか先生の考えを紹介していただきました。課題は多くあると思いますが、開発文書の自動生成、自動評価については今後研究が進み実用されていくことを期待したいですね。

最後に、最新の言語生成研究として、AIでのレーシングゲーム実況の生成について紹介していただきました。 リアルタイムで変化するレースの状況に合わせた実況は、発話の内容だけでなく発話のタイミングも考慮する必要があることから、人間が行う実況にどこまで近づくことができるのか大変興味のある事例でした。

3.オンライン交流会

オンライン交流会には石垣先生にもご参加いただき、参加者の皆様と自然言語処理技術や文書品質について意見交換が行われました。たくさんの方に参加いただき最後まで大変盛り上がりました。

 

次回のASDoQイベントは、8月8日(月)に第30回研究会をオンラインで開催予定です。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。

また、今年度のASDoQ大会2022は2022年11月11日(金)、名古屋大学 東山キャンパス内にある野依記念学術交流館での開催を予定しております。ご期待ください。


投稿日時 2022-03-19 12:34:50 (905 ヒット)

 202239日(水)15:00-18:00に、第28回研究会をオンライン(Zoom)にて開催しました。
今回の研究会では、アンリツ株式会社の南部妙水さんのご講演「ゴールから逆算したプロセスで開発文書全体をMECEにする」と、ASDoQからシステム文書品質モデルを使ったワークショップを行いました。 

1.講演~ASDoQ大会2021話題提供から~
  「ゴールから逆算したプロセスで開発文書全体をMECEにする」南部 妙水(アンリツ株式会社)

南部さんの講演ではソフトウェアの派生開発を行う中で、文書をMECEな状態に近づけるために実践されている方法について説明していただきました。
開発文書に変更を取り込む際には必要な情報が何かを見つけることが重要で、どのような仕様・設計にするか、どの文書に何を書くか、それをどう書くかということをひとつずつ整理していくという考え方を基に、この必要な情報をどうやって洗い出すかという方法について説明していただきました。
別の作業に紛れ込ませずしっかり時間を取ってそれぞれの作業に集中し、順番に進めていくことが効率と品質を確保する上でも大事だということを教えていただきました。

講演資料はこちらから

2.グループワーク&討議 「文書品質特性の視点から記述を改善してみよう」ASDoQ運営スタッフ

ASDoQで作成したシステム開発品質モデルの活用ガイドとして参考例を集める仕組みづくりを考えています。今回はそのトライアルとして、例文を使用し、どの品質特性、品質副特性に該当するのか、改善例としてどんな文章が考えられるのかを議論しました。最後に各グループの代表者により結果を共有していただきました。
同じ例文をでも異なる視点からの指摘があがるなど、参加者の皆様も興味を持って取り組んでいただけたと思います。
今後の活動に向けて皆様からのご意見、アイデアをお待ちしております。

講演資料はこちらから

次回のASDoQイベントは、6月7日(火)に2022年度総会・第29回研究会をオンラインで開催予定です。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。
また、今年の大会は,20221111、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。ご期待ください。


投稿日時 2021-11-11 14:34:55 (1146 ヒット)

2021年11月8日にASDoQ大会2021を開催しました。
今回の大会では、『新しい世界と時代の文書品質』をテーマに、システムやソフトウェア開発文書はもとより、異なる分野にも目を向け、今後の開発文書のあり方や品質を高めるヒントを探りました。 今年も昨年に引き続きオンラインでの開催となりましたが、情報交流会に10件の話題提供をいただくなど多くの方に参加いただき、大変盛り上がった大会となりました。

第1部のチュートリアルでは、塩谷 敦子氏(ASDoQ/イオタクラフト)が「書いて仕事を進めよう!―開発文書をヒントに、文書を書くことで仕事の品質を上げるコツを学ぶ―」のタイトルでご講義くださいました。 文書を書くことを仕事につなげる方法として、プロセスにそった文書作成、ライティング技術を活用した仕事の進め方をミニ演習を交えて紹介していただきました。

(チュートリアル:塩谷 敦子氏)

第2部の講演会に先立ち、オープニングセッションでは、プログラム委員長の栗田さんからASDoQ大会2021の見どころについて紹介がありました。

(オープニングセッション:栗田 太郎 氏)

基調講演では、石川 冬樹氏(国立情報学研究所)が「オープンな世界と向き合うシステムにおける開発文書品質」のテーマでお話しくださいました。言葉をそろえて同じ理解を持たないとステークホルダーや開発者間で議論ができないのは、従来のシステム開発と変わらない。機械学習では、あいまいな要求に対応する必要があるため、大量のデータを学習させることによって具体例を作り上げて要求を実現していく必要があるということ。そのための課題やアプローチについて、実際の開発で行っている取り組みを基に解説していただきました。


(基調講演:石川 冬樹 氏)

招待講演では、染谷 美有紀氏(医学書院)が「内容の質を高め、読みやすい本をつくるには――看護書の編集・制作のプロセスから」のテーマでお話しくださいました。

第3部では情報交流会として、話題提供者と参加者との意見交換の場が設けられました。 ASDoQの活動報告に続き、10組の発表者により文書品質に関わる話題を提供していただきました。様々な切り口から開発文書の品質向上に取り組んだ事例はどれも興味深いものでした。皆さんが行っている取り組みのヒントになるものもあったのではないでしょうか。

■「オンデマンド型オンライン教育における用語統一の大切さ」
福島 泰子氏(名古屋大学大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター)

■「誤訳を生み出さないためにできること ~機械翻訳から校正を考える~」
山本 知広氏(ヤマハ株式会社)・宮外 真理子氏(PPBインターナショナル株式会社)

■「アジャイル開発における文書品質について考える」
谷﨑 浩一氏(株式会社ベリサーブ)

■「デジタル化によるソフトウェア要求仕様書の品質向上」
不破 慎之介氏(株式会社デンソークリエイト)

■「開発文書校正支援AIモデルの可能性」
森口 功造氏(株式会社川村インターナショナル)

■「特許明細書の標準化に向けた取組 ~特許文書品質特性モデル~」
谷川 英和氏(産業日本語研究会・IRD国際特許事務所所長)

■「OSSを活用した文書間一貫性の確保」
芦田 直之氏(株式会社デンソー)

■「RedPenを用いたシステム開発文書評価のための機能追加の試み」
藤田 悠氏(長野工業高等専門学校)

■「ゴールから逆算したプロセスで開発文書全体をMECEにする」
南部 妙水氏(アンリツ株式会社)

■「技術文書研修に求められる期待」
下野 宏美氏(株式会社 富士通ラーニングメディア)

 最後に、参加者にいただいたアンケート結果を示します。多くの参加者から満足したとのご回答をいただきました。
  

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、情報交流会で紹介された取り組み、また参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。

来年の大会は,2022年11月11日(金)、名古屋大学 野依記念学術交流館での開催を予定しております。
次回も是非ご期待ください。


投稿日時 2021-09-03 10:22:13 (1247 ヒット)

2021年9月3日に,第27回研究会をオンライン(Zoom)にて開催しました.22名の方に参加していただきました.今回の研究会では,2つのテーマを取り上げました.


 1.「俳句練習はシステム開発文書品質の向上に役立つ?!」山本雅基(名古屋大学)


プレバトというTV番組の俳句コーナー(芸能人が詠んだ俳句を俳人の夏井先生がコメントして校正する)を気に入っている山本さんが,夏井先生の著書を紹介しながら,俳句と開発文書の関係をひもときました.


 システム開発を進める技術者は,最近,SlackやTeamsなどのチャットや帳票などに短い文を書くことが多くなっています.山本さんは,「短い文だからルーズに書いていた」と反省し,わずか17音の俳句に親しむと,「短い文だからこそ考えてきちんと書く」癖がついて文書品質が高まるのではと,指摘しました.実際に,自分で詠んだ俳句を紹介したり,面白い講演でした.皆さんも,俳句を詠んで,文書品質を高めてみませんか.

講演資料は,こちらから.

 2.「自然言語処理AIの技術動向 ~意味理解への期待と現実~」粕渕 清孝(株式会社 SCREENアドバンストシステムソリューションズ)


最近は,自然言語処理AIシステム・サービスの開発をしている粕渕さんが,技術動向の紹介とシステム開発工程へのAI適用について説明をして下さいました.


自然言語処理AIの意味理解への期待が高まっています.意味理解が概念と概念間の関係であるならば,現時点ではまだそのレベルに達していないでしょう.現在,意味理解実現のアプローチとしてスーパーコンピュータ並の計算環境と膨大なデータによる物量作戦が主流です.しかし,製造現場の再発防止・未然予防の視点からは別のアプローチも考え得るのではないでしょうか.例えば,AIが見出した知見を別のAIでも再利用できるようになれば,知見の漏れ抜けを恒久的に防ぐ知見エコシステムを構築できると考えています.

システム開発工程へのAI適用は問い合わせ効率化や設計改善支援など既に実用化されています.意味理解が実現されればさらに多くの適用先が増えるでしょう.会社には,多くの開発文書が存在します.その活用が進めば,生産性や品質を深い水準から高めることができます.今から自然言語処理AIを活用することが,将来のアドバンテージになるはずです.皆さんも,是非ご検討ください.

講演資料は,こちらから.


投稿日時 2021-05-31 12:36:42 (1077 ヒット)

活動報告:2021年度定期総会・第26回研究会を開催しました.

2021年5月28日(金)に,2021年度定期総会と第26回研究会をオンライン(Zoom)で開催しました.

1.2021年度定期総会

事務局長の藤田さんの司会で,進行しました.はじめに,現在の会員数(個人会員96名,法人会員23社)が報告され,委任状と参加申込みの合計が会員数の1/2にあたる81となり,総会成立が確認されました.

議事は,2020年度の事業報告・会計報告・会計監査報告,役員改選,2021年度の事業計画・収支計画でした.事業については事務局長の藤田さんが,会計については会計の塩谷さんが,役員改選については代表幹事の山本さんが報告しました.

2011年7月11日に設立したASDoQが節目となる10年目に,運営委員会から役員交代が提案されました.代表幹事が山本雅基さんから塩谷敦子さんに,運営委員の奈良慶之さんが退任,内野将輝さんが加わる提案でした.それぞれ簡単な挨拶が行われました.

総会では,全ての議案が当初案の通りに承認されました.コロナ禍が続く2021年度ですが,代表幹事の交代と共に気分も一新して,システム開発文書品質に,明るく取り組んでいきましょう.

 
司会:藤田悠さん 新代表幹事:塩谷敦子さん 旧代表幹事:山本雅基 新運営委員:内野将輝さん
 
会員は,総会資料を閲覧できます.[会員メニュー - 活動の記録 - 第26回研究会(定期総会)] をご覧ください.
 

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2.第26回研究会

総会に続いて,第26回研究会が開催されました.今回は,2講演が行われました.会員は,講演の発表資料を閲覧できます.[会員メニュー - 活動の記録 - 第26回研究会(定期総会)] をご覧ください.資料に興味がある非会員の方は,どうぞこの機会に,会員にご登録ください.
 

講演1 

最初の講演は,新しく代表幹事になられた塩谷敦子さんの「システム開発文書品質10年よもやま話」でした.
 
塩谷さんは,2011年のASDoQ設立時から参画しておられて,10年間の活動を俯瞰されました.システム開発文書品質という未知の領域を,ASDoQが手探りで歩いてきたことがエピソードを交えて語られました.
 
そのうえで,業務経験からも感じてこられた開発業務と文書作成の関係が俯瞰されました.ソフトウェア品質評価の国際規格ISO9126-1に触発され,文書作成そのものを「文書開発プロセス」として捉えて,開発文書の品質向上に切り込む塩谷さんなりの取り組みも紹介されました.
 
さらに,ロードマップ部会が作成した開発文書品質の研究課題一覧が示され,ASDoQの活動領域がまだ大きく広がっていることが示されて,「みんなでシステム開発文書品質に取り組みましょう」と呼びかけられました.
 
シェイクスピア好きの塩谷さんは,マクベスで語られる「明けない夜はない」という台詞を引用されました.コロナの夜が続きますが,夜は夜なりにオンラインで活動しましょうと,締められました. 
  

 

 講演2

2つめの講演は,ASDoQ会員であり,かつテクニカルコミュニケーター協会(TC協会)にも属されている村田珠美さんの「開発者と並走したい、テクニカルコミュニケーター」でした.テクニカルライターは比較的,耳馴染みのある職種である一方,開発者の皆さんに馴染みの少ない「テクニカルコミュニケーター」を俯瞰した内容でした.
 
「対象とする相手に技術的な情報を伝える専門家」であるテクニカルコミュニケーターの仕事の内容や能力について,改めて知ることができました.取扱説明書を作成する過程で,実際に動作する製品に加えて,その要求仕様書や設計書などASDoQの関心事である開発文書も参照されます.
 
改めてテクニカルコミュニケーターから「用語統一の大切さ」や「後工程になるほど作業負荷が大きくなること」などの指摘を受けて,それらの重要性を再確認しました.開発の上流工程から,システム開発技術者と,テクニカルコミュニケーターが交流することの有益さが提示されて,目から鱗の方も多かったのではないでしょうか.
 
村田さんは「開発者とテクニカルコミュニケーターの並走」と言われていました.システム開発文書品質に着目するASDoQが,ソフトウェアやハードウェアの技術者だけではなく,テクニカルコミュニケーターの皆さんにも関心事となる場を提供していることが,よく分かりました.もちろん,それらの皆さんに限定されることなく,言語や論理や図形や表現など,情報の共有や伝達に関する全ての領域に広がりを見せていくことと思います. 
 
 
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 ASDoQでは,皆さんからの取り組み事例の発表をお待ちしております.
 
 2021年度のASDoQ大会は,11月8日(月)の午後に,オンラインで開催されます.予定を入れていただけると,とてもうれしいです.

 

 


投稿日時 2021-03-22 09:32:13 (1137 ヒット)

 2021年3月17日に、第25回研究会をオンライン(Zoom)にて開催しました。24名の方に参加していただきました。

 今回の研究会では、近年注目を集めている「UX:User eXperience」をテーマに取り上げました。

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 最初の招待講演は、『ビジネスマンのための新教養 UXライティング』の著者のお一人である冨永敦子教授(公立はこだて未来大学 メタ学習センター)をお招きし、『さまざまな場に通じるUXライティングの考え方』のテーマでご講演いただきました。
 クイズ形式で参加者と交流したり、さまざまなUXライティングの事例紹介により、UXライティングについてわかりやすく説明していただきました。また、「アサーティブネス」というコミュニケーション手法についても教えていただきました。
 今回のご講演では、UXライティングのテクニック以上に、「ユーザーと一緒にユーザーのニーズを達成する」という考え方や姿勢が重要だと学ぶことができました。相手に対する表現方法は色々ありますが、その中の「文字」に対して気を配るのがUXライティングだと理解しました。このためには、相手の受け取り方についてよく考えて対応することが、根本の姿勢として重要だと学びました。これは、仕事に限らず日常生活全般において重要なことですので、日々の生活を振り返るよい機会になったのではないでしょうか。
 
 
(招待講演 冨永敦子 氏)
 

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 次に、『UXが重視されるシステム開発を、開発文書にこだわって考えてみよう』のテーマで、ASDoQ代表幹事の山本雅基さん(名古屋大学)に議論を進行していただきました。
 議論の導入として、某大企業のソフトウェアエンジニア採用ではUXデザインの高いスキルも要求されていることを踏まえ、これからのエンジニアにとってのUXスキルについて議論しました。短い時間の中で、さまざまな意見が交わされました。
 最後に山本さんにより、以下のようにまとめていただきました。
  •  自動運転のような複雑なシステムの場合、エンジニアにはUXスキル以前にドメイン知識が無いと難しいだろう。
  •  ドメイン知識を持っている人がUXのセンスも身に着けることで、世の中に無いシステムの要求を考えデザインするという、発想力のある創造的な仕事が可能になる。

 

 
 (討議 山本雅基さん)
 

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 最後に、ASDoQ幹事の藤田さん(長野工業高等専門学校)により、『ASDoQ文書品質モデルによる文書評価のためのRedPen活用の試行』のテーマで、活動事例を紹介していただきました。
 RedPen(http://redpen.cc/)は、技術文書を評価するためのオープンソースソフトウェアです。藤田さんは、RedPenの評価項目とASDoQのシステム開発文書品質モデルの測定項目との対応関係やカバレッジを整理されました。その結果、意味論が強く関係しない「理解容易性」「可読性」「規範適合性」の測定項目の多くについて、RedPenで評価可能であることがわかりました。さらに、RedPenの評価項目の拡充についても検討されていました。
 本事例を参考に、皆さんにもRedPenやASDoQの文書品質モデルを活用していただければと思います。
 
 
 (活動紹介 藤田悠さん)
 
(紹介資料から1)
 
(紹介資料から2)
 
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  ASDoQでは、皆さんからの取り組み事例の発表をお待ちしております。
 
 さて、次回のASDoQイベントは、2021年度総会・第26回研究会(5月28日(金)予定)です。次回もオンライン開催の予定です。詳細が決まり次第ご案内しますので、皆さん、ぜひご参加ください。
 

 


投稿日時 2021-02-17 16:48:50 (1308 ヒット)

■第25回研究会 開催要項
  日時:2021年3月17日(水)15:00-18:00
  場所:オンライン(Zoom)
  対象者:ASDoQ会員,入会を検討している方
  参加費:無料
  申込締切日:3月17日(水)14:00

  参加申込みはこちらから.

■研究会プログラム
  14:50                開場
  15:00-15:05     オープニング
  15:05-16:35     招待講演
            「さまざまな場に通じるUXライティングの考え方」
                冨永 敦子 氏(公立はこだて未来大学, メタ学習センター)
  16:35-16:45     休憩
  16:45-17:25     討議
            「UXが重視されるシステム開発を,開発文書にこだわって考えてみよう」
                 ASDoQ運営スタッフ
  17:25-17:50     活動紹介
             「ASDoQ文書品質モデルによる文書評価のためのRedPen活用の試行」
                 藤田 悠 氏(長野工業高等専門学校)
  17:50-18:00     クロージング

■講演詳細
【概要】
  2020年11月、『ビジネスマンのための新教養 UXライティング』を上梓しました。新型コロナウイルス感染対策のため、ほとんどのやりとりがオンラインになってしまったなか、この本の原稿を書いていました。書きながら、 こういう状況だからこそUXライティングの考え方が必要とされるのだとひしひしと感じていました。
  UXライティングは「ユーザーの気持ちに寄り添い、ユーザーのニーズを知り、そのニーズを満たす」ことを目的としています。この講演では、以下の3つのトピックについてお話したいと思います。
  ・UXライティングとテクニカルライティングの違い
  ・UXライティングの例
  ・大学における学習支援者の育成―UXライティングの観点から―
  興味を持っていただけると幸いです。

【プロフィール】
  公立はこだて未来大学教授。博士(人間科学)。
  コンピューター会社、フリーランスのテクニカルライター/ライティング講師、早稲田大学ライティングセンター助手、早稲田大学人間科学学術院助教を経て、2014年公立はこだて未来大学に着任。
  専門は教育工学、教育心理学。おもな研究テーマは、インストラクショナルデザインをベースにした授業設計とその効果検証。
  著書に『統計学がわかる』(技術評論社)、『「伝わる日本語」練習帳』(近代科学社)、『ビジネスマンのための新教養 UXライティング』(翔泳社)など。
http://www.tomi0730.com

 


投稿日時 2020-12-17 17:18:43 (1660 ヒット)

 システム開発文書品質研究会(ASDoQ)は、「誤読されないメールの書き方10箇条」を発行しました。

 

さらなる改善のためのご意見等は、随時ASDoQ窓口にて受け付けます。
個人や組織内では、自由にカスタマイズしてお使いください。
システム開発文書を含めた文書改善につながれば幸いです。
そのような活動を、ぜひASDoQ大会や研究会にてご発表ください。

 


投稿日時 2020-11-10 20:23:20 (1764 ヒット)

2020年11月6日に,ASDoQ大会2020を開催しました.今年はコロナ禍によりオンラインでの開催となりましたが,約70名の方に参加していただき,講演者とのやりとりも多く,大変盛り上がった大会となりました.

今回の大会のテーマは,「オンライン時代の言葉と文書」としました.現在オンラインでの業務が拡大されつつありますが,意思疎通が取りづらくなる懸念があります.本大会では,3件の講演を通して,言葉や文書についてどのように改善すべきか,ヒントを探りました.

オープニングセッションでは,プログラム委員長の栗田さんから,今回のプログラムへの想いと,申し込み時のアンケート分析結果について語られました.

(オープニングセッション:栗田太郎 氏)

続いて3件の講演が行われました.

1件目の講演では,都築香弥子 氏(俳優・声優・表現講師)が「豊かな伝え方・受け取り方~演劇メソッドを使って」のテーマで,異業種の側面からお話しくださいました.講演中には,ネット越しではありましたが,実際に参加者の方に演劇を体験していただきました.相手のことを理解したり感じ取ることによって,伝え方・受け取り方が全く異なることを,参加者の方に体感していただくことができました.演劇も開発も,お客様に届け,さらに受け取ってもらえて,はじめて作品/製品として完成するという点で,非常に共通点が多いという発見がありました.そして,都築さんから紹介いただいたさまざまな「演劇メソッド」は,今後の業務に大変参考となるものとなりました.
 
(講演1:都築香弥子 氏)

2件目の講演では,藤崎祐美子 氏(ビジネスエンジニアリング株式会社)が「伝わりやすい文章の書き方・広め方」のテーマでお話しくださいました.品質マネジメント部における自社製品の文書改善の取り組み事例について紹介いただきました.藤崎さんの改善活動は,実際に人財が育ち,仕組みを構築して定着し,手離れすることができたという,非常に珍しい成功事例でした.藤崎さんからは,注意点を多数紹介していただくことができ,文書の改善にとどまらず,業務を成功させるための重要なヒントを得ることができました.

(講演2:藤崎祐美子 氏)

3件目の講演では,森崎修司 氏(名古屋大学 大学院情報学研究科)が「業務文書のレビューに使えるソフトウェアレビューの原理と技法」のテーマでお話しくださいました.普段何気なく実施しているレビューという活動について,特性をわかりやすく整理し,説明いただきました.そして,望ましいレビュー活動について,非常に沢山のTIPSを紹介いただきました.業務ですぐに実践できる気づきを沢山得ることができた講演となりました.

(講演3:森崎修司 氏)

最後のクロージングセッションでは,本大会の実行委員長である山本さんより,ASDoQの活動紹介をさせていただきました.

(クロージングセッション:山本雅基 氏)

最後に,参加者にいただいたアンケート結果を示します.本大会に対して,大変満足していただくことができました.また,リピーターの方に継続的に参加いただけていることがわかりました. 来年の大会は,2021年11月12日(金)の開催を予定しております.次回も是非ご期待ください.

 

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん,ご講演者の方々,またASDoQ大会開催に内外からご協力,ご支援,ご後援くださった方々に感謝いたします.ASDoQは,講演で得られた知見などの本大会の結果を,今後の研究会活動に活かしていきます.また,議論や仲間づくりの場として期待にお応えできるような研究会を目指してまいります.


投稿日時 2020-09-29 15:57:28 (2214 ヒット)

 2020年9月18日に、第24回研究会をオンラインにて開催しました。

 今回の研究会では、昨年度のASDoQ大会ポスター発表からの事例発表と、身近な情報伝達手段に関するワークショップを行いました。

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  まず、ASDoQ大会2019のポスター発表にて最優秀賞を受賞された富士通株式会社の金子隆さんに、活動の概要とその後の取り組みをお話しいただきました。
  重要プロジェクトの流出バグの72%が開発文書(仕様書・設計書)に起因しており、とくに設計問題を分析したところ、全体の67%が表現に係わっていたとのこと。そのような表現の問題を、ASDoQの文書品質モデルを使って、設計に必要な情報の不足や文書間の不整合などの問題として分類されました。さらに分析を進め、流出バグの防止には、正しい日本語の追求だけでは不十分であることを検証されました。そして、バグに繋がる表現を特定して抽出し修正することを目的として、自社開発された「開発文書レビュー支援ツール」が紹介されました。
 
■オンライン講演中の金子さん
 
  ■講演資料から
    
 
  ツールは、まず開発文書を文節や単語に分解してDBを作成します。次に、独自作成のクエリを用いて、不適切表現や説明不足など5種類に分類されたバグにつながる表現をDBから抽出します。講演では、不適切な表現事例などを、ご紹介いただきました。
  実際に、レビュー支援ツールを開発プロセスに組み入れて運用されているそうです。その結果、ツール適用による問題検出は、人手のみによる開発側レビューの6.6倍に向上し、製品出荷後の記述起因の不具合は0件になったとのことです。
 今後は、形式仕様の考えを導入して、抽出条件の精度を向上させる計画です。さらには、抽出条件の自動更新や、設計書の自動修正に取り組まれるとのことです。
 
 講演後の質疑では、複数の参加者から、非常に興味深い活動との印象が示されました。活動の更なる発展を、再びASDoQの大会や研究会の場でご紹介いただけることを期待したいと思います。
 
 ■ ASDoQ大会2019の受賞時の様子
 
 
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 研究会の後半では、会員有志が作成した「読み誤られないメールの書き方10箇条」をきっかけとしたワークショップを行いました。ワークショップでは、次の事項をトピックとし、Zoomのアウトブレイクルームにて4つのグループに分かれて意見交換しました。
 
<話題1> 「読み誤られないメールの書き方10箇条」のレビュー
<話題2> その他の表現手段の例も考えてみよう
メール以外のメッセージやチャットなども含めた、他の情報伝達手段での記述の注意点
<話題3> メール10箇条などの決め事や注意事項を、日々の仕事にどうつなげていくかを考えよう
 
 グループ討議の後に、それぞれのグループが討議内容を発表しました。
<話題1>では、Googleドライブ上で、事前にASDoQ会員が記入した「レビュー記入シート」やホワイトボードでの意見の他、グループでもそれぞれ改善点を出しました。主には、次のような意見がありました。
  • メールによっては場面や用途が異なるので、それぞれに応じて使い分けが必要になる(10箇条がすべて当てはまるとは限らない)。
  • 第10項は、書き方というより心構えのようなものだが、重要である。
    (第10項:送信前に読み返し ― 読み誤られないことを確認してから送信を)
  • 「読み誤られないメールの書き方10箇条」の位置づけ(ルールかガイドラインかなど)を明確にするとよい。
 
また、<話題2>に触れたグループからは、次のような意見がありました。
  • チャットやweb会議システムでのコミュニケーションでは、メール程には文章の書き方を気にしない。そのために誤解が生じやすい。web会議システムでは、ホワイトボードや画面共有が手軽に使えるので、活用して、コミュニケーションを補うとよい。
  • 記録として議論を残したい場合は、チャットは避けてメールにするなど、使い分けが必要。
 
<話題3>に関しては、いずれのグループも時間切れのために討議できなかったようでした。しかし、「読み誤られないメールの書き方10箇条」の作成者のひとりから、次のような意見がありました。 
「読み誤られないメールの書き方10箇条」を無意識にできるようになることが、開発文書や他の業務文書にも、影響を与えられるのではないかと考えている。組織でこの10箇条を習慣化したことが、開発文書や他の文書にもこんな影響が出てきた、という結果が得られるなら、ぜひASDoQで発表していただきたい。
 
 今回のワークショップでは、身近な情報伝達手段のひとつであるメールに着目してみました。情報伝達手段は他にも種々あります。コロナ禍によってこれまでとは異なる状況やさまざまな制約下で、「書く」ための手段だけでなく「話す」も含めた伝達手段を、状況に応じて選び、仕事を進めていかなければなりません。そして、これまで以上に情報の受け手を想像することが必要になっているように感じました。 
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 さて、次回のASDoQイベントは、ASDoQ大会2020です。
変化しつつある、仕事でのコミュニケーションのスタイルについて、もう少し興味を広げてみませんか。
各分野の専門家が語る、言葉と文書について、オンラインという視点も交えて、いっしょに考えてみましょう。
みなさまのご参加をお待ちしています。
 
日時:2020 年 11 月 6 日(金)14:00 - 17:45 (オンライン開催)
テーマ:オンライン時代の言葉と文書

 


投稿日時 2020-06-19 13:50:31 (11411 ヒット)

 2020年6月12日16時から18時に、2020年度総会報告と第23回研究会を開催しました。今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応によりオンライン(Zoom)にて行いました。

 
最初に、総会報告を行いました。
2019年度の事業報告と決算報告、2020年度の事業計画と収支計画については、事前にWebでご投票を頂きました。その結果、総会の成立、2019年度報告、2020年度計画が承認されたことを報告しました。
 
2020年度の研究会活動は、ASDoQ大会を含めて全てオンラインで開催する予定です。初めての試みですので、ご協力くださいますようお願いします。
 
総会報告に続いて、第23回研究会を行いました。
今回は、「リーディングスキルから考える文書品質の向上策」をテーマに実施しました。
 
ASDoQはシステム開発文書品質を研究する会です。書く能力(ライティングスキル)と読む能力(リーディングスキル)では、主にライティングスキルに関心を持ってきました。しかし、新井紀子先生(国立情報学研究所 教授)が書かれた2冊の著書(「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」「AIに負けない子どもを育てる」いずれも東洋経済新報社 )では、リーディングスキルの低下が取り上げられていました。
 
そもそも、文書品質は読み手が決めると、ASDoQでは考えてきました。そこで、今回は、リーディングスキルについて、Zoomの投票機能やブレイクアウトルーム機能、チャット機能を使い、オンラインでの意見交換を行いました。
 
参加者の多くがテレワークをされており、そこで感じたことを共有しました。テレワークにより、情報共有が口頭やメールではなくチャットに移行している方がいらっしゃいました。短い単語のやりとりをしがちであるチャットは、素早く意見交換できるメリットがあります。しかし、理解せずに単語だけを追ういわゆるAI読みに陥りがちであることなどが指摘されました。以下に、交換された意見を列挙します。
 
■リーディングスキルが低いと感じたきっかけ
 ・チャット普及により気づかないうちにAI読みをしている
 ・長い文書を読むのが苦痛である
 ・図や表が無いと理解しづらい
 ・主語が無い文書を読みにくいと思う
 ・目的語を正しく理解できないと気づく
 ・二重否定を多用されると理解が難しい
 
新井先生らの一般社団法人「教育のための科学研究所」は、RST(リーディングスキルテスト)を開発して、読む能力の測定に取り組まれています。今回の研究会では、それに倣い、RSTを自作したり、その問題をレビューしたり、自作した問題を解いたりして、リーディングスキルに対する理解を深める試みをしました。良問を作ることは中々に難しく、レビューは大いに盛り上がりました。
 
■RSTの作問/レビュー/問題を解くワークでの意見
 ・読解力の気づきになり、社内教育として役に立ちそう
 ・テスト対策をされてしまい、意図した結果を得られない可能性があるので工夫が必要
 ・読み手が読み間違えない文章を記述するための力になりそう(図や表を活用させる等)
 
総会と研究会後の交流会も、今回初の試みとしてオンラインにて開催しました。各自お酒とおつまみを持参し、画面に向かって文書品質の未来について語り合いました。
 
テレワークの普及は、新しい文書品質の在り方を模索する日々の始まりを示唆しているのかもしれません。本年度もどうぞよろしくお願い致します。


投稿日時 2019-11-01 15:47:52 (12769 ヒット)

2019年10月25日に,名古屋大学 野依記念学術交流館にてASDoQ大会2019を開催しました.

最近は,機械学習をはじめとするAI(人工知能)技術の急速な発展が続いています.そこで,今回の大会では『これからのシステムと文書技術への要求と品質 』をテーマに,開発文書のあり方やその品質を高めるヒントを探りました.

第1部は,2件のチュートリアルを並行で開催しました.

チュートリアル1では, 町田 欣史 氏(NTTデータ)が「テスト技術者の視点で文書をレビューする」のタイトルでご講義くださいました.ソフトウェアテストの技法や観点を使って設計書を読み解き,設計書の「抜け」や「漏れ」を見つけるためのテクニックをご紹介いただきました.

 

(チュートリアル1:町田 欣史 氏)

チュートリアル2では,乙武 北斗 氏(福岡大学)が「ソフトウェア技術者のための自然言語処理技術」のタイトルでご講義くださいました.ソフトウェア技術者のための自然言語処理入門として,解析技術,言語リソースおよび文書分類に焦点を当て説明いただきました.形態素解析や係り受け解析のツールは数多くありますが,それぞれの特性を解説いただき知ることができました.また昨今では深層学習により文脈まで理解した解析ができるようになっているとのことで,文書品質の機械的な測定の可能性が示唆されました. 

 

(チュートリアル2:乙武 北斗 氏)

 

第2部は講演のセッションです.最初に,プログラム委員長の栗田さんから,申し込み時のアンケート分析結果と今回のプログラムへの想いが語られ,続いて3件の講演が行われました.

基調講演では,山本修一郎 氏(名古屋大学)が「「要求」の40年(1979~2019) 過去・現在・未来」のテーマで研究の集大成を概観されました.電電公社の時代からの要求工学の研究史を振り返り,最新のDX時代の要求文書までが語られました.今までは要求を定義してからシステムを作り上げてきましたが,DX時代にレガシーシステムを作り直す際には,要求仕様書が残されていない場合が多くあります.そこで今後は,既存システムから要求を生み出す「逆要求分析」がキーワードになるとのことです.

 

(基調講演:山本修一郎 氏)

招待講演では,中西 恒夫 氏(福岡大学)が「プロダクトライン開発におけるNLP応用」のテーマでお話しくださいました.プロダクトライン開発パラダイムは,製品間のコア資産を生成し再利用することで開発効率を向上する開発思想です.その技術内容と現状の課題を解説いただきました.その導入にあたっては,自然言語で記述された,膨大かつ複雑な既存の開発文書を読み解いて整理する必要があり,それに要する工数が導入時の障壁になりがちとのことです。この課題を解決するために,自然言語処理技術(NLP: Natural Language Processing)を応用して作業を部分的に自動化する研究についても,ご紹介いただきました.

 

(招待講演:中西 恒夫 氏)

特別講演では,桑島 洋 氏(株式会社デンソー​)と中江 俊博 氏(株式会社デンソー​)が 「セーフティクリティカルな機械学習システムの開発における課題と業界動向」のテーマでお話しくださいました.機械学習システムの自動車への導入における安全担保は重要な課題です.にもかかわらず,現状明確な指針はなく,各国で議論がなされているとのことです.機械学習モデルは訓練データを基に作成されます.しかし,その中身がブラックボックスのままでは網羅的に振る舞いを保証できません.そのため,開発プロセスでの説明責任の重要度が増すとのことです.さらに,訓練データの内容や機械学習モデルの表現方法・検証方法が今後求められていくとのことです.

 

(招待講演:中江 俊博 氏)

(招待講演:桑島 洋​ 氏)

 

第3部のポスター発表では,8件の文書品質に関わる取り組みの発表がありました.レビュー,教育,深層学習など様々な切り口から開発文書の品質向上に取り組む事例が紹介され,参加者共に議論しました.講演者やチュートリアル講師も参加されて,参加者との交流も行われていました. 

ポスター発表では参加者の投票による最優秀賞と,審査員の投票による審査員特別賞,各審査員による審査員個人賞を表彰しました.

審査員には,今回講演いただいた方々にお願いしました.

●最優秀賞,審査員個人賞(町田欣史氏による):

『「開発文書レビュー支援ツール」による仕様書・設計書起因問題の撲滅(成果報告)』 金子 隆氏(富士通株式会社)

 

 (最優秀賞,審査員個人賞:金子 隆氏)

金子 隆氏には,審査員個人賞の副賞として,町田氏が推奨する以下の書籍が贈られました.

 NTTソフトウェアイノベーションセンタ、NTTデータ(著)「ビジネスルールを可視化する 要件定義の図解術」

 

●審査員特別賞,審査員個人賞(中西恒夫氏による):

『名詞句の分散表現を利用した開発文書品質測定』 荒木 誠氏,藤田 悠氏(長野工業高等専門学校)

 

 (審査員特別賞:荒木 誠氏,藤田 悠氏)

荒木 誠氏と藤田 悠氏には,審査員個人賞の副賞として,中西氏が推奨する以下の書籍が贈られました.

 安野光雅(著)「日本の名随筆89 数」

 

●審査員個人賞(山本修一郎氏による):

『コーディングのための英語基礎力向上の取り組み』 牧志孝俊氏(株式会社情報システムエンジニアリング)

  [副賞] (山本氏による推奨図書) 山本修一郎(著)「要求開発の基礎知識 要求プロセスと技法入門」

 

 (審査員個人賞:牧志孝俊氏)

●審査員個人賞(乙武北斗氏による):

『ソフトウェア開発文書作成力養成における導入での気づきを共有するグループワークの試み』 藤田 悠氏(長野工業高等専門学校)

  [副賞](乙武氏による推奨図書)  グラム・ニュービッグ(著)「自然言語処理の基本と技術」

 

 (審査員個人賞:藤田 悠氏)

●審査員個人賞(桑島洋氏と中江俊博氏による):

『DSQI(Diagnosis for Specification Quality Improvement)~仕様書品質改善のための診断~』伊藤収氏,内野将輝氏,岡田匡史氏,安田正実氏,奈良慶之氏(株式会社ベリサーブ 中部AM事業部)

  [副賞] (桑島氏と中江氏による推奨図書)  日本ディープラーニング協会 (監修), 日経クロストレンド (編集)「ディープラーニング活用の教科書」

 

  (審査員個人賞:伊藤収氏,内野将輝氏,岡田匡史氏,安田正実氏)

 

最後に,参加者にいただいたアンケート結果を示します.

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん,ご講演者の方々,またASDoQ大会開催に内外からご協力,ご支援,ご後援くださった方々に感謝いたします.ASDoQは,講演で得られた知見や,ポスター発表で紹介された取り組み,また参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を,今後の研究会活動に活かしていきます.


投稿日時 2019-08-25 20:21:23 (7410 ヒット)

 2019年8月23-24日に京都市にて,ASDoQサマーワークショップ2019を開催しました.

 
毎年ASDoQでは、夏の京都で合宿形式のワークショップを開催しています.鴨川のせせらぎに涼しさを感じつつ,開発文書について熱い議論を交わしています.
今年のサマーワークショップでは,ASDoQが提唱している文書品質モデルの使い方ガイドライン作成に向けて,例とする開発文書を用いて,指摘,文書品質との関係づけ,改善を,モブワークの方式で実施しました.
◆システム開発文書品質モデルについてはこちら
 
例とした開発文書は,SESSAMEの「話題沸騰ポット要求仕様書 (GOMA-1015型) 第6版」(最新版は第7版)です.ワークの対象として「6.エラー検知」の章を選びました.
 
ワークは,昨今話題になっているモブワークの方式で行ないました.
◆モブワークとは
3~4人でチームを組み,皆で同じ表示を見ながら課題に取り組みます.
PCを操作して入力する人は1人(ドライバー)です.他の人はナビゲーターとなり意見を出し合います.意見には,まず,肯定的な反応をします.すると,どんどん意見が出てきます.全員参加により,1人で作業するよりも早くて完成度が高いアウトプットが出せます.
今回は,Googleドキュメントを用いて、各チームで1つの文書を共有しスクリーンに投影して同じ画面を見ながら、指摘や改善の作業を進めました.
最後に皆でバンザイをして,達成を祝います.最初は恥ずかしかったのですが,やってみると,一体感を得られますし,ワークの疲れもとれて爽快でした.
 
以下は3チームに分かれモブワークを実施した振り返り(KPT:Keep, Problem, Try)の中で,モブワーク自体に対する意見の抜粋です.
◆良かった点,継続したい点(Keep)
・記述品質(品質特性での可読性や理解容易性や論理性)に着目して改善しようとすると、情報品質(品質特性での完全性、とくに正確や妥当)の不備に気づけた.
・チームで理解を深めて共感しながら進めることでチーム力が向上した.
・Googleドキュメントを使うと,皆で並行作業できた.
・ナビゲーターが議論中、ドライバーはリファクタリング作業ができる(文書をレビューできる).
 
◆改善したい点,良くなかった点(Problem)
・一つの点に議論が集中して,当初計画した分量の文書を処理するうえで,計画よりも時間がかかった.
・Googleドキュメントを使ったので,全員がドライバーになりファイル操作をした時間帯があり,ドライバーとナビゲーターの境目が曖昧になった.これは,モブワークの基本的なやり方とは,ズレている.ただし,記述改善の説明や理由を共有することがはできていたので,このようなモブワークのやり方にも価値があると感じた.
 
◆次に挑戦すること(Try)
・作業の効率がよい作業の進め方を決めて,進行のスケジュールを定めて行う.
・振り返りの結果を,次回のモブワークに適用してモブワークのやり方をブラッシュアップする.
・モブワークの原則に従い,皆で同じ画面を見て作業する.
 
各チームの発表の様子を写真でご紹介します.
 
◆チーム1
 
話題沸騰ポットは水温が一定以上上昇するとエラー検出する仕様です.チーム1は,水温検知のサンプリング間隔の記述漏れに気づき,仕様書に書かれているグラフの修正もしました.
 
◆チーム2
 
元の文書は多様な情報がフラットに書かれていました.チーム2は,要求仕様書の章立てを細かくし,さらに,各章の文章に適切に表を挿入しました.これらのことで,要求仕様で伝えたいことが構造化され,文書品質の論理性が高まりました.
 
◆チーム3
 
元の文書は,一般的ではない用語が使われていました.チーム3は,用語を変更して,本質をわかりやすく伝える努力をしました.
 
 このように,それぞれのチームは様々な議論を展開しました.そして,各チームに共通して以下の点を認識しました.
・1つ1つの文を査読する際,章全体を意識して行うことで,文書品質の論理性を高めることができる
・長文で記述すると,読み取るコストが増える.文書品質の可読性と理解容易性を高めることが必要.そのように丁寧に文書を書くと時間がかかるかもしれないが,開発全体で見ると,読み取る時間が減り誤りも起こりにくくなるので,にコスト削減に繋がる
・助詞や接続詞を適切に使う努力をすると,文書品質の論理性が高まる.
 
最後にバンザイすることで達成感が得られます(これもモブワークならでは).
 
今回の討議結果を基に,文書品質モデルのガイドライン作成を進める予定です.

 


投稿日時 2019-06-29 13:32:24 (1789 ヒット)

2019年6月28日に、令和初の2019年度総会・第21回研究会を大崎ウエストギャラリー(東京都品川区)にて開催しました。

 
はじめに、2019年度定期総会を開催しました。出席者が27名で委任状が53個提出されており総会の成立条件(会員数の1/2)を満たしていることを確認しました。そして、2018年度の事業報告と決算報告、2019年度の事業計画と収支計画と役員改選について事務局から説明しました。皆さんの承認をいただき、無事に総会を終了しました。
総会では、文書品質モデルの普及や実用化に向けて、活動を活性化すべきとの意見を頂戴しました。この研究会は、皆さんとご一緒に進めています。今年度も、ワークショップや大会などへのご参加を含めて、ご協力くださいますようお願いします。
 
次に、第21回研究会では、新森昭宏さん(インテック)からご講演「自然言語処理技術の最近の発展と日本語文チェックへの適用について」と、ASDoQからシステム文書品質モデルに関するワークショップを行いました。
新森さんのご講演では、ご自身が開発され、社内で文書改善のために取り組まれている日本語文チェックツールについてお話しいただきました。
日本語文チェックツールはインテック社内の議事録・設計書・報告書等のチェックに使われています。ツールのポイントは下記です。
  • オープンソースソフトウェアツール(redpen他)を最大限に活用した
  • 特にExcelファイルからのテキスト抽出を工夫した

しかし、ルールベースのため指摘の質に改善の余地があるそうです。具体的には下記です。

  • 文脈を把握した上での指摘
  • 指摘するだけでなく、OK例の提案
新森さんは現在、自然言語処理のための最先端言語モデルである「BERT」の成果を日本語文チェックツールに応用する研究をされており、その研究内容や今後の可能性もご紹介くださいました。BERTに関して、ご自身でプログラミングしたりCourseraのeLearningで学ばれたご経験を踏まえて、分かりやすく解説していただきました。フロアからは質問が飛び技術的な議論が交わされ、充実した時間でした。
BERTは、例えば、学習していないシステムにとって新しい文を与えたときに、それが曖昧であるか否かを識別できる能力を持ち得ます。この技術を発展させることで、ASDoQで関心を持つ文書品質のいくつかの指標を、自動的に測定できる可能性がありそうです。
講演の後には、文書品質モデルの普及と実用化への取り組みとして、測定項目をより使いやすくするためのワークショップを、以下のステップにて行いました。
  1. 個人ワークにて文書品質モデル内の測定項目に関して、次の点を考察
    • 説明文(意味の確認)
    • NG例
    • 他の品質特性との関係
  2. グループワークにて、それぞれの理解や考察を共有
  3. グループ毎に発表し、議論
今回は6グループに分かれて作業をしました。

1班:読み手と書き手の知識量に乖離があるという事実に着目し、用語定義の必要性を提案くださいました。

2班:例文を作成し、どの測定項目に違反しているか整理していく中で、測定項目に一意性が無いことを発見しました。

3班:測定項目の説明として「NG例」「NG理由」「NGの影響」「OK例」を提案くださいました。

4班:完全性の正確性(記述内容が検証可能である)に着目し、非曖昧性や合目的性との繋がりを発見しました。

5班:上流(書き手)と下流(読み手)の暗黙値について着目し、闇雲に指摘検証するのも考えものという新しい発想を得ました。

6班:NGの具体例は必須と提案くださり、さらに測定項目は実は最小粒度ではないというアプローチをしてくださいました。
発表いただいた内容を後日に事務局でまとめ、サマーワークショップ(*)のインプットにします。

(*)サマーワークショップ
毎年ASDoQでは、夏の京都@鴨川で合宿形式のワークショップを開催しています。鴨川のせせらぎに涼しさを感じつつ、開発文書について熱い議論を交わします。
今年は8月23日(金)-24日(土)を予定しています。会員の皆様には,MLでご案内しました.申込みURLを以下に示します.
皆さんのご参加お待ちしております。

今年度も研究会、ワークショップ、ASDoQ大会を計画しています。皆さんからのご意見やご要望を取り入れながら進めていきたいを思いますので、どうぞよろしくお願いします。


投稿日時 2019-03-02 16:05:15 (1622 ヒット)

2019年2月20日 名古屋ウインクあいちにて、第20回研究会を開催しました。

今回の研究会では、ASDoQ大会2018で審査員特別賞を受賞された発表チームのお一人であるデンソークリエイトの山路厚さんに、より詳しく話して頂きました。「開発文書の品質の可視化」と題して、原理的思考に基づいた正しく伝わるレビューの記録方法の講演とワークをして頂きました。

ワークでは実際に文書のレビューを行いました。 相手に正しく伝わる指摘を作成する難しさを改めて体感できました。

現場のレビュー指摘内容は間接情報が多く、指摘内容を理解するのにかなりの労力を使っています。 デンソークリエイトでは、指摘内容を直接情報で理解できる仕組み(Lightning Review)を導入しているそうです。それにより以下のような効果が出ているそうです。

・差し戻し件数が1/8に減少した
・軽微な指摘も全て記録になった
・カイゼンのための材料(記録)を蓄積できるようになった

そして、レビュー指摘の記録がどのように文書品質に役立つかを皆で議論しました。

次に、ASDoQ運営委員の山崎伸洋さんの司会で、システム開発文書品質モデル(ASDoQ発行)の継続的な改訂のために改善点の討議を行いました。主に以下のようなトピックで議論をしました。

・文書品質モデルがなぜ必要か
・使いにくい、わかりにくい点はないか
・どのように使えるのか

個人ワークの後はグループで討議しました。


発表の様子(グループ1)
・文書として体を成すという視点で文書品質を定義しているのは有意義
・分類が難しいため、ツールで分類を自動化できないか
・人のスキルに依存する


発表の様子(グループ2)
・レビュー時に有効(指摘傾向の分析)
・分類に時間がかかるのがネック
・完全性、規範適合性がイメージしにくい


発表の様子(グループ3)
・教育に活用したい
・使う人に応じた使い方ガイドラインが必要(初級編、中級編等)


発表の様子(グループ4)
・具体的にカウントできるものを持ってくると、基準がわかりやすく測定しやすくなるのでは(SQuaREが適していそう)
・完全性という項目のネーミングを見直してみてはどうか
・フローチャート等で分類ガイドを作る


発表の様子(グループ5)
・使い方ガイドが必要
・項目が多く分類を難しくしているため、項目を減らす
・項目は技術/テクニカルライティングの2つに分ける

まとめますと、以下の必要性が分かってきました。

・各品質特性の更なる明確化
定義と範囲の更なる明確化、及び、特性の分類を可能にする具体例
・使い方のガイドライン
使う場面にあわせて、文書品質モデルの有効性と使い方を示すもの

 

引き続き、システム開発文書品質モデルの有効な活用のための改善を進めていく予定です。


投稿日時 2018-11-04 16:16:08 (2863 ヒット)

2018年11月2日に、名古屋大学にてASDoQ大会2018を開催しました。
今年は、野依良治教授のノーベル化学賞受賞を記念して建てられた野依記念学術交流館にて、大きな窓からは緑をふんだんに感じることができる会場での開催となりました。

(名古屋大学 野依記念学術交流館)


今回の大会は「文書技術の展開~記述と思考の技術と品質を考える~ 」をテーマに、記述と思考技術の視点から、開発文書の品質を高めるヒントを探りました。

第1部のチュートリアル1では、 伊藤 洋子 氏が「ソフトウェアの利用品質を変えるUXライティング」のタイトルでご講義くださいました。システム利用のユーザ体験を向上させるUXライティングが登場した背景、その必要性および重要性について例題を交えてわかりやすくご説明いただきました。

(チュートリアル1:伊藤洋子氏)

 

並行して開催したチュートリアル2では、玉城 理恵子 氏が「言葉+αの効果を持つグラフィックレコーディングを試してみよう」のタイトルでご講義くださいました。話の内容をリアルタイムに図に落とし可視化、共有する手法であるグラフィックレコーディングを、グループワークを通して体験できました。

(チュートリアル2:玉城理恵子氏)

 

第2部の招待講演1では、髙橋 尚子 氏が「『情報』で変わる文書のかたち-これからの文書をつくる技術と教育-」のテーマでお話しくださいました。女性SE一期生としてご活躍なされた当時の開発現場の貴重な体験談を交えつつ、高校・大学における情報教育のこれからの動向や、情報教育や情報そのものがもたらす、文書をはじめとする表現の変化など、幅広い視点で「情報」についてお話いただきました。

(招待講演1:高橋尚子氏)

 

招待講演2では、皆川 誠 氏が「モデルとドキュメントの親密な関係 - モデルを活用してソフトウェアの設計品質を上げる -」のテーマでお話しくださいました。車載ソフトウェア向け標準プラットフォーム仕様であるAUTOSARを例にして、モデルとドキュメント(仕様書)との関係についてお話いただきました。また、簡単なゲームを題材としてドメイン・フレームワークの考え方を示し、モデル上での推敲による品質向上の一例を示していただきました。

(招待講演2:皆川誠氏)

 

第2部の講演会の後半は、ご講演者4名に山本 修一郎 氏を交え、パネルディスカッションを行いました。参加者からの疑問にそれぞれの立場や経験からお答えいただきました。


(左から パネリスト:高橋氏、皆川氏、伊藤氏、玉城氏、山本氏、モデレータ:栗田氏)

 

引き続いて行ったポスター発表では、9件の文書品質に関わる取り組みの発表がありました。レビュー、教育、マネージメントなど様々な切り口から開発文書の品質向上に取り組む事例が紹介され、参加者共に議論しました。
また、今年の会場には、講演者・チュートリアル講師と個別で懇談できるような場も用意しました。

 

ポスター発表では参加者の投票による最優秀賞と、審査員の投票による審査員特別賞、審査員個人賞を表彰しました。町田 欣史 氏が最優秀賞と審査員特別賞を受賞されました。審査員は、パネルディスカッションのパネリストの方々にお願いしました。

●最優秀賞、審査員特別賞:『「伝わる技術文書の書き方」の教育事例とその結果』
町田 欣史 氏(株式会社NTTデータ)

(最優秀賞:町田欣史 氏)

 

町田 欣史 氏には副賞として、文書品質に関連する以下の3冊が贈られました。
・TC協会(著)「日本語スタイルガイド (第3版)」
・石黒 圭(著)「よくわかる文章表現の技術〈1〉表現・表記編 (新版) 」
・三浦 順治(著)「英語流の説得力をもつ日本語文章の書き方」

 

さらに、審査員特別賞には、投票数が同数の山路 厚 氏、竹下 千晶 氏、田口 知明 氏のチームも受賞されました。

●審査員特別賞:『レビュー指摘記録の改善による開発文書の品質向上の取り組み』
山路 厚 氏,竹下 千晶 氏,田口 知明 氏(株式会社デンソークリエイト)

(審査員特別賞:山路 厚 氏、田口 知明 氏)

 

さらに、審査員個人賞の発表もあり、以下の方々に、それぞれ個人賞が贈られました。
個人賞には、審査員が選んだ書籍が副賞として贈られました。

●伊藤賞:『レビュー指摘記録の改善による開発文書の品質向上の取り組み』
山路 厚 氏,竹下 千晶 氏,田口 知明 氏(株式会社デンソークリエイト)
[副賞] 鈴木孝夫(著)「ことばと文化」

●玉城賞:『「伝わる技術文書の書き方」の教育事例とその結果』
町田 欣史 氏(株式会社NTTデータ)
[副賞] 清水 淳子(著)「Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」

●高橋賞:『事例報告:開発文書ライティング教育への取り組み』
山本 雅基 氏(名古屋大学情報学研究科)                
[副賞] 高橋尚子(著)「ゼロからはじめる 情報リテラシー(電子メールからグループウェアまで)」 

●皆川賞:『レビュー指摘記録の改善による開発文書の品質向上の取り組み』
山路 厚 氏,竹下 千晶 氏,田口 知明 氏(株式会社デンソークリエイト)
[副賞] 木下 是雄(著)「理科系の作文技術」

●山本修一郎賞:『「伝わる技術文書の書き方」の教育事例とその結果』
町田 欣史 氏(株式会社NTTデータ)
[副賞] 吉田 裕子(著)「人一倍時間がかかる人のための すぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける」
 

最後に、参加者の方にいただいたアンケート結果を示します。

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん、ご講演者の方々、またASDoQ大会開催に内外からご協力、ご支援、ご後援くださった方々に感謝いたします。ASDoQは、講演で得られた知見や、ポスター発表で紹介された取り組み、また参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を、今後の研究会活動に活かしていきます。


投稿日時 2018-09-10 10:57:43 (1877 ヒット)

今回の研究会では、システム開発文書品質の「完全性」を満たす方法を、次の流れで討議しました。

  1. サマーワークショップの報告と意見交換
  2. システム開発文書の品質特性「完全性」を満たす文書化技術の列挙
  3. 文書化技術を使う具体的な方法の検討
  4. グループ討議の結果の共有と意見交換
 
まず、サマーワークショップの報告と意見交換を実施しました。
次の写真は、ASDoQ運営委員からサマーワークショップの報告をしている様子です。
 
サマーワークショップの報告を通じて、参加者から様々な意見が出ました。
そして、完全性を満たす開発文書を書くために、「開発スキル」「ソフトウェア工学の知識」「文書スキル」の3つの軸を立ててみました(ホワイトボードの図)。
 
 
その上で、次のような意見がありました。
 
  • 「完全性」を高めるためには、ソフトウェア工学の適用が必要ではないか。
  • ソフトウェア工学は、知識として知っているだけではなく、使えなければならない。
  • 例えば、状態遷移を知識として知っているだけではなく、対象を分析して何を状態としてくくり出すかというモデリングのスキルが必要となる。
  • 開発の過程では、それらのスキルを発揮して、設計書などの開発文書として表現する。
  • ASDoQの文書品質モデルでは、「規範適合性」は基本的な品質特性であり、「完全性」はソフトウェア工学のスキルを発揮した結果の品質特性ではないか。
  • ASDoQの文書品質モデルは、性質が異なる品質特性で構成されているようだ。
 
まだ意見が出された段階で、まとめきれていません。
 
その後、完全性を満たす文書化の技術の列挙をワークにて行いました。
ワークでは、事前に運営側で用意した要求仕様のサンプルを検討の材料にしました。
以下はワークを行っている様子です(今回は3チームです)。
 
■チーム1
 
■チーム2
 
■チーム3
 
列挙した内容を各チームで発表していただきました。
 
■チーム1は、開発技術と文書技術をつなぐものを列挙しました。
 
■チーム2は、開発を意識した文書技術を列挙し分類して、その中から「レビュー」を取り上げました。
 
 ■チーム3では、サンプル仕様(三角形の判定方法)をもとに、完全性を満たすための方法を列挙しました。
 
発表後、列挙した技術の中から1つテーマを選び、その技術を使う具体的な方法を各チームで討議しました。
各チーム、様々な観点で完全性を満たすための技術を列挙し討議しました。
 
■チーム1では、要求仕様書のガイドラインを定義するための具体的な方法を検討しました。
 
■チーム2では、レビューで「記述漏れ」と「記述誤り」を見つけるための具体的な方法を考えました。
 
■チーム3では、開発文書の目次に着目し、目次に記載すべき内容、各章に記載する粒度や内容を検討しました。
 
これらのアウトプットをベースに、さらに、開発文書の完全性の議論を進めていきたいと考えます。文書品質モデルのブラッシュアップにもつながりそうです。


投稿日時 2018-07-31 21:47:05 (2048 ヒット)

2018年7月20-21日に京都市にて,ASDoQサマーワークショップ2018を開催しました。

今回のワークショップでは、システム開発文書品質モデルにおける「完全性」について、とくに要求仕様書を想定して、その完全性を高める方法を議論しました。
まずは事前に会員の皆さんから集めた完全性に関するアンケート結果(工夫していること・困っていること)を参加者間で読み込み、キーワードを抽出し分類しました。
以下はキーワードを分類している様子です。
 
完全性について検討してみると、完全性とは直結しない問題が数多く出現します。
論理性、理解容易性の問題も関わってくるため、ここでASDoQが定義する完全性の復習を行いました。
以下の写真は、システム開発文書品質モデルの定義を確認している様子です。
 
 
ASDoQが定義している完全性は「開発に必要十分な情報が記載されていること」であり、その副特性を次のように定義しています。
 
  • 合目的(読み手と目的を明示している、目的に合致した内容を記述している)
  • 正確(記述内容が正しい)
  • 妥当(記述内容が妥当である)
 
この定義を再確認するために、完全性を満たすための方法をリストアップしました。
 
  •  ステークホルダーを理解する
    →ステークホルダーとは後工程の人であり、読み手によって書く内容が決まる
  • モデル化(状態遷移図表などを使って抽象化)
    →文章では表現できない内容を表現する
  • フィードバック
    →ペーパープロトタイピングによる素早いフィードバック
    これにより隠れた要求を引き出す
 
2日目は、システム開発文書の完全性を高めるための具体的な手法についてのブレストをしました。
3つのグループに分かれ、システム開発文書品質モデルの完全性の副特性の観点から、具体的な手法を抽出しました。参加者が実際の場面で使用しているツールや手法、経験からのノウハウなどを列挙して、グループそれぞれでまとめました。
以下の写真は、各グループでブレストをしている様子です。
 
 
 
開発文書の完全性は、これまでソフトウェア工学においても議論されてきたソフトウェア自体の完全性に深く関わっていることを、あらためて参加者同士で認識しました。
そして、開発文書の完全性をソフトウェアやシステム自体の完全性とどう切り分けるか、はたして切り分けができるのか、開発文書の完全性をどうとらえ定義すべきか、さらに議論を深めていきたいと考えます。
 
9月6日に開催する研究会では、今回の討議結果を基に、さらに議論を進める予定です。


投稿日時 2018-05-27 12:54:27 (2970 ヒット)

2018年5月25日に,2018年度総会・第18回研究会を名古屋大学にて開催しました.

はじめに,2018年度総会として,2017年度の報告,2018年度の計画について事務局から説明があり,参加者の皆さんから承認をいただきました.

次に,第18回研究会を行いました.計算機処理による分析の事例として,粕渕清孝さんが「自然言語処理によるシステム開発文書品質改善の試み」について,ご発表くださいました.レビューの効率化のために,レビューで用いられた語句を分析して,使われている語句を次のレビューに生かす取り組みについて,紹介してくださいました.
 

引き続き,ASDoQ大会2017にて受賞したポスター発表から,小林 直子さんが「文書品質モデルを活用した品質可視化の試み-レビュー情報をプロジェクトの振り返り活動へ活かす-」についてご発表くださいました.ドキュメントの欠陥情報を次の開発に活かすために,ASDoQの文書品質モデルでドキュメントの欠陥情報を分析し,その分析の有効性を評価した取り組みを紹介してくださいました.

最後に,ワークショップとして,栗田太郎さんが「読みの論理のワークショップ~「国語」から開発文書の品質を考える~」について,参加者による演習や,ペアでのディスカッションを含めて行いました.文書を読むときの工夫や振る舞い,傾聴のテクニック,ワークショップの要素などを紹介してから,演習を行いました.演習では,文書を読むときに各自がどのような工夫をしているかを振り返ってから,評論文を実際に読んで自分自身の行動を観察して,それをペアの相手と情報交換しました.文章を分析的に読む方法などを考えました.

今年度も研究会,ワークショップ,ASDoQ大会を計画しています.皆さんからのご意見やご要望を取り入れながら進めていきたいを思いますので,どうぞよろしくお願いします.


投稿日時 2018-03-24 13:28:42 (2442 ヒット)

2018年3月22日に,大阪電気通信大学 寝屋川駅前キャンパスにて,ASDoQ第17回研究会を開催しました.今回の研究会では,ASDoQ大会2017で優秀ポスターに選ばれた2件のポスターに関する発表と言語処理技術に関連する研究のワークショップを行いました.

ASDoQ大会2017のポスター発表に関する発表に先立ち,ASDoQ大会2017の実施報告を運営委員の塩谷が発表しました.参加者の皆さんからもご意見をいただき,印象に残った点や,各講演のポイントなどを情報交換しました.

 

次に,ASDoQ大会2017のポスター発表にて最優秀賞を受賞した,大阪電気通信大学教育開発推進センターの齊尾 恭子さんに,以下の発表に関する詳しい講演をしていただきました.

齊尾 恭子(大阪電気通信大学),竹内 和広(大阪電気通信大学),森 幸治(大阪電気通信大学),『「言語技術トレーニング」を活用した技術者養成に向けた大学初年次キャリア教育の実践』

さらに,審査員個人賞(三森賞)を受賞した大阪電気通信大学大学院の間嶋義喜さんに,以下の発表についての講演していただきました.

間嶋義喜(大阪電気通信大学大学院),大賀賢志(大阪電気通信大学大学院),竹内和広(大阪電気通信大学),同一機能をもつプログラム構造の類似性視覚化の検討

次に,「ソフトウェア開発文書分析にむけた言語解析ツール活用の実践」として,参加者の皆さんが実際にオープンソースを使用して言語解析を体験するワークショップを行いました.使用したプログラムは次の通りです.
・形態素解析エンジン MeCab
・係り受け解析器 CaboCha
・統計分析ソフト R(+グラフ生成プラグイン igraph)

はじめに,長野高専の藤田が「ソフトウェア開発文書の評価における汎用言語解析ツールの可能性」として,自然言語処理の基礎的な要素ツールを実際にインストールして実行して体験してみる発表を行いました.

次に,大阪電気通信大学の竹内 和広さんが,「プログラムの説明概念整理による辞書構築とその活用」として,情報分野に特化した辞書の作り方を解説しました.そして,参加者と一緒に手を動かしながら,実際に作った情報分野の辞書を用いて,複数の専門用語を入力してそれらの関係をグラフ化して可視化する演習を行いました.このようなグラフ化は、文書品質や専門概念理解の計量評価の基準となることが期待されます.

開発文書を取り巻く,技術者教育や言語処理技術について,具体的な事例や実践を交えて体験することができました.


投稿日時 2017-11-11 18:46:59 (3218 ヒット)

2017年11月2日に,名古屋大学にてASDoQ大会2017を開催しました.今回の大会では,『 文書品質にとって技術とはなにか~文書品質から開発技術を見直そう~ 』をテーマに,文書品質の視点から,システム開発に必要な技術を考え,開発力を幅広く向上させるための議論の場としました.

第1部のチュートリアル1では, 鈴木 史恵氏が「学校教育におけるライティングの現実と書く力を伸ばす方法」のタイトルでご講義くださいました.初等教育,中等教育,高等教育における国語の位置づけや今後の国語教育の方向性を解説されました.与えられた写真から感じることを述べる問題や,記述問題を含むセンター試験といった大学入試変化などと共に,学校教育が変わることを示唆されました.「無人島に行くときに持っていくもの」を述べ,その記述をもとにしてディスカッションするといった,ライティングスキル向上のための演習も行いました.

 (チュートリアル1:鈴木史恵氏)

 

並行して行ったチュートリアル2では,酒勾 寛氏が「仕様の位置付けと厳密な記述」のタイトルでご講義くださいました.仕様とは何か,さらにその厳密性が開発のQCDに良い影響を与えること,について事例と分析を交えて解説されました.日本語や仕様定義のあいまいさを事例を用いて紹介し,形式記述によるあいまいさのない,厳密な表し方を詳解してくださいました.私たちは,日頃見逃しがちなあいまいさを振り返ることができました.

(チュートリアル2:酒匂寛氏)

 

第2部の招待講演1では,三森ゆりか氏が「社会人に必要な言語教育」をテーマに,文書技術の重要性と必要性をお話しくださいました.そして,国旗のデザインを例に参加者に質問を投げかけながら,情報伝達のための物事のとらえ方やまとめ方の技術をご教示くださいました.参加者は,大(概要)から小(詳細)といった空間配列の要素に応じて説明することで,的確に情報を伝達できる方法を学びました.参加者に質問を投げかけ,参加者からの発言を受けてより深く切り込んでいく進め方も新鮮でした.

(招待講演1:三森ゆりか氏)

 

招待講演2では,高田 広章氏が「ソフトウェア設計書には何をどのように書くべきか? -リアルタイムOS開発の経験から-」のテーマでお話しくださいました.昔に一度誤った設計を再び思いつき,実装途中にその誤りに気づくといった無駄をしたエピソードを語られました.今では,最終的な設計書になるまでに三倍の量の文書を書かれているそうです.設計根拠や採用しなかった設計情報を書いておくことは,自分のためにも重要であるとの話に,参加者の多くの方がうなずいていました.組み込み開発の分野で実際に使われる用語もそのままで,開発現場の技術者にとっては,共感することが多い内容でした.

(招待講演2:高田 広章氏)

 

第2部の講演会の後半は,ご講演者4名に三森利昭氏を交え,パネルディスカッションを行いました.参加者からの疑問にそれぞれの立場や経験からお答えくださいました.

(パネルディスカッションの様子:左端はモデレータの栗田太郎さん)

 

引き続いて行ったポスター発表では,7件の文書品質に関わる取り組みの発表がありました.高等教育,言語処理,モデル活用,レビューなど,様々な切り口から開発文書の品質向上に取り組む事例が紹介され,参加者共に議論しました.

ポスター発表では参加者の投票による表彰を行いました.齊尾恭子さんらが最優秀賞を受賞されました.

  • 最優秀賞:齊尾 恭子さん(大阪電気通信大学),竹内 和広さん(大阪電気通信大学),森 幸治さん(大阪電気通信大学),『「言語技術トレーニング」を活用した技術者養成に向けた大学初年次キャリア教育の実践』

(最優秀賞:齊尾 恭子さん)

 最優秀賞の齊尾恭子さんらには副賞として,以下の2冊の書籍が贈られました.

・三森ゆりか(著)「大学生・社会人のための言語技術トレーニング」
・阿部 圭一・ 冨永 敦子(著)「「伝わる日本語」練習帳」

また,本日の講演者を審査員とする賞の表彰もありました.審査員の最多得票を得た審査員特別賞には,小宮山 知恵さんらが選ばれました.

  • 審査員特別賞:小宮山 知恵さん(エプソンアヴァシス株式会社),小林 直子さん (エプソンアヴァシス株式会社),文書品質モデルを活用した品質可視化の試み-レビュー情報をプロジェクトの振り返り活動へ活かす-

(審査員特別賞:小宮山 知恵さんと小林直子さん)

さらに,各審査員による審査員個人賞の発表もあり,以下の方々に、それぞれ個人賞が贈られました.

  • 鈴木賞:藤田 悠さん(長野工業高等専門学校),図解を入力情報とした設計書作成とプログラミングによる文書教育の検討
  • 酒匂賞:小宮山 知恵さん(エプソンアヴァシス株式会社),小林 直子 さん(エプソンアヴァシス株式会社),文書品質モデルを活用した品質可視化の試み-レビュー情報をプロジェクトの振り返り活動へ活かす-
  • 三森賞:間嶋義喜さん(大阪電気通信大学大学院),大賀賢志さん(大阪電気通信大学大学院),竹内和広さん(大阪電気通信大学),同一機能をもつプログラム構造の類似性視覚化の検討
  • 高田賞:小宮山 知恵さん(エプソンアヴァシス株式会社),小林 直子さん(エプソンアヴァシス株式会社),文書品質モデルを活用した品質可視化の試み-レビュー情報をプロジェクトの振り返り活動へ活かす-

審査員個人賞には,以下のような各審査員の著書や推薦書が,審査員の直筆サイン入りで贈られました.

・鈴木賞:野矢 茂樹(著)「大人のための国語ゼミ」
・酒匂賞:マイケル ジャクソン(著),玉井 哲雄/酒匂 寛(訳)「ソフトウェア要求と仕様―実践、原理、偏見の辞典」
・三森賞:三森ゆりか(著)「大学生・社会人のための言語技術トレーニング」
・高田賞:坂村 健(監修),高田 広章(編) 「μITRON4.0仕様 Ver.4.02.00」

参加者の方にいただいたアンケート結果を示します. アンケート結果

今回のASDoQ大会にご参加くださった皆さん,ご講演者の方々,またASDoQ大会開催に内外からご協力,ご支援,ご後援くださった方々に感謝いたします.ASDoQは,講演で得られた知見や,ポスター発表で紹介された取り組み,また参加者の方々との有意義な議論などの本大会の結果を,今後の研究会活動に活かしていきます.

ASDoQ大会2017ページ


投稿日時 2017-09-30 17:40:40 (2133 ヒット)

2017年9月29日に,ウィンクあいちにて,第16回研究会を開催しました.
今回の研究会では,代表幹事である山本による講演と,サマーワークショップにて取り組んだ品質モデルの活用に関する討議を行いました.

初めに,ASDoQ代表幹事である山本雅基が,「トヨタ生産方式の開発文書への応用 ~仕事をしながら成長する仕組みの提案~」について講演しました.
 

次に,今年の7月21-22日に行ったサマーワークショップでの取り組み結果を塩谷が紹介しました.

サマーワークショップでの結果をきっかけにして,システム開発文書品質モデルの活用について,全体で議論しました.

各組織でのレビュー評価や分類方法を紹介していただいたり,レビューの結果の活用方法, 計測結果と品質の考え方などについて,議論しました.

サマーワークショップでの結果,今回の議論の結果については,ASDoQ大会にてご紹介したいと考えています.


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