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活動報告 : 第24回研究会を開催しました
投稿日時 2020-09-29 15:57:28 (2208 ヒット)

 2020年9月18日に、第24回研究会をオンラインにて開催しました。

 今回の研究会では、昨年度のASDoQ大会ポスター発表からの事例発表と、身近な情報伝達手段に関するワークショップを行いました。

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  まず、ASDoQ大会2019のポスター発表にて最優秀賞を受賞された富士通株式会社の金子隆さんに、活動の概要とその後の取り組みをお話しいただきました。
  重要プロジェクトの流出バグの72%が開発文書(仕様書・設計書)に起因しており、とくに設計問題を分析したところ、全体の67%が表現に係わっていたとのこと。そのような表現の問題を、ASDoQの文書品質モデルを使って、設計に必要な情報の不足や文書間の不整合などの問題として分類されました。さらに分析を進め、流出バグの防止には、正しい日本語の追求だけでは不十分であることを検証されました。そして、バグに繋がる表現を特定して抽出し修正することを目的として、自社開発された「開発文書レビュー支援ツール」が紹介されました。
 
■オンライン講演中の金子さん
 
  ■講演資料から
    
 
  ツールは、まず開発文書を文節や単語に分解してDBを作成します。次に、独自作成のクエリを用いて、不適切表現や説明不足など5種類に分類されたバグにつながる表現をDBから抽出します。講演では、不適切な表現事例などを、ご紹介いただきました。
  実際に、レビュー支援ツールを開発プロセスに組み入れて運用されているそうです。その結果、ツール適用による問題検出は、人手のみによる開発側レビューの6.6倍に向上し、製品出荷後の記述起因の不具合は0件になったとのことです。
 今後は、形式仕様の考えを導入して、抽出条件の精度を向上させる計画です。さらには、抽出条件の自動更新や、設計書の自動修正に取り組まれるとのことです。
 
 講演後の質疑では、複数の参加者から、非常に興味深い活動との印象が示されました。活動の更なる発展を、再びASDoQの大会や研究会の場でご紹介いただけることを期待したいと思います。
 
 ■ ASDoQ大会2019の受賞時の様子
 
 
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 研究会の後半では、会員有志が作成した「読み誤られないメールの書き方10箇条」をきっかけとしたワークショップを行いました。ワークショップでは、次の事項をトピックとし、Zoomのアウトブレイクルームにて4つのグループに分かれて意見交換しました。
 
<話題1> 「読み誤られないメールの書き方10箇条」のレビュー
<話題2> その他の表現手段の例も考えてみよう
メール以外のメッセージやチャットなども含めた、他の情報伝達手段での記述の注意点
<話題3> メール10箇条などの決め事や注意事項を、日々の仕事にどうつなげていくかを考えよう
 
 グループ討議の後に、それぞれのグループが討議内容を発表しました。
<話題1>では、Googleドライブ上で、事前にASDoQ会員が記入した「レビュー記入シート」やホワイトボードでの意見の他、グループでもそれぞれ改善点を出しました。主には、次のような意見がありました。
  • メールによっては場面や用途が異なるので、それぞれに応じて使い分けが必要になる(10箇条がすべて当てはまるとは限らない)。
  • 第10項は、書き方というより心構えのようなものだが、重要である。
    (第10項:送信前に読み返し ― 読み誤られないことを確認してから送信を)
  • 「読み誤られないメールの書き方10箇条」の位置づけ(ルールかガイドラインかなど)を明確にするとよい。
 
また、<話題2>に触れたグループからは、次のような意見がありました。
  • チャットやweb会議システムでのコミュニケーションでは、メール程には文章の書き方を気にしない。そのために誤解が生じやすい。web会議システムでは、ホワイトボードや画面共有が手軽に使えるので、活用して、コミュニケーションを補うとよい。
  • 記録として議論を残したい場合は、チャットは避けてメールにするなど、使い分けが必要。
 
<話題3>に関しては、いずれのグループも時間切れのために討議できなかったようでした。しかし、「読み誤られないメールの書き方10箇条」の作成者のひとりから、次のような意見がありました。 
「読み誤られないメールの書き方10箇条」を無意識にできるようになることが、開発文書や他の業務文書にも、影響を与えられるのではないかと考えている。組織でこの10箇条を習慣化したことが、開発文書や他の文書にもこんな影響が出てきた、という結果が得られるなら、ぜひASDoQで発表していただきたい。
 
 今回のワークショップでは、身近な情報伝達手段のひとつであるメールに着目してみました。情報伝達手段は他にも種々あります。コロナ禍によってこれまでとは異なる状況やさまざまな制約下で、「書く」ための手段だけでなく「話す」も含めた伝達手段を、状況に応じて選び、仕事を進めていかなければなりません。そして、これまで以上に情報の受け手を想像することが必要になっているように感じました。 
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 さて、次回のASDoQイベントは、ASDoQ大会2020です。
変化しつつある、仕事でのコミュニケーションのスタイルについて、もう少し興味を広げてみませんか。
各分野の専門家が語る、言葉と文書について、オンラインという視点も交えて、いっしょに考えてみましょう。
みなさまのご参加をお待ちしています。
 
日時:2020 年 11 月 6 日(金)14:00 - 17:45 (オンライン開催)
テーマ:オンライン時代の言葉と文書

 


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